龍国の襲来(7)
突然の出来事に、シリカは絶句していた。
父上の書斎に近づき、入ろうとしていた瞬間、隣の壁が吹っ飛んで、瓦礫とともに吹き飛ばされた見覚えのある人物がいた。
その人物は赤ずくめのスーツを着ている。
髪の色は緑で、身体はVの角度に曲がっているというのに高身長の男性だとわかった。
一見して自分の叔父であることに気づいた。
ってことは…いや。そんなことよりアイツを一瞬置いといて……
おずおずと壁に空いた穴の中を覗き込むと、そこには自分の魔力を放出している父上がいた。
「父上?」
と、シリカは言うと、娘の声を聞いてルクスは声がした方向に振り向く。
「シリカ。おまえはなんでこんなところに?」
父上に早足で近寄るシリカ。
どうやら相当心配しているようだ。
「父上こそ。【はぐれドラゴン】と戦ってるかと思ったわ。どうして王国が襲われてるのにこんなところにいるの?」
と、シリカはやっぱり心配そうな表情をして聞く。
するとルクスは震えている肩を止めようと深呼吸をして、答える。
「おまえの婚約者……カエデだったっけ……に任せてこっちの問題を最初に解決しようかと思って」
そう言って瓦礫から身体を起こしているグランに視線を投げる。
グランは頭を抱えながらゆっくりと立ち上がり、怒りの満ちた目で親子を睨みつける。
「いてぇよ、弟くん」
と、グランは痛みで歯を食いしばりながら言う。
「相変わらずの強さだな。だがこんな数年間オレもちょっと訓練しててな。おまえを殺すためにあれやこれやを学んで身につけたんだ」
そう言うと、魔力を放つグラン。
……確かにちょっとは強くなった。
と、ルクスは認める。
だが自分と比べてまだまだだ。
ひとつ深呼吸をする。
すると体内の魔力回廊で流れる魔力にしばらく集中する。
……そしてしばらく集中していたら、その魔力をグランに向けて一気に放つ。
隣に立っているシリカも父上の発している魔力を感じて、一瞬にして呆気に取られた。
たしかにカエデの魔力密度に比べ物にならないくらい貧弱だったが、そもそもカエデは普通の人間ではないので2人を比較するのは不公平なのだ。
それにもかかわらず、強いものは強い。
そしてその一瞬でシリカは改めて気づく。
自分の父上がとんでもない化け物だということに。

「シリカ。おまえは離れろ。今から繰り広げられる戦いは、ちょっと危険なものになると思う」
そう、ルクスは娘に言う。
一瞬反論しようと思っていたシリカだったが、よくよく考えれば父上の言う通りだ。
素直に離れるぐらいしか自分にはなにも出来ない。
そしてそれはシリカには、あまりにも悔しくて、悲しかったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます