第3話 魔法

 最終確認が終わったあと、行ってらっしゃいとペレちゃんに言われてたどり着いたのがここ。

 どうやら今はもう既にゲームの中での深海についたらしい。

 周りが真っ暗で何も見えないけど。



 ………早速行き詰まりだ。

 ゴールが分かってるけど過程がわからないじゃなくて、ゴールすら分からないな。

 手探りで行くしかなさそうだ。



「ここは何処だろう、早めに小さめの洞窟が見つかればいいな。でかいやつは入ってこれないだろ。」



 喋ってみて気づいたが、問題なく息ができるし、喋ることが出来てる。空気を出さずに声を出しているのか、取り敢えず床でも壁でも良いから場所を土がある場所を探ろう。



 重力が弱いのか浮力が強いのか分からないが、上下左右も分からない。この様子だと、深海なのに何処を目指して居るのか分からず、ずっと広大な海を彷徨うことになるかも知れない。ゾッとする話だ。



 取り敢えず何処かにたどり着くことを願って真っ直ぐ進んで見る。



 すると不自然に強い水流が起きて、僕を真後ろにある土まで運んだ。


 その影響で圧力耐性スキルがレベルアップした。



「いや、有り難いけどさ」


 何から突っ込もうか。

 とりあえず、どこから何処までが圧力なのか考えてみよう。


 多分だけど深海の水圧は常にかかってるからすぐにレベルアップしたのかも知れない。

 スキルがないと生きられないとペレちゃんが判断したほどだ。

 きっと常にかかってる圧力がかなり高いはずだ。


 検証………はある程度この深海で生きる目処が立ってからかな。



 それからまた触れた土を辿って地形を探ってみる。



「………」



 どうやら不正解の方向に向かおうとしていたらしく、またもや水流で流される。


 また、手足で周囲を探りながら動いてみる。

 また違う所に向かっていたようで、強めの水流に押し流される。




 そんなことを繰り返しているうちにだんだんとこの辺りの地形を脳内でマッピングすることが出来てきた。




 脳内マッピングの結果では、深海の中でも一番下の底の床に穴があって、その中がまた入り組んだ洞窟になっているみたいだ。


 もしかしたらこの洞窟は横穴かも知れないし、この洞窟の地形もすぐに忘れてしまうかも知れない。


 目が見えないのがここまでの辛いだなんて。




 この洞窟の中には攻撃してくる生物は居ないようなので、奥の方に潜って、色々と確認をする。


 まずは取得したスキルの確認だ。



 《召喚術》 

 《テイム》 

 《愛嬌》  

 《カリスマ》

 《魔力量増大》

 《共感覚》  

 《テレパシー》

 《身体操作》



 それに加えて《魔法の才能》と《適応》で取得したのが、


 《闇魔法》


 《圧力耐性》


 《毒耐性》


 なんだか真っ暗な場所であれだけ騒いだのに結局取れたのが少ない気がする。ペレちゃんとずっと話してただけなのか? まぁ、色んな場面で役立ちそうなスキルを貰ったから良かったけど。




 ここが深海だとしても、ゲームなのは間違いないのでメニューを開くことができる。

 洞窟に入る理由は、スポーンする場所に選ばれたならある程度は安全かもしれない。

 だが、どこかに水が通る道があって今ではこの洞窟を出たら一瞬の油断も許されない魔境と化していることだろう。

 ということは、ここで出来るだけ情報を収集するのが得策かもしれないと考えたからだ。


 



 ステータスとメニューを開いてみる。(ステータスとメニューは別物になってる。戦闘の合間に確認することができるようにと出来たらしい。)




「………お!」



 見つけたのはゲーム内限定の掲示板。以前言ったとおり、ゲーム内限定とゲームと現実どちらからもアクセス出来る物がある。



 どちらからもアクセス出来るのはもう既に読み尽くしたと言っていいほど見たことがあるので、ゲーム内限定の方を見てみよう。



 まずはどんなスレッドが立っているのか、見てみようか。





1:【異世界転移は】総合スレ その85【ロマンだ】


2:【あなたのおすすめ】DWVRの絶景スレ その56【教えて下さい】


3:【ペットは】テイマー、サモナースレ その48【最高!】


4:【技術は】スキルスレ その50【最強なり!】


5:【力は】スキルスレ その49【パワー!】


6:【ここは何処?】地図スレ その34【私はだ〜れ?】


7:【アイドルなら】有名NPCスレ その69【現実ではなくとも!】


8:【少なくとも】有名プレイヤースレ その70【一般人じゃない】


9:【職業職人】生産総合スレ その56【募集中】




 DWVRはDifferent world virtual realityの頭文字を取ったDWVRで、このゲームの略称だ。ちなみに読みはそのままディーダブリューブイアール。


 変にVRやDVに略称を変えると面倒なので頭文字を取っただけになったそうです。


 他にも色んなスレが立ってたけど数字が大きいのを選んで見た。その中でも今役立ちそうな地図スレに行ってみる。




【ここは何処?】地図スレ その34【私はだ〜れ?】




1.名無しの冒険者


 できる限り地図を埋めて、スポーン場所が無人島などの悲劇を回避するためのスレ


 相談する人は相談者というコテハンにすること。(順番で番号も)



 前スレ

 ↓

 http://*************


以下テンプレ


 判明している限りの初期スポーン

 砂漠はライブ王国→******.jpg

 海辺はグリンダル皇国→******.jpg

 雪原はビリンズ連邦→******.jpg

 ……




2.名無しの冒険者


 羅針盤さんスレ立てお疲れ様です




3.羅針盤


 なぜ分かった!? あと羅針盤さんはやめてくれと何度も言ってるだろう!




4.名無しの冒険者


 いやいや、結構乗り気にコテハン付けてるじゃん。




5.羅針盤


 もう、掲示板には羅針盤って言ったほうが通りがいいし……




6.名無しの冒険者


 で、この流れは何回目だっけ?




7.羅針盤


 スレが34だから30回目だな。




8.名無しの冒険者


 ………過疎り過ぎじゃない?




9.羅針盤


 昔は一番伸びが良いスレだったのに……


 今となってはコテハン付きは俺だけなのか……




10.傍観者


 ということでコテハン付けてきました。ちなみに期待してたらゴメンだけど、ここまで全部私が書き込みしたやつだからこのスレは二人しかいないよ。




11.羅針盤


 なんかそのコテハンは俺が見世物になってる気がする。




12.傍観者


 このゲームの最初からそんな感じだったから多分合ってる。




13.羅針盤


 俺は見世物だったのか(´・ω・`)ショボーン




••••




 このあとも羅針盤と傍観者の書き込みが続いている。


 見てるのも楽しいけどさっさ質問してみよう






22.名無しの冒険者


 今自分の居場所が分からなくて困ってます。


助けてください




23.傍観者


 おっ、34になってからの第一村人だ!




24.羅針盤


 おう! 何があったのか詳しく教えてくれ。




25.相談者1


 実は…


・・


 と、今の僕の現状を色々書き出していった。


 それとついでにと僕のいる洞窟の地図とまでは行かなくても相関図のようなものも書き込んだ。


・・


27.相談者1


 アルファベットが小さな広場です


C行き止まり


I通路が2つ


Y通路が3つ


X通路が4つ


5つつながっている部屋はありませんでした。




         入口


        ↙↓↘↘

       C  I  Y ←I

         ↓ ↓

          •

          •

          •

         ↓

         C今ここ←




 です。




32.羅針盤


 深海選んじゃったのかー




33.傍観者


 羅針盤さんと一緒じゃんw




34.羅針盤


 お前の苦労はよく分かる




35.相談者1


 まだログインして30分もしてないので苦労は特にしてないです。


 でもこれから苦労はしたくないので助けてください。




36.傍観者


 徹底的な他力本願、私は好きよ。


 ほら、羅針盤さん二号ができる前に早く救出しにいってよ。


 私はここで眺めてるほうが楽しそうだからそうする。




37.羅針盤


 もうちょっと手伝ってくれてもいいんだぞ?


 とにかく、俺が深海に行ってそれっぽいの見つけに行くか。


 周りに特徴的なオブジェクトとか無いか?




38.相談者1


 真っ暗で何も見えないです。




39.傍観者


 早速詰んだ。


 情報が無いんじゃどこに居ようと見つけられないでしょ。




40.羅針盤


 このゲームには感覚系のスキルが豊富でいろんな習得経路があるんだが、良ければアドバイスをするために最初に選んだスキルを教えてくれるか?




41.相談者1


 選んだスキルが


 《召喚術》 

 《テイム》 

 《愛嬌》  

 《カリスマ》

 《魔力量増大》

 《共感覚》  

 《テレパシー》

 《身体操作》

 《魔法の才能》

 《適応》


 そして《魔法の才能》で《闇魔法》

 《適応》で、《圧力耐性》と《毒耐性》

 です。




42.傍観者


 お、《適応》選んだんだ。

 えらい!




43.相談者1


 掲示板にとりあえず取っても損はないし、取っとけと書いてあったので。

 


44.羅針盤


 そうか、俺がやったことは無駄じゃなかったんだな。



45.傍観者


 羅針盤さんが書き込んだ情報?

 でも、普通はそれ見た時点で深海なんて選ばないけどね。

 優秀じゃなくて狂人かも。



46.羅針盤


 とりま、闇魔法ありゃなんとかなるだろ。

 あとはあれだな、魔力を動かすためのスキルがないと魔法は使えないからそれの取得を頑張れ。

 


47.相談者1


 そのスキルの取得方法はなんですか?



48.羅針盤


 あれだ、体の中にあるエネルギーを感じ取れれば出来る。

 気合と根性と精神がしっかりしてれば問題ないはずだ。頑張れ。



49.相談者1


 傍観者さん解説をお願いします



50.傍観者


 つまりは具体的な方法は見つかってないってこと。

 現地の人は才能があればできる。無ければできないって言うからよく分かってない。

 でも、本当に出来る人は簡単に出来るから自分の才能を信じてやってみて。



51.相談者1


 わかりました。僕は天才です。出来ます。絶対出来ます。二分の一で出来るなら僕は出来る側に決まってます。



52.羅針盤


 その自己暗示で行けるのか不安だ……

 まぁ、俺は迎えに行く準備をするから後はがんば。



53.傍観者


 ちょっと相談者くん気に入ったから、私も気が向いたら会いに行こ。



54.相談者1


 了解です。

 絶対出来るけど、確認するまでもないことだけどやってみます。



55羅針盤


 ……まぁ、出来なかったら笑ってやるよ。



•••




 さっとメニューを閉じてみると、あたりは真っ暗になった。


 よし。

 魔法を使うためのスキルを手に入れればいいんだな?

 

 気合と根性と精神か……参考にならんな。

 とりあえずやれるところまでやろうか。


 僕は水中に浮かびながらあぐらをかいて体の奥に意識を向ける。


 ……

 ………… 

 ………………。


 おっ、これかな?

 と、思った瞬間。


『《魔力操作》を取得しました』

 

 ペレちゃん!?

 もう会えないと思ってたのに、こんなに早く再会できるなんて。


 ペレちゃんに言いたいことがいっぱいあるんだけど、分かるよね?


 なんでこんなにもハードモードにしたん?

 目が見えない、何も聞こえない、ついでに言えば嗅覚もない状態でペレちゃんの声を聞いてめっちゃ安心したんだけど?

 もうお説教なんてしないからもっと喋って



 まぁ、僕には魔法に対する才能なあったということで。

 というかもしかして僕に才能なければ闇魔法って意味なかった?

 うわぁ……


 闇魔法を使ってみるか。


 この世界には2種類のスキルの使い方があるらしい。

 スキル名を宣言するか、体内で魔力やら魔法陣やら色々やって使うか、だ。

 宣言して使用しているうちに呼吸をするようにできるときが来るらしい。


 プレイヤー目線で言うとスキルのレベルが技術力が上がって、自動で行っていたのを主導で動かせるようになるように、スキル名を宣言せずに使えるようだ。

 ちなみにこれはこの世界に来る前の掲示板情報ね。


 つまりは僕は今から使うことを相手に教えながらスキルを使うことになる。


 それに加えておそらくスポーン地点≒安全なはずだ。

 なので僕はこうしよう。


「《闇魔法》《闇魔法》《闇魔法》《闇魔法》《闇魔法》《闇魔法》《闇魔法》………




 ……

 …………

 ………………



 使っている間になんとなく分かってきた。


 体の中で魔力っぽいのをギュイーンと捻じって脳の奥の方に貼り付ければ発動する。


 一体どれが何をしているのかは分からないけど。

 大体そんな感じのことが闇魔法を発動するたびに起こっているので闇魔法の使い方だけは分かった。


 それになんとなくだけど魔力が減らずに残っている気がするので、ゲーム風に言うと「発動中はMPの最大値をマイナスする」タイプの魔法だと思う。


 とりあえず視界の問題は、なんとかなった。


 僕の頭の中に映るのは、地図だった。

 3Dのモデリングを見たことがあれば分かるようなあの立体の地図だ。

 ただ、どんな仕組みなのか、360度どこもなんとなくで距離が分かり、ほぼほぼ死角がない。

 岩、僕、小魚となかなか分かりやすくはあるものの一人称ゲームを三人称視点でやっているのような不具合がある。

 これは慣れればすっごく便利なんだろうけど、全く慣れない。

 効果範囲は狭い洞窟の中だから分からないけど、少なくとも半径100メートルはありそうだ。


 手を伸ばせば視界の中の人が動いて、泳いでいれば慣れていないせいか、壁に頭をぶつけてしまった。


 とりあえず辺りの確認はできるようになった。

 自分の意志で移動は可能だ。


 じゃあ早速海底洞窟から出てみようか。


 

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