第二話 告白大作戦
今日も私は、あのクソガキ....もといノア様の世話を行うために、身支度を整えていた。その時、コンコンとドアをノックする音が聞こえ、あの忌々しい声が聞こえてきた。
「あ、あのーレイハムさん。郵便が届いております。」
自室の扉を乱暴に開けると、委縮したようにこのゴミ虫。....ソフィアだっけか?が、一通の手紙を持って立っていた。
「そうか、ごくろう。戻れ。」
そう私は言って、胸元から取り出したハンカチで手紙を拭くようにして受け取る。
.....あぁあぁきったねぇなあ。なんでよりによってこいつに持ってこさせたんだ?
念入りに拭き終わった後、差出人をみる。.....あぁ、やっと来たか。
心躍らせるようにして封を切り、お目当ての書類に目を通す。
「ふぅぅん....ふっ、ふっへへへへぇ!」
.....おっといかんいかん、つい笑みが、待ちに待ち、耐えに耐えたこの数年間。
やっと俺にツキが回ってきたなぁ!
手紙を机の上に置き、若い生娘が好きな男性に会いに行くかのようにウキウキで部屋を後にする。
その机に置かれた手紙には、
『あなた様が報告なされた、新種の魔法について、フラン・アンペル連邦魔法研究会より。』
との、文が書いてあった。.....
.....「ノア様、もしかしてですけどあのインペントに恋してません?」
今日の勉強中、どうやってここを抜け出そうか考えていたノアに対し、レイハムは何の脈絡もなく急に聞いてきた。
「は?...はぁ?ん、んなわけねーし!てか急になに言ってんの?!」
傍から見ればバレバレな否定だったが、ノアは、あくまで冷静に否定しているつもりだった。
「そんなに好きなら告白すればいいじゃありませんか。」
「だから、おまえなぁそんな..」
「絶対に告白を成功させる方法、ありますよ。」
「......へ、へぇ....聞いておこうかな?」
彼女を毛嫌いしているコイツがこんなことを言ってくるなんて、とも思ったが、落絶対、なんて言われたら聞くしかなかった。
「まずは、相手がどう思っているかからですが、まぁ、お二人の関係を鑑みてここは省きましょう。いいですか?大事なのはムードとゴリ押し、そしてプレゼントです。いかに相手が告白を受けようと前向きに思える雰囲気か、いかに相手にYES以外のことを考えさせないか。告白は小説のような夢の代物ではありません。戦争なんです。なので、プレゼントは武器ととらえるのが良いでしょう。さまざまな要因がありますが武器の優劣...魔法使いの質によって戦況は簡単に好転します。しかし戦争である以上、無様に敗北もするし、逆に相手に無条件降伏をさせることもできる。....お好きでしょう?戦争遊戯?」
「......でもレイハムあんた彼女なんてできたこと..」
「それ以上は本物の戦争ですよノア様。」
だが、ノアは少し心に留めて....いやほんのちょっとだけ、ほんとにちょっとだけ留めておき........翌日から告白大作戦のために行動を開始した。
「まずは、ムードねぇ....なら、あそこしかないだろ。」
そう思ったノアは、ソフィアといつも来ている山の秘密基地にさまざまな道具やテーブル、イスを持って行った。どうせやるならアイツがあっと驚くものを作ってやる。
.....ただの洞穴では、ムードもへったくれもないってなもんだよな?もっと大きくしてやんよ。
そして始まる大作戦。まずは丸二日かけて、洞穴の中で立っても大丈夫なくらいに広げた。この間に自分が所持している服の半分くらいは、土汚れや汗、その他の要因で一気に汚くなってしまった。
....ノックスの村では、とうとう頭までイってしまったと口ぐちに言われたが、そんなことを気にしている暇はない。彼女の為ならいつもより力が湧いてくる。そんな気さえしているのだから。
次に洞穴に木や板で補強を行っていく。だが、いかんせん屋敷の書物を見よう見まねでやっているのでうまくいかない。だがそれでも無理やり建設していく。
途中何度も傷を負った。木のささくれだったり、板が上手くはまらず頭に落ちてきたり、トンカチで自分の指をぶっ叩いたり...とにかく散々だった。だが、丸五日もたてばまぁまぁな仕上がりにはなった。もうこのころになると自分の半そでの服は皆ボロボロなので冬服を着ていた。
.......村では、自分の墓を作っているとまで揶揄された。
次にドアを作ろうとした、だが、地面が水分を多く含んだ柔らかめの土なのでうまくはまらない、はまったと思ったらドアごとずり落ちやがる。だからここは無理やり石とかで補強した。
あとは、内装に....あっ!剣とか立掛けたらカッコいいよな。とか思って、屋敷から勝手に剣を拝借したりした。完成までは丸ひと月かかった。
この間にもレイハムとの勉強なり、やることはやっていたので、ソフィアからはかなり心配された。
「最近すぐ一人でどこかへ行っちゃうし....どうしたのノア?」
あんまりに帰りが遅かった時に、ソフィアは我慢できずにノアに聞いてしまった。
「なんでもないよ、大丈夫だから。.....あっでも秘密基地にはいくなよ?今あそこ大変だから。」
「.....そう、ノアがそういうなら。」
そして次にプレゼントの用意をした、プレゼントは何にするかは決まっていた。
なので....
「ソフィアには止めろと言われたけど、やるしかないもんね。」
そう言って、メスの鹿を一匹狩り、皮をはいで村のはずれにある皮屋でなめしてもらい”あるもの”を作った。
......よし、準備は整った。
インペント ~その者、人にあらず~ 鉄華巻 @kibayasi0124
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