第24話 QOL(クオリティ・オブ・ライフ)1


 食事が終わってリサと子どもたちが後片付けをしている間、俺は風呂場にいってリサのために湯舟のお湯を入れ替えて、湯沸かしタンクにお湯を補充しておいた。今まで相当のものぐさ太郎だった俺が何気によく働いている。


「リサ、風呂に入る時は子どもたちにボデイソープとシャンプーの使い方を聞いてくれ」


 そう言っておいた。



 俺は自室に戻り、部屋のランプを灯してベッドに横になり、ヒールポーションきわめのことを考えていた。


 ヒールポーションきわめを作ることは相当面倒で負担も大きかったが、もう一本欲しいところだ。とはいえ、あの負担の大きさを考えると、気力がもう少し充実してからじゃないととてもじゃないが作りたくはない。


 ヒールポーションきわめに比べれば金の錬成は楽と言えば楽だ。一度に作れる量は知れてはいるが、基本は無から金を生んでいるというまさに驚天動地の奇跡の技だ。


 これから寝るだけなので、ぐっすり寝るため金の錬成をするのもいいかもしれない。金ができた上疲れてすぐに寝つけるからな。


 そういうことで、俺は部屋のランプを消して、再度ベッドに横になり、2センチ角、150グラム相当の金の塊を1つ作り出し、すぐに眠りに落ちた。



 翌朝。朝の支度を終え、リサの作ってくれた朝食をみんなで食べた。マズくはないが今一のような気がする。化学調味料系統を用意してもいいかもしれないが、俺自身料理などできないので、何を揃えればいいのか今一だ。


 俺の今日の予定は日本に帰って金を現金化することだ。これは簡単に片付くだろう。その後は、発電機の発注だ。カタログを持っていないので価格は不明だが、1台50万も出せばそこそこの物が買えると思う。発電機の能力にもよるが、これを最終的には2台ないし4台買おうと思う。1台ないし2台での交互運転だ。こういった買い物をするとすぐにかねは消えていくだろうが、毎日150グラム寝る前に金を作れば、消えた端から補充できるので問題はない。


 日課で作ったおろし用ポーションを子どもたちに持たせて送り出し、俺はアパートに転移した。靴を履いているので、今はスリッパなどを片付けた台所への上り口に転移している。


 靴を脱いで部屋に上がり、カーテンを開けて窓を開け放し空気を入れ替えておく。


 着ていた服を日本風に替えて、スマホで金の現金化に必要なものを確認した。


 それによるとマイナンバーカードと銀行の通帳がいるらしい。面倒だったがマイナンバーカードをポイント欲しさに作っていてラッキーだった。


 俺はその二つを用意してアイテムボックスに入れ、部屋の戸締りをして同じくスマホで調べた買い取り先の貴金属屋に向かった。


 店に入り来意を告げ、店員の前に3個の2センチ角の金を置いた。


「変わった形の金ですね。分析しますので少々お待ちください」


 店員はそう言って手袋をした手で金のサイコロをトレイに乗せて奥に引っ込んだ。数分待たされたが、金を乗せたトレイを持って戻ってきた。


「どれも純金でした。

 3個とも154.5グラム、合計で463グラムです。今日の買取価格は1グラム当たりちょうど8100円ですので、375万円ちょっとになります。

 3つともご売却でよろしいでしょうか?」


 もちろん承諾し、マイナンバーカードと銀行の通帳を見せた。


 店員は二つのコピーをとって戻り、転写紙の付いた書類を俺に手渡し、


「ここに、サインをお願いします。

 代金は銀行振り込みになります。1時間後には振り込まれていると思いますのでそのころご確認ください。

 なお、確定申告が必要になりますのでご留意ください」


 店員の注意を聞き流し、俺は書類に渡されたボールペンでサインして店を出た。


 向こうの世界ではそこそこの金持ちだとは思っていたが、やはり生まれながらのサガか『金貨~枚』より『~万円』の響きの方が心地よい。


 今日は買い物の予定はないので、俺は近くの喫茶店に入り、アイスコーヒーを頼みスマホで発電機を確認していった。50万も出さなくてもそれなりの発電機があるのだが、いかんせん連続運転時間が短い。これは燃料タンクの制限からくるものだと思う。燃料タンクを増設すれば連続運転できそうだし、壊れたところで買い替えればいいだけだ。


 できれば専門家に見てもらって本格的な発電機が欲しいのだが専門家をあっちの世界に連れてはいけないので悩ましいところだ。


 スマホをいじりながら喫茶店で粘っていたら1時間経っていた。銀行の残高をスマホで確認したらちゃんと振り込まれていた。これで一安心だ。


 現金がちゃんと手に入ったので、試しに40万ほどのエンジン発電機1台ポチってしまった。配送は3日後の午前中。その時、忘れずにアパートに居なくてはならない。


 燃料はガソリンだ。ガソリンは向こうの世界では売っていないが、炭素と水素と酸素が主体で、それに若干の添加物でガソリンはできているだろうから、ガソリンスタンドで少量分けてもらえば、コピーすることですぐにでも量産できる。


 ということで、近くのガソリンスタンドにガソリンを買いに行った。事務所の中で携帯用のガソリンタンクを売っていたので一番小さなものを買い、2リットルほどレギュラーガソリンを入れてもらった。


 人目を確認してガソリンタンクをアイテムボックスに収納した俺は、複製ボックスにガソリンタンクを移し、コピーと念じてガソリン2リットル入りのガソリンタンクを作ってみた。全く疲れを感じることなくガソリンを錬成することができた。これで燃料問題は解決した。2リットル程度ならこんなもので済むが、量が多くなると空気中の炭素だけでは回らなくなる。どこかで石炭でも手に入れたいところだ。石炭はそこらでは売っていないが、木炭ならホームセンターで手に入るし、おそらく向こうの世界でも手に入るだろう。炭素があればいいだけなので、生木でもいいはずだ。



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