第30話 エンジン発電機顛末2


 自動車はいしゃを1台手に入れた俺は、アイテムボックス内の自動車を素材ボックスに移し、複製ボックスに入れておいたエンジン発電機をコピーすることにした。


「複製!」


 ちゃんとエンジン発電機がコピーできた。全く疲れは感じられなかったところを見るとほとんどの素材は先ほど買った自動車でまかなえたのだろう。最初はコピーを動かしてやろう。コピーが間違いなく動けばコピー元もちゃんと動くということだからな。


 もう一度説明書を見ながら始動手順を進めて、持ち手の付いたワイヤーを思いっきり引いたらエンジンがいい音を立てて回り始めた。


 トルルルルル、……


 エンジンも好調に回っているし何も問題はないのだが、ただ一つ問題があるとすると、今現在俺の屋敷には電気製品が何もないということだ。


 電気さえあれば現代生活ができるものと勝手に考えていたが電気製品がなければ何もならない。最初の動機が電気がまで米を炊くことだったわけで、俺の錬金工房内で簡単においしいご飯ができてしまい炊飯器が不要となった今、急いで必要なものがなにもない。


 何か現代文化生活を送る上で必要なものはないか?


 インターネットも地デジも衛星放送もなにもないので、なにができるか考えたところ、円盤プレーヤーとディスプレイくらいしか思いつけなかった。それでもかなりの文明生活だし、日本語が分からなくても動く絵を見て音楽を聞くだけでも、子どもたちは喜びそうだ。


 アイドリング中の発電機の近くで俺が思案していたら、屋敷の裏手から響く異音が気になったようで子どもたちとリサがやってきた。


「ご主人さま、これはなんですか?」


「発電機っていう機械だ。別の機械を動かすためにこれを動かす必要があるんだが、今のところ別の機械を用意していないので役に立っていないんだがな」


「ふーん。でも、なんだかいー匂い」


「ほんとだ。すー、ハー」


 子供たちは初めて嗅ぐガソリンの排気ガスが気に入ったみたいで深呼吸を始めてしまった。ちょっとくらいは排気ガスを吸ったところでどうなるわけではないだろうが、深呼吸はさすがにまずそうだ。


「こら、こら。この臭いは体に悪いから、吸うのはやめろ」


「「えっ!?」」


 みんな驚いている。出遅れたリサなどはこれから排気ガスを吸おうとしゃがんでマフラーの排気口に鼻を近づけようとしていたところだった。



 このままエンジンを回しっぱなしにしていても意味はないので、説明書の手順に従ってエンジンを止めておいた。


「これで動かせる機械を買ってくるから、もう一時間くらい待っててくれ。そしたら面白いものを見せてやるからな」


 そう言って俺はいったん発電機をアイテムボックスに仕舞って、再度日本に転移した。転移した先は俺の街の隣り街にある電気屋の入っている商業ビルの近くだ。


 さっそく電気屋に入って、BDプレイヤーと32インチのテレビを買った。配送はいいと断り、二つの箱を何とか抱えて店の中を移動し店員が見えなくなったところですぐに収納してやった。誰かが見ていたかもしれないが目の錯覚だったと自己補完するだろう。


 後はソフトだ。


 新品である必要はないからレンタルでもいいが、返しにいくのが面倒だから中古ソフトだな。


 ビデオレンタル屋の中に新品も含めてBDとかDVDの売り場があったような。


 中に入ったことはなかったがビデオレンタル屋の場所は覚えていたので近くに転移してさっそく店の中に入っていき、入り口の脇に置いてあったカゴを1つ持って目当ての販売コーナーに回っていった。


 よーく考えなくても子どもたちもリサも日本語は分からないので、絵を見て楽しめるようなものを探す必要がある。となると、アニメだよな。それも子供向けのもの。子供向けアニメコーナーで適当に10個ほどソフトを選んでカゴに入れ、出口横のカウンターで精算して店を出た。


 すぐに転移して屋敷の居間の中に戻った俺は、さっそくテレビとBDプレイヤーを箱から出してセットしてやった。


 俺が居間でごそごそしていたのでまた子供たちがやってきた。


「もうちょっとだから待ってろよ」


 機器のセットが終わったので次は電源コードの延長だ。


 再度発電機を裏庭に置いて、エンジンをかけ、本体についているコンセントに付属の延長コードのプラグを挿し込んで、延長コードを屋敷の中まで引き入れていった。今回買った発電機は交流100ボルト、200ボルトどちらでも5.5kVA。単相交流だとkVAとキロワットは同じ意味なのだそうだ。これ1台でもかなりの容量がある。


 マズいことに延長コード1本では居間まで届かなかったので、延長コードを一度収納し直して、コピーを1本作ってやった。


 2本の延長コードを繋げたところ余裕で居間の機器の近くまで届いた。


 さて、延長コードの先の差し込み口にテレビから伸びているコードのプラグを差し込んだら、BDプレーヤーのコードが余ってしまった。


「いっかーーん! テーブルタップ?とかいうたこ足用コードが必要だった!」


 俺は取り急ぎ、さっきテレビなんかを買った電気屋の前に転移して取り口が沢山付いている延長コードを買った。


 再度居間に戻って、今買ったテーブルタップを繋げそこにテレビとBDプレーヤーを繋げてようやく準備が整った。


 テレビに電源を入れて、しばらくしたらテレビは映ったのだが、もちろん電波も何も来ていないので何やら画面に警告が出てしまった。これはどうしようもない。


 次にBDプレーヤーにも電源を入れてみた。そして、テレビのリモコンに付いていたプレーヤーボタンを押したら、プレイヤーのメニューが出てきた。普通に円盤を挿入すればいいらしい。


 さて何を見ようか? 俺が楽しんでも仕方ないと思って買ってきた中古ソフトだが俺も見て楽しめるようなものにしておけばよかった。


 何でもよかったので、適当にアイテムボックスから取り出したソフトをBDプレーヤーに突っ込んだら勝手に蓋が閉まって再生が始まった。


「おーい、みんなー、手が空いていたら居間に集合!」


 子どもたち4人が集まってきたがリサは夕食の準備で手が離せないと言って台所にいるようだった。




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