第5話
それは市内で、一番賑やかな繁華街でのことだった。市電の停留所という、一日に、何百人の人々が利用するかわからないという場所に、居場所を決め込んだ女性のホームレスだった。年の頃は、70は過ぎていようか。一見して、その人は貧しいとは言えない服を着ていた。ホームレスではあっても、それまでの暮らしぶりを思わせる雰囲気があった。薄汚れてはいたが、銭湯には行っている様子が見てとれた。大きな旅行カバンとバッグをそこに置いて、立ったり座ったりしている。一体、この人に何があったのか。自分をたくさんの人の目に晒して。それは多分、女性だからだろうと思った。ここにいればたくさんの人が自分を見る。つまり、見守られるということにもなる。何かあれば助けてもらえる。心細い悲しさが、自分を人目に晒す場所を選んだのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます