第23話 錬金=金錬成


 ヒールポーションきわめは一滴でも相当な効き目があった。恐ろしいまでのポーションだが、あれをもう一度作るのはかなり面倒だ。あんなのがポンポンできちゃ世の中がおかしくなるだろうからそれはそれでいいのかもしれない。


 ヒールポーションきわめはいいとして、錬金作業用にLv3相当のスタミナポーションを量産しておくことにした。


「スタミナポーション!」


 アイテムボックスの中で100本ほどスタミナポーションが出来上がった。これくらいだと疲れは全く感じなかった。


 今現在全く疲れてはいないので、試しに金を錬金工房で作ってみることにした。


 何もないところから金を作り出すわけだが、金1グラム作り出すとどの程度気力を使うのかまず確かめることにした。金の比重を20とすると、金1グラムは0.05立方センチ。これの三乗根は面倒だし、数字が分かったとしても測りようもないので、目分量で5ミリ立法、8分の1立法センチ、約2.5グラムの金を作り出すことにした。


「いくぞ! ゴールド。カモン!」


 確かに金ができた。5ミリ角の純金のサイコロが錬金工房の中で出来上がった。少し疲れたのかな? というくらいで、特に問題はなかった。これなら、1立法センチ20グラムはいけそうだ。


「いくぞ! ゴールド、カモーン!」


 錬金工房の中で1センチ角の純金のサイコロができたが、今回ははっきり気疲れを感じた。ここで、スタミナポーションを1本空けて、疲労回復。金を作り始めたときより元気が出たような気がする。


「もう一度だけ。ちょっと冒険だが、2センチ角のサイコロだ。8倍になるから、160グラム。金の比重は20未満だったから150グラムの方が近いか」


「いっくぞー! ゴールド、カモーーーン!」


 肉体的な疲れではないのだが、体を動かすこともおっくうになるほど、どっと疲れが出てしまった。それでも、ヒールポーションきわめを作ったときのように立てなくなったと言うほどではない。すかさずスタミナポーションを飲んだら嘘のように疲労感は消えてしまった。


 高々150グラムではさすがに寂しいので、やりたくはなかったが我慢してもう一度2センチ角の金を作ることにした。


「いくぞ、ゴールド、カモン」


 少々気合が抜けてしまったが、疲労感と同時に金のサイコロができていた。もちろん今回もスタミナポーションを飲んで回復した。


 これで小さい金を除いて300グラム相当の金ができた。


 1グラムの買取価格は8千円ぐらいしたはずだから、300グラムの金を売れば240万になる。結構な金額だ。明日換金しに日本へ跳ぼう。


 今日の作業はここまでと思っていたら、誰かが部屋の扉をノックした。


『ご主人さま、いかがしました? 大きな声が聞こえたので、心配してやってきました』


 リサの声だった。


「独り言だから気にしないでいい。いつものことだ」


 事実ではあるが、かなり危ないご主人さまと思われたかも知れない。知れないではなく確実に思われただろう。まっ、今更だ。



 俺は錬金を終えて、夕食前に風呂に入って上がった。次は子どもたちが風呂に入る番だ。子どもたちが風呂から出ればいい時間なので、リサは夕食後に風呂に入ることになる。


 子どもたちは今日初めて風呂に入るのだろうから少し心配だ。だからといって俺が風呂に一緒に入って指導するわけにもいかない。ということで、


「おーい、お前たち、風呂に降りてこーい! 着替えを持ってくるんだぞー」


 俺が風呂から子どもたちを呼んだ。


『『はーい、いまいきまーす』』


 子どもたちがやってくるまでに、俺は湯舟のお湯を替えてやり、湯沸かしタンクにはお湯を補充しておいてやった。


 バタバタと子どもたちが脱衣所に入ってくるなり、4人とも何も言わずにその場で服を脱ぎ始めた。


「ばか! まだ風呂に入るわけじゃない」


「「はっ?」」


「お前たち、ボディソープの使い方もシャンプーの使い方も教えたと思うが、どうも不安だから、もう一度俺が風呂の中で教えてやる」


 そう言ったら、また4人が服を脱ぎ始めた。


「まだ、脱がなくていいから、そのまま風呂に入ればいいから。ちゃんと裸になって風呂に入るのは、俺が教え終わってそれからだ」


「「はい」」



「まずは、一度桶にとったお湯を体にかけながら、手で軽く体を洗う。これがかけ湯だ。本当はそれだけで湯舟に浸かっていいが、お前たちの体にはアカが溜まってるハズだからまずは体をよーくボデイソープで洗ってからだ。

 このなんだか硬そうなタオルがアカスリ用のタオルだ。こいつにボデイソープをこんな感じでつけて体を洗う。お前たちの体だと最初は泡が立たないと思う。

 体を一通り洗ったらお湯で流して、アカスリ用のタオルも一回すすいでボデイソープをもう一度つけて体を洗う。そしたらちゃんと泡が立つはずだ。

 洗い終わったら体についた泡やヌルヌルをきれいにお湯で洗い流す。アカスリ用のタオルも軽く洗っておく。

 そしたら、湯舟に肩まで入って体を温める。

 体が温まったら湯舟から上がって今度は洗髪だ。

 まずお湯を頭にかけてワシャワシャする。もう一度頭にお湯をかけて、それからシャンプーをこれくらい手にとって髪の毛と頭の皮を揉むようにワシャワシャする。

 今のお前たちの髪の毛だと一回目だと泡は立たないと思うが、そこでお湯で頭を流す。

 それから再度シャンプーを手にとって髪の毛と頭の皮を揉むようにワシャワシャする。2回めだとそれなりに泡が出ると思う。ワシャワシャして痒いところもなくなったらお湯を2、3回頭にかけて泡とかヌルヌルを流してやる。最後にもう一度湯舟に肩まで浸かって温まったら風呂から出る。

 だいたいそんなところだ。

 脱衣所には大きなタオルを一人1枚ずつ置いておくから、それで頭と体をよく拭いて服を着る。髪の毛には短いタオルを巻いてもいいかもしれんな。

 ちょっと説明が長かったが4人で思い出しながら入れば、なんとかなるだろ」


「「はい」」


 俺は子どもたちを置いて自分の部屋に帰っていった。風呂の方から子どもたちのキャッキャ騒いでいる声が聞こえてきた。にぎやかなことはいいことだ。


 子どもたちが30分ほどかかって風呂から出てしばらくしたところで夕食となった。子どもたちは4人ともタオルを頭に巻いている。


 ドライヤーがあればいいがないものは仕方ない。


 食事前にはみんなタオルを頭から外したのだが、確かに髪がサラサラになっている。リンスだかコンディショナーだかを使わせればもっとサラサラになるかもしれないが、この程度でも十分だろう。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る