第117話 優勝したのは
俺と唯華まで参加することになってしまったベストカップルコンテストも、全てのアピールタイムが終了。
観客からの投票の集計と……一旦控室に戻っての、『準備』も終えて。
「というわけで、優勝は~? 秀一&唯華カップルでっす!」
「大多数の票を掻っ攫っていきましたね」
そんな
どうしてこうなった……いやマジで。
結果を伝えられた時点で「本当のカップルじゃないんだから」って固辞しようとしたんだけど、「皆さんそれをわかった上で投票されたのですから」と財前会長に諭され。
更に他の参加者の皆さんも、なんか「へへっ、お前らには負けたぜ……!」的な妙に爽やかな雰囲気で接してくるもんだからもう後戻りはできなかった……。
「それでは、優勝賞品の贈呈でーすっ! 賞品はぁ? なんとなんとぉ?」
「『結婚式』、です」
「神父役はこの私、烏丸華音が務めさせていただきまっす!」
というわけでタキシードに着替えた俺は、渋々また舞台袖で待機しているのだった。
にしても、衝撃的な出来事……確かに発生しましたね、財前会長……。
実質、貴女たちの手によって発生させられたようなもんですけど……。
♥ ♥ ♥
優勝賞品も、勿論事前に文化祭実行委員会で話し合って決めたもの。
ぶっちゃけ今年はほとんどお金が掛からない企画なんで、予算ほぼ全ツッパで本物の衣装をレンタルしていた。
せっかくだし可愛いのがいいよねー、とか私も含む女子陣できゃいきゃい言いながら選んだウェディングドレスだけど……。
まさか、自分で着ることになるとは……。
衝撃的な出来事って、これのことだよねー絶対。
「義姉さん、よくお似合いですよ。とても綺麗です」
「……ありがと」
ドレスの裾を持ってくれてる
ていうか一葉ちゃん、いつの間にベールガール引き受けてくれたんだろ……。
なんか、ステージから戻ったらもう控室にいたけど……
まぁたぶん、華音の根回しだと思うけど。
司会の合間に、よくやるよねあの子もホント……。
「流石に『本番』では私がこの役目を負うことは出来ませんため……本日は本番の分まで、全力で務めさせていただきますっ」
「ふふっ、よろしくね」
フンスとちょっと鼻息の荒い一葉ちゃんに、微苦笑交じりに返したところで。
「それでは、主役のお二人にご登場いただきましょう」
会長さんのアナウンスがあって、いよいよ私たちの出番のようだった。
◆ ◆ ◆
左右の舞台袖から出てきたお姉とお義兄さんが、それぞれ中央へと歩み寄る。
「……驚いた。思ってた以上に、凄く綺麗だよ」
「そっちこそ……想像してたより、ずっと格好いい」
顔を合わせた二人がそんな会話を交わし、観客席から歓声や口笛が吹き荒れた。
二人の設定的に、たぶんパフォーマンスだと思われてるんだろうけど……これは普通に、ガチで本音を伝え合っているだけである。
いやぁ、にしてもさぁ?
ベストカップルコンテストでぇ?
お姉とお義兄さんが優勝するなんて……。
ていうかむしろこのためにベストカップルコンテストを提案したのであり、私が見たかったからこその結婚式である。
人によっては罰ゲームなこの賞品であえて参加者を絞ることで、二人にヘルプを頼むための布石にもなる一石二鳥の策ってわけよ。
更に会長さんと共謀してアピールタイムの内容をよりゲロ甘仕様に切り替えることで、そっちも存分に楽しませていただきましたーっ。
とはいえ、流石に最後のお義兄さんの『告白』はちょっと想定外だったけどねっ?
あぁ、あと想定外と言えば。
誰も頼んでないのにしれっとワンリーフちゃんがベールガールとして控室に座ってたのはちょっと笑っちゃったよね。
どうせ頼もうと思ってたから、手間が省けて助かったけどっ
さってと、あとは一番間近で二人の晴れ姿を見るだけ!
ふへへっ……まだ付き合ってさえいないのに、皆の前で誓いのキスをしちゃうなんて……。
やーらしいんだっ?
まっ、流石に今回はフリってか寸止めだけどねっ。
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コミカライズのWeb連載、第2話後編も昨日更新されております。
完全無料でご覧いただけますので、よろしくお願い致します。
・Comic Walker
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7月27日発売の電撃だいおうじVOL.119には、最新第5話が掲載されております。
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