第3話

「ねえ、あたし可愛いでしょ」

だから発表会見に来てよ、と媚びた声で私を見るのは幼い少女。

傍らには誰もいない。


そういう風にして、誰にでも声を掛けて、

変な人に連れていかれるよ。


「あたしを見てくれるなら誰でもいいの。私は精一杯踊るわ。それで充分、見合っているでしょう?」

赤いドレスと揃いの靴で優雅に回る。


安易に手を差し出してしまってはいけない。本能がそう訴える。


違うのだ。君はもはや、無垢ではない。

望むものはなんだ。授業参観の父兄代わりか。取り巻きという響きだけか。


吐き気と眩暈がした。


私ではなくてもいいのに、私でなくてはいけないような、錯覚。


失礼、私には予定があるので。

足早に雨の中を抜ける。

蒸し暑い空気、鮮やかな花輪。

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