回帰
髙木 春楡
回帰
彼女を初めて見たのは、クリスマスの日だった。世の中は、カップル達に溢れ、独り身の自分には、生きづらいそんな日に、ライブハウスで見かけたのだ。
アイドル達が集まるイベント、華やかな女の子達の中、俺の目に止まったのは所謂アンニュイというような見た目をした少女。その時点で年齢は知らなかったのだが、少女に見えた。美しさを兼ね備えながらもどこか幼い。そんな印象を抱かせる人だった。声に魅力があり、歌は上手いなと思ったが、踊りにキレがあるわけではなく、皆が皆好きだというタイプではない。ただ、魅力のある子だった。
その出会いと言うには、一方的なものが、どこか引っかかって、時々思い返していた。
そんな彼女を、再度発見したのはその四ヶ月後、桜は散り世の中が、これからゴールデンウィークだと騒ぎ立て始めた時期だった。その子のSNSアカウントを見つけたのだ。
フリーのライターをしている俺は、世間の関心が深そうな記事を惰性で書き続けていた。特別な何かはなく、この業界になぜ足を踏み入れたのかはわからない。そんな日々。仕事だからと人の粗を探したり、世間を批判する。有名人のインタビュー記事を載せる、出版社の求めているものを提供する。ただただ、惰性の仕事。やりがいなんて俺にはなかった。
記事を書かずとも、一、二年は生きていけるだけの貯金もある。だが、書かないという選択はなかった。だから、一つくらい自分の好きな記事を書いてやろうと、去年は、様々なことをしてみた。旅行に行ってみたり、キャンプをしてみたり、ライブハウスへと足を運んだり、そんな中で、見つけたのが彼女だった。
彼女は、あの頃所属していたグループから脱退し、四月から結成されたグループへ、輝かせる場所を移していた。新進気鋭なアイドルグループ、そこらに転がっている数多のアイドルグループと比べ、魅力的な人は多いからこそだろうが、プロモーションが優れているわけではなかったのに、結成当初から、SNSで話題になっていた。
今はそのグループ、そして彼女を取材してみたいと、珍しく意欲的になっていた。
とはいっても、彼女へダイレクトメッセージを送って、取材依頼をするわけでもなく、結成ライブに行くわけでもなく、ただ、仕事をこなすだけの生活を送っていた。
家で記事を書くことが多いが、喫茶店で書いていることもある。そうやって、行きつけの喫茶店で、仕事をしていたら、彼女と再会を果たした。向こうは自分を知らない。だけど彼女が、ライブハウスで汗を流していたあの子が、あの日とは違う営業スマイルを浮かべながらバイトをしていたのだ。だから、メッセージなんかで、取材依頼しなくてもよかった。後は、タイミングを合わせて、彼女に直接言えばいい。ただ、それだけだ。
バイトに入りたての新人に、話しかけるのは迷惑だろうと、何度も通いながらタイミングをはかった。仕事をしている時間より、彼女を観察している時間の方が増えてきた頃、仕事ぶりが安定してきていた。
「あの、店員さん。」
「はい、お伺いします!」
爽やかな笑顔、どこにでもいる少女のような雰囲気、個性を殺した店員としての姿。アイドルとしての彼女は、そこには居ない。それが普通だ。そこまで客の多い喫茶店ではないとはいえ、個性をさらけ出して、接客をする人間は少ないだろう。
「君、アイドルの
「あの、えっと……」
「あ、いや、ファンとかではなくてね、こういうものなんだけど。」
名刺を差し出す。語れるような肩書きがあるわけでもない、フリーライターと名前である、
「記者さんですか。バイト中なんですが、取材がしたいってことですか。」
「今じゃなくていい、気が向いたら、連絡先書いてるから、連絡をちょうだい。メールでも、Twitterからでもいいから。」
「わかりました。では、失礼します。」
その一瞬だけ、彼女は素の姿を見せた。こちらを観察するような、俺の事を見透かそうとするような、どこか怯えているような、そんな目で見ていた。特別嫌な気がするわけではなかったが、不思議に思う。彼女は、そんなに繊細な人なのだろうか。彼女が見せるアイドルとしての姿に、似合わない気がした。彼女は、もっと他人を気にしないような存在に見えた。
アイドルとしての彼女、その晴れ舞台を見たのは一度きり、あのライブだけ。その後、再度、私の前に現れた彼女は、自分の意思をしっかり持った哲学者のような存在だった。高校一年生になったばかりという若さ、その若さから考えられない、思想に語彙に、意思。容姿の美しさも相まって、完成された存在のようだと、言われているのを見かけた。断定的な文章、その思想、それを、Twitterに吐き出す彼女には、熱狂的な信者とも言えるファンがついていた。つい先日まで中学生だったとは、思えない、次にくるアイドル。それが、その界隈での評価だった。
それが、どこまで作られたもので、どこまでが本質なのかはわからない。ただ、あの日見た彼女は、評価に違わぬ人間だと思われた。
その真意が知りたかった。大人に作られただけの存在か、彼女の持ちうる才能か、バイト中に見せるあの顔こそが、真実の姿なのか、あんな若い女の子に、お熱になるなんて、これこそが、彼女の魅力を、表しているのではないだろうか、とも思わなくもなかったが、いいのだ。打算的な思いもある。俺の評価や、ネットでの評価が正しければ、いずれ有名になる。有名になれば、記事としても、日の目を浴びてくれるだろう。
携帯電話の通知音、仕事机の上で画面が輝き、早く手に取れと、俺を催促する。パソコンの画面ばかりを眺めて疲れた目を、その方向へ向けると、彼女の名前が表示されていた。取材について、という書き出しのメッセージが、来ている。名刺を渡して一週間の期間が空いている。もう来ないのではないかとも、思っていたが、そんなことはなかったようだ。
内容は、取材を受けるが、個人として受けるのだから、ご飯を食べながらにしよう。奢ってくれみたいなものだった。もっと、かしこまった文章だったが、要約するとこんなものだ。
対価の内容がご飯というところに若さを感じながら、しっかりと抑えるところは抑えている点として、若さに見合わないと言われても仕方ないのかもしれない。最近の若者が、どんなものかは、よく知りもしないが。誰かのアドバイスがあった可能性は、もちろんある。でも、きっとこの子は、素直な人間なのだろうな。そう感じた。
もちろん、ご飯を奢るくらいのことは、簡単に出来る為、二つ返事で了解を出した。学生とはいえ、通信制の学校に通っていて、レッスンとバイト以外は、自由な彼女と、フリーのライターという俺が、約束を取り付けるのは簡単だった。三日後に約束を取り付け、仕事へと戻る。いつも通りの仕事でも、楽しみな予定が出来ると楽にできるものだ。そうそうに終わらせ、約束の日に備えた。
個室の場所がいいだろうと思いながら、予約したのは焼肉屋だった。なんとなく、若い人間は焼肉を食べるだろうという偏見と、二十八歳である俺が、三十路前とはいえ、食欲が衰えていないからだろう。
約束の時間十分前に、予約している旨を伝え、案内された部屋に入ると、そこにはもう彼女が座っていた。取材相手より遅く来てしまったと、負い目を一瞬感じたが、そんなもの約束の時間より前には来ているのだから、関係ないなと冷静に戻る。
「早かったね。まだ来てないかと思ってた。」
初めの時も敬語を使っていなかったのもあり、旧友のように、話しかけながら、明るく明るく務めて話しかける。記者としての仮面を被りながら親しみやすいように、自然なように。
「いえ、迷ってもいいように家を出たら、早く着きすぎたので、入っていただけです。待ったのは、十分くらいですから、気にしないでください。」
そこに居る彼女は、バイトで見た時と、同じ人間には見えなかった。これが、素の姿か。それとも、警戒をしているのだろうか。彼女は、美しく冷めやかな、見た目をしている。まだ、若さというよりは、幼さと言った方がいいだろうが、それもある。だが、基本的には美しい。所作も気を付けているのだろう。背筋は伸び、声もよく通る。そこに居るのに、そこに居ないような、そんな雰囲気を漂わせている。
「じゃあ、先に注文して、食べながら、話聞いていく感じで。」
「はい。よろしくお願いします。」
焼肉で頼むものなんて、そんなに変わるものでもない。誰でも頼むであろうものばかりを頼んでいた。とりあえずタン、カルビ、ハラミ、ホルモン、ウインナー、野菜盛り合わせ、そんな風に頼み、最後に生ビールを頼む。もちろん、彼女はソフトドリンクだ。取材なのに、酒を飲むんですね。なんて、言われてしまったが、気にする事はない。取材というよりは、ただ話すことが目的だった。そう今回の目的は、彼女を知っていくこと、それに尽きる。
「じゃあ、名前から聞こうかな。アイドル名の由来とかありますか。」
「好きだと思った言葉、綺麗だと思ったものです。」
「なるほど、普段何をしてますか。趣味とかありますか。」
「読書とか、色々ありますけど、あの、これ撮影かなんかですか。私、この後どこかに連れて行かれる流れの質問ですけど。」
「ははっ。そんな冗談言うんだ。そんなつもりは全く。なんか調子でなくて、普通に話していいかな?」
「急に敬語になったり、忙しいなと思いました。最初みたいに、気軽な感じでいいですよ。」
このやり取りだけで、少し和やかになった気がする。緊張のようなものが、少し緩み、話がしやすくなっていく。彼女の表情が柔らかくなっていったのを、感じながらビールを流し込む。彼女は、やはり素直な人間だ。嘘をつけない人間でもあるのだろう。つまり、ネットでの姿も本物ではある。そう、感じることが出来た。
彼女の様子を観察しながら、心地よく酔っていく。若い女の子と、話しながら飲む。これは俗に言うパパ活というものと、そう変わりがないのではないか、そんな思いも抱きながら、初めての取材は終わった。ギャラは、食事代。
「今日は、ありがとう。有意義な時間を過ごすことが出来たよ。」
「こちらこそ、取材と言いながら話しているだけでしたが、食事代ありがとうございます。」
礼儀正しく、こちらに礼をする彼女は、年相応に見える。大人に、よくしてもらった高校生。そんな感じだ。アイドルの彼女から離れた、ただ一人の少女。取材だのなんだのと、言っていたことが馬鹿らしく思えるくらいだ。彼女の中にある一面なのだろう。人には、様々な側面がある。一つの性質だけで生きている人間はいない。様々な部分を、その時に合わせて変えていく。そうやって生きていくものだから、当然のことなのだろう。
「また、取材させてもらうよ。今日だけでは、何もわからなかったからね!」
明るく軽く、取っ付きやすい人間のように、俺はそう言う。ただ、そういう人間なのだと知らしめたかった。俺の本質は、明るい人間なのだと。
「わかりました。また、奢ってもらいますね。」
彼女の笑顔は、清純を絵にしたようなものだった。アンニュイと言われるような雰囲気はない。
「でも、高校生と大人がこうやってご飯を食べるの、最近だとパパ活って言うんですよ。」
「いや、取材だから。これは決してそんなものではなく、取材ね!」
思っていたことを言われ、彼女とは感性が少しだけだが、俺と似ている可能性があるなと思った。彼女の人柄は、知れば知るほどに面白い。嘘をつけないような、素直な人間だと感じさせるが、それでいて仮面を被っているような、それが彼女の魅力なのだろう。捕まえようとしても、捕まえられない存在。それは、人気が出ていくのも仕方がないだろう。
だが、このまま取材をすることについて、彼女を駅まで送りながら考える。俺は、どうなっていきたいのだろうか。この取材と称した食事会を、続けてどうしたいのか。記事を書く、それを公表する場所は?その意味は?彼女を有名にしたいのか、彼女の存在が気にかかったから、知りたいだけなのか。初めての取材を終え、わからなくなっていた。彼女という存在を知りながら、俺はこの出会いに、期待していた。何かを変えてくれるような、そんな期待を。あの、何もかもを見透かしたような目を、純粋そうに見つめてくる目を、きっといつか、ぶつけてくれるような、そんな期待だ。
それから、三度食事へと行った。一度目と同じように、話すだけのそんな会。初めは少しだけ、垣間見えていた、仕事の側面なんてなくなっていた。いつしか、取材という名目を忘れている。
彼女と話しているのが、楽しい。そう感じているのは事実で、好意的なのも事実だ。だが、好きになる。そんなことはない。恋には落ちない。そういった関係ではない。歳の差を考えてみても、彼女に恋するなんて、ありえない話だった。ただ、彼女という人間が面白かった。思想の断言性、その中に潜む仮面、こちらが間違っていると思ったら、どれだけ歳の差があろうと、言い返してくる度胸とも言える頑固さ。自身の思想を、間違っているとは思っていないような強さがある。きっと俺にはない強さだ。そこに、興味があるのかもしれない。その強さの根源はどこにあるのだろうかと。ふらふらと、自己の仕事にすら誇りを持てず、何かしたいことがあるわけでもない人間にとって、そういった人は、興味が尽きないものだ。
そうこれは、興味の関係性。やましい事があるわけではない。性的に見た事もない。だから今彼女が、俺の家に居ることは、決して悪いことではない。
そうなったのは、彼女との五度目の食事終わりだった。
「今日、泊めてくれませんか。」
突然の発言、理解は出来たが、理解が出来ずに止まってしまう。泊まる?止まる?止まったのは、僕の思考、彼女が言ったのは、きっと家に泊めてくれませんかという意図の言葉。理由がわからなかった。
「別にいいけど。汚いよ。」
だから、こんな言葉が出てしまったのだろう。流されやすい俺の、反射で言ってしまったもの。何もないのだから、悔やむこともないが、世間体から見たら、不味い状況だ。だが、考えても、もう遅かった。
記事にする内容を、書き留めるルーズリーフが散らばった机、本棚から溢れ出した小説、ゴミを捨てるのが面倒くさくて、溜まっているゴミ袋。足の踏み場はあるし、ある程度くつろぐことは出来るが、お世辞にも綺麗とは言えない部屋に、似つかわしくないアイドルが、座っている。
「本の量、凄いですね。ライターの仕事は、やっぱり本も読むものなんですね。」
「最近買った本はないよ。昔読んでた本達だよ。捨てるのも勿体ないから置いてるだけ。好きに読んでいいよ。その前に、風呂入るなら早く入ってね。仕事でもしてるから。」
「そうですか。わかりました。服貸してもらってもいいですか。」
クローゼットから、Tシャツを取り出し渡す。出来るだけ綺麗な、あまり着てないもの。渡したのは、昔貰った出版社のノベルティTシャツ。それを持って、お風呂の方へと向かった。1DKのこの物件には、洗面所なんてなく、仕切りはダイニングと仕事部屋兼寝床である部屋の扉だけ。彼女が消えたのを見計らい、そのドアを閉める。自分で閉めてくれと思いながら。
シャワーの音を聴かないように、イヤホンをつけ最近頼まれた記事を書く。文章を作っている時だけは、何も考えずに済む。そのまま、記事の中へと入り込んでいった。書きたくもないそれに、身を任せ書き続けていたら、いつの間にか彼女は戻ってきて、ベッドの上で小説を読んでいた。この部屋に来てからの会話は、ほとんどない。
だが、いつの間にか、俺の緊張や不安は、消え去っていた。何も変わらない。ただ、一人の少女がいるだけ、ただそれだけだと思えている。結局、彼女を女性として意識したわけではなかったようだった。
「俺も風呂に入ってくる。」
一応断りは入れ、風呂場に向かう。使ったのは、俺のシャンプーやボディソープのはずなのに、何故か残る甘い匂いを感じながら、身体を流していく。
何も聞けていなかった。何故、急に泊まらせてくださいなんて言ったのか。聞くべきではないのかもしれないとも思う。彼女は、踏み込まれることを嫌う人間な気がしているから。東京での一人暮らし、高校生は寂しい日もあるのかもしれない。それぐらいに思っておこう。そうやって、自然と風呂を出る。
部屋には、小説を読む彼女、本棚の1番上に並べてあるものの、一冊を取っていた。
ベッドは占領され、仕事机に向かうしかない俺は、手持ち無沙汰になり、携帯電話を触る。いつもと変わらぬような、Twitterを眺めながら、流れてくる彼女のツイートを読んだ。相変わらず、若さに見合わぬ文章力だ。そこに書いてある心情が、今の心情なのか、ふと思いついただけの見せる心情なのか。それは、今の様子からは伝わってこない。俺が渡したTシャツに、高校時代のハーフパンツを履き、ベッドに横たわる彼女は、何も考えていないように見える。
「この小説家さん面白いですよね。」
唐突に、彼女は本の背表紙をこちらに掲げながら言った。背表紙には、「春に捧げる」桜山 雪と書いている。
「
「三作だけ書いて、その後出さなくなった小説家だね。面白いかな。」
「私は、好きですよ。この人の小説。」
「そっか。好みは人によるからね。」
その作家の作品は、三作とも一番上の段に置いているものだった。好みじゃないように言ったが、こんなマイナー作家の本を、揃えているのだから、好きだと思われただろう。
「なんで、書かなくなったんでしょうね。」
「話が尽きたんじゃない?小説家が書かなくなるのなんて、売れてないか、それかどっちかでしょ。そんなことより、もう寝なくていいの。明日レッスンとかは?」
「夕方からです。そちらこそ、寝なくていいんですか。」
明日の予定は、特になかった。だから、寝なくてもいいが、早く寝たかった。何も考えなくていいように。彼女が、余計なことに気付かなくていいように。
「寝るよ。ベッドは勝手に使うといい。俺はこっちのソファで寝るから。」
そう言って、ソファへと移動する。人一人くらい寝れるくらいの大きさはある。 かわいい女の子を、ソファで寝かせるわけにはいかないだろう。男が毎日寝ているベッドで寝かせるのも、どうかと思うが。
「手を出さないんですか。」
「出すわけがないだろう。俺を犯罪者に仕立てあげたいのか?」
「女の子が一人、泊まりに来たいと言って、その理由も聞かないし、簡単に泊めるし、普通の男の人は、そういうのを狙うものかと。」
「そんな、節操なしじゃないもんで。とは言っても、君がこの状況を誰かに、たれこめば、ただじゃ済まないかもしれないけど、まぁ、こんな一般人のしがないライターを、はめる意味なんてないだろうけどね。」
その言葉に間が空いた。おかしいことは言ってないと思うが、何か気になる点でもあったのだろうかと、横になった身体を少し起こして、彼女の方を見る。彼女は、本を枕元に置き、こちらをじっと見ていた。
「そのたれこまれた相手が、元天才小説家でも?」
何の話かな。なんて、とぼけても無駄なのだろう。確信した顔で、こちらを見ている。どこで、どこでわかったのだろうか。なぜ知っているのだろうか。俺が、桜山 雪だと言うことを。
「いつから。」
「最初からです。初めて、喫茶店で見かけた時から、わかってました。」
「バレるようなことは、したつもりないけど。」
「著者近影ですよ。今と違いますが、面影はあります。」
そうか。顔出ししない作家じゃなかった。顔は出していた。今から約十年も前とはいえ、そんなに顔の造形は変わっていない。髪が伸び、髭を伸ばしていて、老けて見えているはずだ。それでも、面影くらいは確かに残っているだろう。それを知ってて、話していたのか。
「そっか。これをネタに俺は、脅されるのかな。だけど、今の俺には、そんな価値もないと思うけど。」
「脅すなんてしませんよ。ただ、貴方という人を知ってみたかっただけです。」
知りたがる理由がわからない。随分と前に、突然消えた作家だ。引退するとも言わずに、新作を出さなくなった作家、それが俺だ。Twitterだって急に更新を辞めた。執着されるほどでもない。それとも、俺と同じような、ただの好奇心なのか。
「想像とは違って、落胆したか。いや、それほどの価値もなかったかな。」
「想像通りの人でしたよ。臆病で、仮面を被り続けて、逃げ続けながら、自分を信じることを辞めれず、中途半端に生きてるそんな人。」
「随分な言い様だな。その通りだね。」
笑った、俺はずばり言い当てた君に向けて、笑顔を見せた。心の中のどす黒い感情を押し殺して、気にしてないふうに。怒りに身を任せて、怒鳴りつけたいという、欲望を抑える。何がわかる。こんな数回会った程度の人間に、俺の何がわかるというのだ。
でも、事実だった。小説家を辞めたはずなのに、ずっと文章にしがみついている俺は、まさに中途半端に生きている。小説を書きたいとは思えない。でも、この生き方しか知らなかった。知らないから、他の職種に移れず、文章を書き続けた、物語とは関係のない。ただの文字を書き続けているのだ。
「本当に、私がそうとだけ思っていると、鵜呑みにしているんですか。」
「事実だから。俺はその程度の人間だよ。」
「貴方は、自分を信じすぎているんですね。」
信じている?俺が?これだけ、自分を卑下している人間が、自分を信じているなんて、そんなことがあるか。それとも、自分が大切な人間だと言いたいのか。それは、自分が大切ではない人間なんていないだろう。自分が大切で、自分が一番可愛い、それが人間だろう。だから、逃げるんだ。立ち向かえば、疲れるだけだ、辛いだけだ、だから、自分を守る為に逃げているんだ。誰かに言われずとも、俺は、自分をよく知っているよ。
何も答えず、電気を消して目をつぶった。明日になれば、何事もなかったかのように、一日が始まればいい。彼女は、その行動を見ても何も言わなかった。いや、正確には一言だけ、「怖がりなんですね。」と言葉が聞こえたが、聞こえないふりをした。その後、言葉が聞こえることはなかった。
気付けば、夢の中にいた。
高校三年生の夏休み、応募していた純文学雑誌の新人賞に受賞したという連絡が来た。高校生での受賞は、珍しい。その時は、先の事なんて考えていなかった。ただただ、嬉しかった。これで、憧れた小説家になれるんだと、僕は、それだけを思っていた。
年明け、本が発売されると天才小説家ともてはやされた。高校生作家の看板は予想以上のものだった。本屋には、たくさん僕の本が並んでいて、これを書いたのは僕なんだと、自慢してまわりたいくらいだった。だけど、同時に、受験が迫っていた。小説のことを考える余裕もなく、勉強に追われる。新人賞受賞作後、初となる新作が発売されたのは、それから三年が経った頃だった。
受験は無事合格したが、大学生活に慣れるのに、時間がかかったのもあり、小説を書き始めれたのは、大学一年生が終わる頃だった。最初は、若き天才小説家なんて、称されていた僕だったが、三年も新作を出さなければ、新鮮さは薄れていく。新作を出した頃には、大学三年生になっていて、デビュー作の半分程度しか売れず、本屋に僕の本が余っていた。動かない本の山は、いつしか一冊だけ、本棚に刺されている程度のものになる。それも、いつしかなくなっていた。
大学に行かず、小説を書いていればなんて、後悔が頭を巡っていく。僕の小説は、悪くなっていないはずなのに、なんなら、文章はより緻密になっているはずだった。それでも、売れてはくれない。僕の自信は、その頃からなくなっていった。
三作目が発売された時、新作なのにも関わらず、本屋に、一冊二冊程度しか並ばなかった。処女作は、あれだけ積まれていたのに、今では積まれることもなく、棚にさされている。どこで間違ってしまったのだろうか。何が悪かったのだろうか。分からなくなり、僕は、別名義で本を出すことにした。年齢も何も明かさず、ペンネームを変えて、デビューした雑誌に載せてもらい、本を出した。編集さんには、苦い顔をされたが、それでも、僕の本を面白いと言ってくれるその人は、それで新作を書いてくれるならと、快諾してくれた。
自分の物語に、文章に自信を持っていた僕は、それでまた売れてくれると思った。新しくデビューすれば、また本が積まれる。そうして、コンスタントに新作を出せば、あの頃と同じように売れるんだと、そう信じていたのだ。だけど、その本は売れなかった。初版のまま、重版することもなく、本屋から消えた。その時、僕は大手の出版社に就職し、雑誌のライターになっていた。そのまま、小説は書かなくなった。
天から地まで、一気に叩き落とされた気分になっていた僕は、無心で仕事にうちこんだ。文章を書いている時は、何も考えなくて済むからと、朝から晩まで書いて、目が死んでいった。きっと、同時に心も死んでいったのだろう。
何もやる気が起きず、でも、なにかしていないと落ち着かない。そんな死んだ生活を続けていた僕は、仕事を辞め、フリーのライターになった。
貯金は、生活に困らないくらいにあった。小説が売れていた時の貯金、それを使いながら、自由に文章を書こうと思った。そうすれば、いつかまた、あの頃のように戻れるとそう信じていたけれど、何も変わらず、心だけが死んでいく。そうやって、今の僕になっていったんだ。
夢だとわかっても、その夢を見続けたのは、今の自分には、あの頃を思い出す必要があったからなのかもしれない。
頬を流れる涙が、近くで寝ている彼女にバレないよう、僕は夢から覚めた。
心地よさそうに寝ている彼女は、昨日、俺にあんなことを言った人間には見えなかった。人を見透かすような目は、本当に俺という人間を、見透かしていた。仮面を被っていたはずなのに、いつの間にか剥がされていて、丸裸にされている。裸の王様が、そこにいたんだ。それを、彼女だけが気付いていた。裸の王様のエピソードとは逆。彼女にだけ僕は、裸に見えていた。
珈琲の苦さが、嫌に味覚を刺激する。いつもなら、何も感じることなんてなく、飲めているはずなのに、心が変われば、味覚も変わるのか。
もぞもぞと、彼女が動き目を覚ます。人の生活音に起こされるのは、気分がいいものではないだろう。
「おはようございます。今何時ですか。」
「十時だよ。なんか食べる?」
「いえ、いや、あるなら食べます。」
「適当に作るね。」
普通の会話、昨日の夜は、嘘だったかのようだ。きっと、お互いに触れない。触れないで、普通を装っている。いや、どうなのだろうか。少なくとも自分はそうだ。あの話に触れられたくないから、普通の話をしている。あの夢を見て、頭が冴えているから、きっとこうやって、仮面を被りなおすことが出来た。彼女の場合は、寝起きで頭が働いていないだけだろう。きっと、いつか彼女は、あの話をする。だから、話さないうちに帰ってもらうしかなかった。なのに、朝食を用意しているあたり、完全に冷静とは言い切れないのかもしれない。
目玉焼きを乗せたトーストに、珈琲、彼女はオレンジジュース、そんな朝食を食べた二人は、各々に好きなことをする。彼女は本を読み、俺はまた記事を書く。集中なんて出来やしないから、何度も携帯電話を触りながら、少しずつ文字を打ち込んでいく。パソコンの音と、ページをめくる音、そのふたつが交差するこの空間に、またあの暗い雰囲気が、漂ってこないことだけを願った。
昼ご飯を作り、食べた後、レッスンの準備があるからと拍子抜けするくらいに、何もなく彼女は帰っていった。
帰った後に訪れたのは、安堵より意外だなという気持ちの方だった。俺は、少しだけ期待していたのだろうか。あの話の続きをすることを、俺という人柄を正確に捉えているのか、もっと確認したかったのだろうか。矛盾しているのはわかっている。でも、きっと俺は何かを変えたいのだろう。
だが、その後彼女から連絡が来ることはなくなった。あの時、あの瞬間だけのものだったのか、それとも、彼女は酷いことを言ったと、引いてしまったのか。それは、わからなかった。俺は結局、いつもの日々に戻った。彼女からの連絡を待っているその一点を除けば。
自分から、彼女に連絡を送るようなことはしなかった。それは、俺自身の意地のようなものだったのかもしれない。それでも、相手から来るのを待った。その間、俺は彼女のTwitterを見ることしか出来なかった。彼女の思想を見て、共感したり、そういう考えもあるなと納得したり、彼女を理解しようとした。どういう考えで、どう動いているのだろうかと。そして、何を言われてもいいように心構えをしている。きっと、無意味なことだ。その場になれば、その準備はなんの意味も持たなくなる。それは、自分がよくわかっている。でも、それでも、何か考えていないと、狂ってしまいそうだった。
そんな日々を、二月ほど過ごした後、急に彼女が訪ねてきた。夜、八時くらい。家でぼうっと中秋の名月と言われるその日に、窓から見えるそれを眺めていると、インターホンが鳴った。その瞬間に、彼女がやってきたんだと思った。この時間に、訪ねてくる友人が、居ないのもあるが、確信めいた何かがあった。
モニターも確認せずに、玄関を開けると彼女が立っている。何かを覚悟した、そんな顔をしている。あの話の続きが、行われるのは確かだった。
「入っていいよ。」
「はい。お邪魔します。」
部屋に入っても、座る気配がなく、俺もそのまま彼女を正面から見据えた。
「貴方の話をしましょう。」
「そうだと思っていたよ。ずっと待ってた。」
準備は、出来ていた。その事ばかり考えていた。早く言葉を紡いでくれ、そう願わずにはいられないくらいに、気持ちが急いていた。
「あの日から、考えていました。あの言葉は正しかったのか。もっと色々伝え方があったのではないかと。そして、貴方が答えを求めていることもわかっていました。あの話をしたくないのに、したいような、そんな二面性を感じていて、だから、私が思ったように話そうと思います。貴方は、私の思った通りの人間だったのは、前にも言った通りです。でも、それはひどい人間だと思っていたわけではないです。ただ、貴方は自分を信じすぎていると思っただけです。自分を信じているから、理想の自分と乖離してるのが耐えられないんだろうなと。だから、今逃げてるようになっている。それだけの話です。貴方は、考えてるようで考えていない。すぐに答えを出そうとして、長い目で物事を見ない。見てるつもりになっているだけ。それだけで、考えていないんですよ。それで、読者が離れていっただとか思っていたんだろうなと思います。貴方にも優れたところはあるはずなのに、そこを見てない。見ないで、答えを急ごうとする。そして、駄目だと諦める。自分に絶望しているように見えて、周りを諦めてるんですよ。自分が駄目なのは自分が悪いと責め立ててるのに、周りも悪いんだとそんなふうに。厳格な人なんでしょうね。俗に言うところの。そう感じました。」
彼女の言ってることは、正しい。全部が正しいとは思わない。それでも、正しいんだ。なんで、こんなに断言できるんだ。なんでこんなに、俺の、僕の心に踏み込んできて、僕の心を掻き回して、そんなに断言して言えるんだ。
「その通りだね。そんな酷い人間ですよ。僕が全部悪いのに、他人に責任転嫁して、世界を呪ったような顔をして、絶望に浸ってるような人間ですよ。」
「そういう所ですよ。図星をつかれて、自分を全部否定する。考えてないから、すぐに答えを出そうとするから。貴方にもいい所もあるのだから、悪い所だけをしっかり見つけて……」
「全部知ったような口を聞くなよ!!!」
身体が硬直するのが見てとれた。いきなり、大人の男が叫べば、誰だって怖いだろう。こんなの、ただの八つ当たり。そんな叫び。
「言われなくてもわかってる。僕は、僕のことをどれだけ考えてきたと思ってる。どれだけ考える時間があったと思ってるんだ。君なんて、若いだけじゃないか。若いから、容姿が完璧だなんて褒められてるだけじゃないか。若いから、その思想を褒められてるだけじゃないか。もっと歳をとった後だったら、こんな綺麗な人もいるねくらいにしか思われないだろ。色々考えてるんだねくらいにしか思われないだろ。若いのに、こんなに綺麗ですごいって思われてるんだろ。若い天才だって思われてるだけだろ。若くなかったら、こんなに有名になってないだろ!」
違う。違うのは、わかってる。若くなかったら評価されてないなんて、それは違う。若いから、この思想が出てくるんだ。汚されてないから、自分を信じて、美しくなれるんだ。この若さが、尊いものなんだ。わかってるのに、分かっているはずなのに、反対の言葉が口から出てくる。
彼女は、汚されてない。純粋さそのもので、僕にぶつかってきてくれている。僕が失ってしまったものだ。それも違う。僕が失ったと勝手に思っているものだ。全部違う。彼女の素晴らしさは、僕が一番よくわかっている。彼女は、彼女だから素晴らしいのだ。なのに、なのに、僕はこんなに醜い。
若さのせいにして、若さだけが取り柄なんていうふうに言って、僕の言葉がここまで醜く変わり果ててしまった。若さは、その人を輝かせる一つの要素でしかないのに。それを、踏みにじるようなことを言った。
怯えた彼女は、それでも僕をしっかりと見据えている。きっと怖くてたまらないのに、逃げずに僕だけを見ている。
「変われない僕を、貴女はわからない。何者にでもなれる貴女にはわかりやしないんだ。君の若さだって、失われる。そうすればわかるよ。その時になってわかって、後悔するんだ。」
彼女は、きっとわかってる。わかってるのに、それを僕は、否定している。彼女は、後悔はしないだろう。ただ、失われたものだと割り切ってしまうかもしれない。それでも、僕は、自分が思ってもいないことばかりが、口から出てくる
「貴方は、臆病ですね。でも、私も臆病な人間ですよ。」
「僕は……」
言葉が出てこない。感情に任せて言葉を言ったはずなのに、僕が僕を止めてしまう。何が伝えたいのか、何を抱いたのか、僕はわからなくなってしまう。正反対の二面性。
「僕は、臆病です。貴女に、本当の事も伝えることが出来ない。」
「そうですか。」
それだけ言って、彼女は部屋を出ていった。何の解決にもならなかった。彼女に酷い言葉をぶつけただけ、ただそれだけでしかない。僕は何を言ったのだろうか。それさえ、混乱した今の状況では分からない。分からないのに、涙が零れ落ちてくる。彼女は、こんな瞬間でも美しかったなんて、そんな感想が出てきてしまった。馬鹿らしい。何を考えているんだろうか。彼女を追いかけもせず、泣き崩れて、訳のわからないことばかり考えている自分は、何なのだろうか。何が変わった。何を変えれた。何が彼女が、僕を変えてくれるだ。
僕の他力本願は、ここまで続いているのか。考えていないと言われたばかりではないか。その言葉に、どんな酷い言葉をぶつけた。心で言い訳をして、彼女の素晴らしさを語って、なんの意味がある。全て分からない。けれど、彼女の意思に、なにか報いたいと思った。それだけは、本心だった。
あの絶望の日々から、何も考えず生きてきた僕の、醜さを改めて知った。だから、少しだけ何かが動いた気もした。
彼女が出ていったこの部屋は、静かだ。僕の激情も、何もかも彼女と共に出ていってしまった。残ったのは、空っぽに見える僕だけだ。
そこから、ずっと考え続けた。今まで、頭を回さなかった分を取り戻すように考え続けた。何も見えてこない。それでも考え続けた。
そうするといつの間にか、僕は若かったあの頃に戻っていくのを感じた。彼女の若い思考、断定性、純粋な心、彼女を羨んだ、彼女を彼女たらしめる部分に感化されて、僕は、あの頃に戻っていく。
そして、僕は、文章を書いた。 いつものような、惰性で書く、ただの文字ではない。衝動性にまかせて、これが面白いんだって、自身で思いながら、書いていた僕の小説達と同じように、あの頃のように。
彼女へ彼女の為だけに、また筆をとった。酷い人間だと言われても仕方ない。意味がわからないと言われても仕方がない。それでも、考えた末にそうすることに決めた。自分の意思で、そう決めた。
あれから、一ヶ月がすぎた頃、僕は自ら彼女を呼び出した。レンタカーを借り、彼女を海へと連れだす。車内では、何も話さなかった。何も話せなかった。口に出す言葉は、今は必要ない。僕の伝えたいものは、全て終わっていた。
海へ着いた僕らは、浜辺へと降りる。十一月を迎えようとする海は、寒かった。水に触れるわけでもなく、歩いても寒い。ただただ歩く二人には、未だに会話がない。
急に連絡をして、会いたいと伝えただけなのに、彼女は、何も言わずに来てくれた。海へ向かっても、何も言わず、ただ僕の後ろを歩く。
「これを書いたんだ。考えて考えて考えて、僕は小説を書いたんだ。こいつは、いきなり何を言ってるんだって思われると思う。でも、これを君に渡したかった。」
原稿用紙に書き殴ったそれを、彼女へと渡す。大切そうに、受け取った彼女は、それを一瞥して私を見る。
「これは、読んでもいいし。読まなくてもいい。そのまま焼いてもいいし、煮てもいい。それでも、これは僕なりの答えだから。」
彼女は、何を考えているのだろうか。僕には分からない。僕は、人の考えてることが、わかる人間ではない。だから、こんなふうにしか伝えることが出来ない。それでも、彼女ならわかってくれるのではないだろうかと、勝手に思っている。あの頃の気持ちを僕は、久しぶりに手にしていた。小説だけを考えて、自分を純粋に信じられていた時に、だから、君なら理解してくれると思ったんだ。これも、君に考えてないなんて、叱られるだろうか。それでもよかった。僕の考えた上のものだから。
「ありがとうございます。」
それだけ言って、海の方を向いてしまう。彼女は、世間が言うような完璧という人間ではないと思う。彼女が言っていた、臆病だという言葉。それは、真実なのだろう。不完全で、不安定で、それでも清純で純粋だから、彼女は美しい。こんな言葉を貴女に言えば、あんな事があった後に、そんなことを言うのかなんて、言われるんだろう。それでも、彼女は素の顔で、笑ってくれるようなそんな気がした。僕らの関係は、きっと今、新しく踏み出し、変わっていく。お互いにただ清純を貫きたい人間だ。一度失って、再度得たものと、今それを貫き続けている人間。僕らの関係は、きっと歪な道を進んでいく。それが、一番美しい道だから、きっと二人ともそう信じているのだから。
「一人称、僕に戻したんですね。」
「仮面なんて、被らなくていいって気づいたから。」
「そうですか。」
「そういえば、最初にアイドル名の由来、聞いてましたよね。」
「聞いたね。」
「綺麗な言葉だと思ったっていうのは、そのままですけど、好きだと思った言葉っていうの、貴方のペンネームですよ。」
回帰 髙木 春楡 @Tharunire
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます