第31話 ソフト鑑賞
「みんな、この黒くて平べったい板に絵が出て、音が聞こえるから楽しいぞ。アニメっていうんだけどな」
子どもたちが見守る中、テレビの画面に配給会社のロゴが現れ、その後に制作会社のロゴが現れた。
アニメ本編のオープニングの音楽が流れ出したところで、子どもたちのざわめきが大きくなった。
そして画面に大きくタイトルが表示された。そこには、
『シンデレラと7人の大きなお友だち』と書いてあった。
なんだ? ソフトの入っていたケースをよく見るとエッチいアニメ絵と一緒に18禁と書いてあった。
すぐに俺はプレイヤーのスイッチを切り、ソフトを取り出した。危ういところだった。これはみんなが寝静まった後こっそり見よう。ということでそのソフトはアイテムボックスに仕舞っておいた。
「今のは間違いだ。次はちゃんとしたのが映るからな」
残ったソフトに18禁シールがあるかないか確認したところ、もう2枚18禁シールが貼られたソフトが見つかった。知らず知らずカゴに入れていたようだ。その2枚もしっかりアイテムボックスに仕舞っておいた。10枚中3枚も知らず知らずのうちにこういったソフトを買ってしまうとは。グッドジョブ!
それはそれであとで一人で楽しむことにして、当たり障りのないアニメソフトをプレイヤーに挿入した。
円盤の入っていたケースに書かれたタイトルは『アニメ日本昔話 モモタロウと
俺はアニメを見ながら日本語の分からない子どもたちに解説していった。動く紙芝居のようなものだな。
川に流れていた大きな桃をおばあさんが拾うところも普通だし、山から柴を刈って帰ってきたじいさんと包丁で桃を割るところも普通だった。
桃の中から元気な男の子が生まれ、モモタロウと名づけられたところも、ちゃんと桃太郎だ。
モモタロウがすくすく育っていったまでは良かったが、そこから話が変な方向に。
山で出会ったクマと相撲を取ってクマに勝ってしまったモモタロウがクマを家来にして、
モモタロウが
ばあさんは意外と高く売れたようだ。そのあたりはご都合主義のアニメである。今の世の中ならババアな二束三文にもなりゃしない。二束三文どころか引き取ってくれるならこっちが金を払う時代だ。ちょっと言い過ぎたか?
誰かに怒られそうな感想だが、あくまで俺個人の感想だからな。当方ババアに恨みつらみはありませんので念のため。
育ての親のばあさんを取り返すため花札博打の鉄火場『鬼が島』に乗り込んだモモタロウ。
おいちょかぶで大勝ちしたモモタロウは、胴元とコイコイで一騎討ちの大勝負。最後の最後でチョウチョを引き当て猪鹿蝶で大逆転!
鉄火場の怖いお兄さんたちがモモタロウに難癖付けて勝ち金を取り戻そうとしたところ、熊を先頭にモモタロウの
モモタロウはばあさんのことなどすっかり忘れて鉄火場『鬼が島』の経営で成り上がっていき、最後にお城のお殿様と千金を賭けての
『モモタロウと猪鹿蝶』は、まさかの立身出世物語だった!
エンディングテーマが流れる中、最後の字幕に『おじいさんとおばあさんはどうなったかはみんなで勝手に想像してね!』と、書かれていた。
アニメを見終わった子どもたちは4人とも口を開けてぼんやりしていた。子どもたちには別の意味で刺激が強かったのかもしれない。
「一日一本ずつだな。お前たち、リサの手伝いに行ってこい」
「「はい!」」
ぼんやりしていた子どもたちも、俺の言葉でしっかりしたようでいい返事で台所に走っていった。
中古ソフトで安かったとはいえ、妙なソフトもあったものだ。
明日は子どもたちに何を見せるか?
手元に残ったソフト6本のタイトルを見ると、
『赤ずきんちゃん、ずきん! ずきん!』。シールは貼ってなかったが、よーく見ると18禁だった。
『フラダンスの犬』。腰ミノを着けた犬が二本足で立ち上がって踊っている。動物映画だったようだ。これなら子ども受けするかもしれない。
『アニメ日本昔話 竹の子取り物語』。想像するに、裏の竹林に家族そろって竹の子掘りにいく話ではなかろうか? これに該当する昔話を俺は知らないので、創作昔話なのだろう。
『ウソップ童話、はだかのじょうおうさま』。女王さまがはだかだとちょっと見たくはある。これも18禁じゃないか? あっ! よく見るとシールをはがした跡があった。
『ウンデルセン童話 人面魚姫』。うわさで聞くシーマンのお姫さま版ではないだろうか? ニーズがあるとは思えないが、現にこの俺が買ってしまっていた。
『アニメ日本昔話 ミミズのよめいり』。言葉だけは似ていなくもないが、普通にネズミじゃいけないのか? ミミズなんぞ俺は見たくないぞ!
まともなタイトルが一つもなかった! あのレンタルビデオ屋大丈夫なのか?
子どもに見せて大丈夫そうなアニメは『フラダンスの犬』と『アニメ日本昔話 竹の子取り物語』の2つしかなかったので、明日またレンタルビデオ屋にいって適当な円盤を買ってこよう。
[あとがき]
今回は恒例の劇中劇でございました。ダハハ。
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