第6話

市内に出かけるたびに、その電停にその人はいた。しかし、しばらくたって気付いたら、もうその人は居なくなっていた。当然だと私は思った。こんな所にそんな人がいたら、役所に必ず連絡が行くだろうし、しかも女性の高齢者だ。何らかの対応があったのだろうことは考えられることだった。もっと住み心地の良い所に収容されたのだろうか。それとも・・・と他人事ながら気になった。そして数年後、主人の家を飛び出した私は行くあてのないホームレスになった。あと三年で70になろうかという歳になっていた。どこへも、誰にも頼れるものはなかった。新聞で見た住み込み募集の広告を握りしめて、私は恥も外聞も過去もなにもかもを、かなぐり捨てて、どうなるかわからない冒険の旅に出た。

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