三 太宰治のとある言葉から連想して

「本を読まないということは、その人が孤独でないという証拠である」


太宰治の言葉である。

確か、『如是我聞』に載っているんだとか。

俺は『如是我聞』じゃなくて名言集みたいなやつで知ったな。


万人に当てはまる言葉ではない。そもそも今と時代が異なる。

しかし、私はこの言葉を初めて聞いた時、妙な納得感を覚えた。当時の私には当てはまっていたのかもしれない。

孤独でどうしようもないから、本を読んだのだろう。


本に限らず「孤独だから何かに逃げる」という意味合いだと捉えれば、汎用性がありそうだ。「逃げる」と言えば消極的だが、「没頭する」「尽くす」「夢中になろうとする」と言うと少しは積極的に聞こえるだろうか。

こう考えて、私はホッファーの言葉を思い出した。


「他者への没頭は、それが支援であれ妨害であれ愛情であれ憎悪であれ、つまるところ自分から逃げるための手段である」


私はこの言葉を、『ここは今から倫理です。』という漫画で知った。おもしろいので是非。

と、それはさておき、このホッファーの言葉。やはり、自分から逃げ、自分の孤独から逃れようとして、人は何かに没頭するのかもしれない。

ある者にとってはそれが「本」であり、ある者にとっては「他者」であり、ある者にはゲーム、勉強、……。

そうすれば、そうして没頭してしまえば、気がまぎれる。自分の辛さから逃げることができる。


私も、不意に嫌な過去を思い出すことがある。

「思い出したくない、何かに熱中してしまえば、思い出すことも減ってくれるだろうか」

度々そう思う。

その心理の根本も、太宰治やホッファーの言葉に繋がるのかもしれない。

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