角刀牛虫我 (Gani)


Sunny なのに 寒い

夏に さなぎ かえ

魔魅まみ 有り 何?

したり! まさに 角刀牛虫我ガニ


人の肌は柔い 蟹の殻は堅い 蛾の羽は撓い

被造物に 備わりし違い すなわち神の意思

四つが一つになるのではない

すべてが一つ、すなわち

かいりょくらんしん 蟹も蛾も神の

何もかも座して伏して かしずく意のまにま

お前に与えられた時は仮初かりそめのものに過ぎない


西にかたき殻に鋏具備ぐびし計り知れない怪力かいりょくたけ幅利はばきあにはら得可うべあめまさりし悖逆はいぎゃくにそのあけに染まり鎧袖一触がいしゅういっしょく烈士れっしたち千切ちぎり死に死に魁偉かいいなりし魔魅まみ間引まびきされし血は地に染み込み果たして阿鼻あびに似しさまに手足萎えり人びとは悲嘆になず好餌こうじとなり



剥落せい そのちっせえ 人間性

顕現せし この天命 ごと喰らえ 

もしかして 感情って 病原性?

アッチョンブリケ! そいつぁ治らねえ 死ななきゃね


音が化け物となり追い詰めるつまり sound cancer

どれだけ怖がろうが遅い 君のせいさ

この病巣があちこちに転移したのは

癌は横歩きで増え続ける 死ぬまでな

蟹はハサミを奪われて 蛾は鱗翅りんしを焼き切られて

人は皮膚を腐らしめられてくらき闇に身ほだされて

それでも何ぞ宿やどたもう? 地に伏したお前に何が残る?


知らなかったのか? 人類以外には人類の感情が無いのさ



殻の中はからだとバレた身体 さあここからだ


鱗翅目りんしもくが浜を歩く

十脚目じっきゃくもくが空を翔ぶ



庭には二羽にわ鶏がいましたが蟹にどちらも喰われました

坊主が屏風に上手にモスの絵を描きましたが寺ごと燃されました

人間? 人間には特筆すべきことはありませんでした

存在ひとつで満悦するのは ひとえに神のみであられました


メガネカイマンが蟹とタイマン 蟹の圧勝

鰐は蟹と比べしなやかさに欠けた模様

蛾 VS 蟹の決勝 蛾はリングインせず蟹の不戦勝

蟹は「人が我らを食う時代は終わった」と権利を主張

小林多喜二記念館は占拠され蟹コミューンと改称

かくして第三次世界大戦は 蛾と蟹と人類の三国志に

もはや霊長などいない以上 これは人間にとって成長の

チャンスでもあった 抗おう

たとえ 人ですらなかったとしても

この世界を新しく導く者が来るだろう

そうだ諸君 新しい人の声が聞こえないか?

その人は透き通った響きで きっとこう言うのだ


「んちゃ! カニエ・はざま・ガガーリンだっちゃ

 お父さんは蛾で お母さんは蟹だってばよ

 それでも私は人間だ」


ただ歩くことを蟹は知っている

ただ翔ぶことを蛾は知っている

人間だけが何も知らない

知らないからには学ぶしかない


命に嫌われている自覚があるならば

言い訳などせずにさっさと死ね

お前の泡のような自意識など

赤ちゃん蟹の餌ほどの価値もない


人類の個体数が減るごとに

蟹たちはどんどん強くなっていく

人類の這いつくばりを

蛾はそもそも気にする素振りすらなく


世はすべて事も無し


蟹は必ずチョキを出す

蛾は必ずパーを出す

では人間は? グーか? いや違う

人間にはもう手が無い

蟹が全部切り落としたから

文字通り人間にはもう手が無いんだ

つまりこれは絶対に勝てないジャンケン

もう命乞いしかしようがない

手も足も無くなった人間には

残った口で歌うしかしようがないんだ

さあどうだ? お前は歌えるか?

最高の命乞いを歌ってみせろ

人間でしか歌えないスワンソングを

蟹には口がない にも拘らずやつらは歌う

おれには口しかない だからこそより一層おれは歌う



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