第3話
「ねえ、あたし可愛いでしょ」
だから発表会見に来てよ、と媚びた声で私を見るのは幼い少女。
傍らには誰もいない。
そういう風にして、誰にでも声を掛けて、
変な人に連れていかれるよ。
「あたしを見てくれるなら誰でもいいの。私は精一杯踊るわ。それで充分、見合っているでしょう?」
赤いドレスと揃いの靴で優雅に回る。
安易に手を差し出してしまってはいけない。本能がそう訴える。
違うのだ。君はもはや、無垢ではない。
望むものはなんだ。授業参観の父兄代わりか。取り巻きという響きだけか。
吐き気と眩暈がした。
私ではなくてもいいのに、私でなくてはいけないような、錯覚。
失礼、私には予定があるので。
足早に雨の中を抜ける。
蒸し暑い空気、鮮やかな花輪。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます