曲
バブみ道日丿宮組
お題:これはペンですか?違うわ、それはピアノ 制限時間:15分
曲
旋律を奏でるのに楽器は必要ない。音符を並べればそれだけで音楽はできあがる。作曲なのだから当たり前と言われるかもしれないが現実は違う。
「……ん」
出来上がったフレーズにおかしなところはないかと実際に楽器を使う。
今ではペンさえあれば実世界に楽器はいらない。
コンピュータに自分が作った楽譜と同じ通りに音符を配置すればいい。
「さて……」
あとは再生して確認するだけ。
この一瞬だけ集中力がいつもの3倍になる。
どこで配置間違えたか、あるいは楽譜におかしなところがあったのかを聴き比べなければならない。まぁこの問題は回避可能である。ならば、そうした方がいいと友人に言われたこともある。
だが、楽譜を現実世界で動かすほど見える世界が異なるものはない。知り合いの作曲家のほとんどコンピュータによる作曲に移行してる。そのことを否定する気はない。やりかたは個々それぞれだ。
逆に僕が異端のように見られるのは少し癪だが、音楽性の違いのようなものだとわりきってる。
「アップしてみるか」
プロの仕事とは違い作り上げた音楽は動画配信サイトで公開してる。しかもフリー素材として使えるようにダウンロードサイトに元データと利用規約を圧縮したファイルを説明欄に書き込んでる。
たまに利用規約内にある連絡先である僕の個人アカウントにお礼がメインの内容が送られてくる。あとは……まぁ罵倒もあるし、要望もあったりする。
僕があのプロだと知られることは当分ないだろうし、こういって違う世界を共有できるのは素晴らしい。仕事として関わるのとは違い、聴いた人が様々な理由で訪ねてくる。
「……」
再生数は事務所が作ったアカウントより大分低い。10分の1……20分の1ぐらいものだ。名前がバレれば上がるのだろうか。いや……事務所にまず怒られるかもしれない。作ったのであれば、自分だと証明できるアカウントで出してほしいと。
それはダメ。
一番つまらないものだ。
僕の旋律が好きなファンというよりは、○○だからというだけで聴きにきてくれる方がメインである。それは本当に僕の音楽が好きできてくれてるのだろうかと不安でしかない。
ゲームのBGMであれば、盛り上がってるときに流れてれば印象深くなるし、特徴がある場所で流れたら誰もが耳に残る。
自分の力だけでそうなったと素直に思えないんだ。
だから、僕はこの趣味をやめるつもりはない。もちろん、怒られたらやめるかもしれないけどその時はその時だ。
僕は笑みをこぼし、作業に戻った。
曲 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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