第116話 告白
「さて、早くも最後のアピールタイムのお時間となって参りましたっ!」
司会である華音の盛り上げに応じて、ボルテージを上げていくベストカップルコンテストの会場。
私も秀くんの言葉や行動でキュンキュンしっぱなしだけど、最後に何が来るのかといえば……。
「ラストのお題は……これぞ王道! 『告白』だぁ!」
ということらしかった。
「これもシンプルに、皆さんが実際にした告白を再現して我々に見せてください」
「最後の一本だけに、印象バツグン! ここでビシッと決めちゃえば、どのカップルにも優勝のチャンスがアリアリですよっ!」
……ところでさ。
なんかさっきから、ちょーっとだけヤバい雰囲気を感じないでもないんだけど。
♠ ♠ ♠
ここに来て、一つ懸念事項がある。
それは……なんか俺ら、謎にウケちゃってね? という点である。
さっきのアピールタイムでのリアクション然り、俺たちの時の反応が一番デカい……ような気が、しなくもない。
他のカップルの方が、よっぽどカップルっぽいことしてるはずなのに……。
ないとは思うけど、変に票が入っちゃっても困るし……念のため、最後はウケ狙いに走るとかした方が良いんだろうか……?
「ナイッス告白、ごちそうさまでしたーっ!」
「とてもロマンチックな告白でしたね」
って、考えてるうちにもう俺たちの番じゃねぇか……!
まだ何も決めれてない……!
……ていうかこれ、そもそも俺たちの場合はどうなるんだ?
「さて、続いて最後のカップルですが……『実際にした告白』というこのお題、実行委員のお二人にはどういう形でご対応いただきましょうね?」
「じゃあじゃあ~? ホントに告白するなら、何て言うっ? とかっ?」
「良いですね、ではそういう感じでどうぞ」
ん゛んっ……!
二人して、軽い調子で爆弾放り込むのやめていただけます……!?
これで変な告白して、万一唯華に「へー、秀くんはこんな告白で私を落とせると思ってるんだー?」とか思われたらとか考えると……いや待てよ?
閃いた。
お題に沿っており、唯華に変な誤解を与えることなく、最下位にもなる。
「烏丸唯華さん」
最適解は……これだ!
「俺と、結婚してください」
実際にしたプロポーズであり、当然唯華もそれをわかってるので誤解のしようもない。
そして、普通なら最初の告白がこの台詞というのは重すぎて引くレベルだ。
……が、ワンチャンこれだけだとまだ弱い可能性もある。
そこで、ダメ押しのプラスα。
告白と同時に跪いた俺は、唯華の手を取り……その薬指に、口付ける。
「っ!?」
唯華が息を呑む気配が伝わってきた。
ふっ……付き合ってもない段階で女性の指にキスする男とか、皆もドン引きだろう。
………………あっ、やらかした。
演技とはいえ、実際に指にキスしちゃったんですけど!?
付き合ってもない相手の指にキスするとか、下手すると通報ものですよねぇ……!?
「はっ……! はい……!」
どこか弱々しい返事を口にする唯華の顔を、恐る恐る見上げて……ホッとする。
「っ……! っ……!」
笑いを堪えているせいで真っ赤になった顔を逸らし、唯華は口元に手を当ててプルプルと震えていたから。
良かった、ウケただけで引いたり気持ち悪がったりしてる様子はなさそうだ。
にしても、そんな笑う程のことだったかな……?
なんて、俺がちょっと疑問を覚えつつも安堵の息を吐いていると。
『キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!』
『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
うおっ、なんだ!?
観客席から、女性の……歓声?
と、男性からの……なんだろう? 感心の声……?
えっ、どういうこと……?
皆もウケてくれた……ってこと……?
♥ ♥ ♥
秀くん、ホントさぁ……ホンットさぁ……!
そういうとこだよ!?
や、秀くんがやろうとしたことの意図はわかるの。
私も、「私たちなんか変にウケちゃってない? ラストでコケとかないで大丈夫?」とか思ってたから……秀くんも、同じことを考えた結果の行動なんだよね?
そして、まぁ実際のとこ……方向性としては、間違ってないとも思う。
付き合ってもない段階でプロポーズした上で指にキスとか、普通の人がやったらドン引きだもんね。
ただねぇ、秀くん……!
己の顔の良さを自覚して!!
秀くんがやったら、絵になっちゃうから!
更に、今の私たちの格好考えて!?
魔女に求婚する吸血鬼とか、なんかこう……!
色々、『ストーリー』的なのが出来上がっちゃうでしょ!?
ロマンティックな光景になっちゃうの!
そして何より……!
私の心臓へのダメージが致命傷レベル……!!
やっば、咄嗟に顔背けたけど絶対これ首元まで真っ赤になってるやつだよ……!
……まぁでも、秀くんのことだし?
これも演技してるとか、勘違いしてくれるでしょ……たぶん。
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