5話 本当の修羅場ってヤバい…(ヤンデレならなおさら。)
ああ…本当にどうしてこうなったのだろう、と俺は思う。俺が頭を抱えている理由。それは…
「私は勇気君の事ならなんだって知っています!」
「私だって知ってるわよ!」
亜希菜と美春が言い争っているのだ。…それも俺のことをどれだけ知ってるか、という謎の話で…
こうなったのは10分前。美春が家に来たときだ。
* * *
「亜希菜、ちょっといいか?」
夕食を食べ終え、食器を片付けているとき俺は唐突に声をかける。
「?なぁに?」
「いや、今から美春が来るだろ?…こ、殺したりとかするなよ?」
そう、俺が心配していることは亜希菜が嫉妬にかられて、美春を殺したりしないか…それだけが心配だった。なんせ、キッチンには包丁がある。これで不安にならないほうがおかしい。
「そんなことしないよ〜…まぁ、ちょっと脅すけど…」
今、ちょっと脅すって言ったよね…?
はぁ…と俺はため息をつく。どんな手を使うのか知らないが警察のお世話にならない脅し方にして欲しい。…まぁ、脅すのも下手すれば警察のお世話になるが…
ピンポーン。
と、そこでインターホンが鳴る。
「お、来たみたいだな。は〜い」
俺が玄関を開けると、美春がいた。美春は出た相手が俺だとわかると、突然、手を広げた。俺がの謎行動に戸惑っていると、美春は満面の笑み(にやにやと怪しげな…)と共にその状態のまま俺に向かって
「!?み、美春!?」
「あぁ〜、勇気の匂い…しゅきぃ♡」
「おい!匂いをかぐな!…てか離れてくれません?…う、力強っ…頼むから離してくれ。亜希菜に見られたら…」
美春の拘束を解こうとするが、その小さな体のどこにそんな力があるのか… 美春の拘束を解くことは叶わなかった。そして…
「─見られたら、なぁに?」
俺の後ろから低い声が聞こえる。俺は恐る恐る後ろを見ると、そこには、静かに微笑む(顔には影を落としている)亜希菜がいた。
「うわ!こ、これは違うんだ亜希菜!」
「うん、うん。知ってる。見てたから。」
そう言って、俺に近づき…
「ぎゅっ…」
抱きしめられた。
………………いや、そこは、助けるとかそういうところじゃないの!?
その後、なんとか二人の拘束を解き、話し合い(?)が始まった。
* * *
そして、現在に至る。
「はぁ…はぁ…なかなかやりますね…」
「はぁ…はぁ…そっちこそ…」
「………………(なんだ?これ?どこの少年マンガ??)」
「こうなったら勇気君に決めてもらいましょう。」
「は?」
「そうね、勇気に決めてもらうわ。」
この二人は何を言っているんだ?てか、急に振るのやめてくれないかな!そもそもまともに話を聞いてない …
「「さぁ、どっちですか?」なの?」
まずい…ここは…
「あ、あ〜、
俺がそう言うと二人は硬直する。直後、二人はなにかひらめいたような顔をする。それに俺は嫌な予感がし…
「お、俺、部屋にいるから話し終わったら呼んで─」
そうそうに立ち去ろうとすると腕が両方ともガシッ、と掴まれる。
「「その必要はないわ」ないですよ」
「な、なんで?」
「私達は思ったんです。」
「勇気の事が好きで、勇気が誰のものかで争ってしまうなら…」
「「
あ、あれ?なんでシンクロしてんの!?さっきまで言い争ってたよね??
「…………つまり?」
「「私達と付き合う!!」」
「………は?つまり二人と同時に付き合えと?そんなの無─」
ドンッ!!
俺は二人に壁際まで連れて行かれ、壁ドンされた。…圧をかけられながら。
「勇気君?返事は?」
「『無理』なんて言ったら…ふふっ。」
二人は笑っているが目が…笑っていなかった。これは断ると痛い目見る事になるな…
「………はい…」
俺は、そう答えた。
「じゃあ、明日から私も同棲するわ。…いいよね?亜希菜?」
「うん、いいよ。美春、明日から勇気君を独占しようね♡」
「うん♡」
…俺は思った。ヤンデレほど面倒くさいものはないと。一人ならやり込めることができたかもしれないが、美春(ヤンデレ)が加わった以上それは難しい…
はぁ…と、ため息をつくのだった。
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