第12話

本文

お姉ちゃんは冷たい視線を私に浴びせかせこんなことも分からないのと言いたげにけだるげに言った。




「感情を殺して何でもないような顔すれば結果が変わるの?本当に悔しかったら泣くくらい悔しがるべきだし、そもそも悔しくないんだったら辞めた方がいいよ。結喜ちゃん貴方そのままなにも感じれなくなっちゃたらいつか全てに絶望しちゃうよ」




 なにを言ってるのか分からなかった。でも、その時は確かに悔しかった。それがコンクールの賞を取れないことに対してなのか、お姉ちゃんに文句の一つすら言えなかった自分にたいしてなのかは今となっては定かではないけれど、泣いていた。そのことに気づいたのはふと鏡を見たときだった。




泣いている女の子が居ると思った。情けない子だとも思った。鏡の女の子が自分だと分かったときにはお姉ちゃんが抱きしめてくれていた。




「結喜ちゃんは泣かない子だったから心配してたの。何にも動じないことは強い証明だけど時には自分を解放してあげなきゃ駄目だよ。いつか壊れちゃう日が必ず来るから」




 お姉ちゃんの言葉にはやけに実感がこもっていた。まるで壊れてしまった人を見たことがある様な口ぶりだった事だけは覚えている。




 トイレから戻ったときに目は腫く涙でしゃくしゃになった顔を見たとき両親は凍り付いたように、金縛りに遭ったように固まっていた。それも一瞬で小さい声だったけど確かに私は聞いていた。「そうか」と一言安堵したような声を発したパパの声を。




その時のパパの顔は私が下を向いていたから分からないけどきっと微笑んでいたのだと思う。結喜の微かなでも確かな成長を感じ取って。


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