001876

バブみ道日丿宮組

お題:自分の中のところてん 制限時間:15分

001876

 緩衝材というのはなんにでも必要であり、

「えっと遅れた理由は?」

 あたりまえのように人間の中にも存在する。

「寝坊のようなものかな?」

「寝坊じゃないの?」

「うーん、起きたら太陽がのぼってた」

 そりゃ太陽は寝てたらのぼるだろう。

 問題は、約束の時間を4時間も過ぎてるということ。

「えっとね、気合入れて服を選んでたらなかなか決まらなくてね」

「うん、それで?」

 もじもじする彼女はとても良いづらそうな顔をする。

「制服にしたのがそんなに納得できないの?」

「ううん、制服姿好きだっていうから候補ではあったの」

 彼女は公園にある時計を見つめる。

「候補ってことは他にもあったんだよね? 例えばどういうの?」

 ぼくは別に遅刻したことは怒らない。

 彼女はいつだって忙しそうに学校で活動する人間で、ぼくみたいに自由気ままに動くことができない。昨日は文化祭があった。

 帰り際に疲れた顔を見てたし、次の日にデートなんか設定するぼくが悪いのかもしれない。

 けれど、彼女の予定はなかなかあけられない。

 ならぼくは優しく待つぐらいしか彼女をいたわることができない。

 他のものはぼくが持ってない。お金があるわけでも、勉強ができるわけでも、運動ができるわけでもない。平凡の平凡というのがぼくである。

「えっと昨日の舞台の衣装……とかかな?」

「うん、なるほど」

 目を閉じ、昨日の舞台衣装を思い出す。

 白のシルクドレス。どう考えても目立つ。

「勝手に持ち出したら他の人に怒られない?」

「なんかわたしのために用意してくれたみたいで、寄付されちゃったんだよね」

 さすがは活動家。評判の高さでなんとかできちゃう人だ。

「そっか。ま、ぼくとしては制服でよかったと思うよ」

 だってぼくも服はさんざん悩んで制服にしたのだもの。

 これで彼女とおそろい。

「じゃ遅れた分を取り返そうか」

 ぼくは彼女の手をにぎると公園の出口を目指した。

 最初は戸惑いがちだった彼女は公園を出る頃にはすっかり学校ではきはきと動く状態に戻ってた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

001876 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る