不幸すぎる
そして翌日。
僅かに開いた窓から差し込んでいる太陽の陽射しに包まれて、俺は目が覚ましたのだ。
もう朝か。
と、そんなことを朦朧とした頭で考えると、上半身を起こし、目を擦りながらベッドから出る。
寒い。
また気温が下がったのか?
だったらもう冬でしょ?
気になって僅かに開いた窓へと移動すると、カーテンを引っ張って開けて太陽の位置を見る。
季節によって太陽の動きが変わる。
夏至の日は、太陽はいちばん高い空を通っているけど、その日をすぎると,太陽の通り道は,すこしずつ低くなる。
言うまでもないが、冬至の日は,いちばんひくい空をとおるようになっている。
今俺が見ている太陽の位置からすると、秋分の日をかなり過ぎているところだが、冬至の日にまだなってない。
もっと正確に言えば、なりかけている。
つまり日付は11月26、27日だろなぁ。
季節はまだ秋だけど、ほんの4、5日で12月になる。
とは言え、ここは地球ではない。
であるが故、この世界の天文学理論が地球とは全く違う可能性がある。
本音を言うと同じで欲しいんだけど。
そう思いつつ、欠伸を漏らす。
すると、カーテンを閉め直してから廊下に出る。
廊下に出たら俺以外の誰かが起きていることを確認。
見渡すが、俺しかいないみたい。
まだ眠っているのかな。
珍しい。
普段、朝食を作る為にこんな朝早く起きているのはルシアナだけだが、家の中はあまりにも静かすぎる。
昨日の魔法練習はそんなに厳しかったのか?
そんなわけないと思うけど、まあいいや。
そういう日もあるさ、ってことでとりあえず、風呂に入ってルシアナの代わりに朝食作ろうか。
決めると、自分の部屋から10m離れている扉に移動する。
洗面所だ。
叩かずに扉を開けると、
「…………」
「…………あ」
風呂から上がったばかりのシリカの全裸が目の前にあった。
背中までふんわりと流れているような艶々とした銀髪に、太陽の光を反射しているような真っ白い肌。
完璧だと言ってもいいほどその彼女の身体を見ると、俺は思わず生唾を飲み込んだ。
すばらしい曲線美を持つ妖艶な彼女の胸元についている、やはり小さいけど不思議な魅力を持っている彼女のおっぱいが動くたびに小刻みに揺れている。
と同時に、食欲をそそさせるチェリー色の乳首が目を奪いそうとしているかのように……
ってそんなどころじゃねぇんだ!
「ご…誤解だ! 俺は………」
そう、状況を説明しようとしていた俺だが、シリカは全然聞いてくれる気では無さそうだ。
これは、ヤバくないか?
「よくも我がは……裸を、そんな飢えている犬のような目で……見るなんて! は、破廉恥だわ、この変質! スケベ! 獣!」
「ち…違う。これは誤解だ!」
そう、彼女との距離を置こうとしていたが、2歩後ろに後ずさっていたら滑ってしまった。
「あ!」
どん!
バランスを維持することが出来ず、俺は勢いよく床に転けた。
「いてぇてぇてぇ」
それでも彼女はその足取りを止めることなく、前進してくる。
おい、何この状況!?
まるで俺がああいうベタなアニメの主人公に生まれ変わったようだが!?!?
シリカを見上げると、背中からドラゴンの特徴な翼が突き出てきたことに気づいた。
それに普段、目に見えないはずの魔力がなぜかわからないのだが、丸見えになっている。
手のひらの中に、恐らくバスケットボールと同じくらいのサイズの【火球】が燃え盛っている。
こいつ本当に俺を殺す気か?
そう、思った瞬間、
「身の程を弁えろ!」
シリカは近づきながら叫ぶと、1歩前に踏み出して……
「あ、」
と、そのまま見事に転けたのだ。
どうやら体から滴る水に滑ったみたいだ。
どん!!
という音を立ててながら彼女の体が俺のと重なる。
ふと、我が息○で不思議な熱を感じていたが、無視。
「いてぇ〜」
更なる痛感に襲われていた。
こりゃマジでいてぇんですけど。
と、そう思った瞬間………
な、何? この感触?
なんか柔らかい。
いや、まじで柔らかいんだけど?
まるで枕みたいな、その感触だった。
好奇心を満たせる為に、試しにその物を揉むと、
「いや〜ん♡」
………………………
今のって…?
いやいや。
まさかな。
今のってきっと俺の気の所為だったな。
ほら、確かめる為にもう一度、ギュッーと……
「いや〜んんんん♡♡も…もう〜ん、やめて〜♡」
…………………おい。
ガチで言ってるの、これ?
「おい! シリカちゃん? 変な音が聞こえたんですけどだいじょ……………ぶ?」
おい! ふざけんな!!!
タイミング悪すぎねぇか??!
ルシアナが、「タイミングよく」、登場しました。
おいおいおい!
こんなことってある?
いやあるよな〜
ラノベの世界でな。
なぜこうなっちまったんだ。
「ちょ、ちょっと! 説明…………」
「き、きゃあああああああ!」
思い切り、ルシアナは声を限りに叫んだ。
「こ……この変態!!!」
パチッ!
と、躊躇もせずに容赦なくびんたされた。
………俺、何も悪いことしていないくせに、なんでこんな目にあわなきゃいけねぇんだ。
どう考えても不幸すぎるだろう。
◇
「誤解だ、って何回も言ってるだろ」
「ふん」
そう、頬をふくらませながらそっぽを向くシリカ。
拗ねてるんじゃねぇ!
あとお前、なんでまだそんな冷たい目で俺を見つめているんだ?
説明したでしょ?
俺が悪くないって。
信じてくれねぇのか?
なんかすげぇ裏切られた気分だが、まあいい。
あのことがあってから30分後。
朝食を作り、俺たちはみんなで飯を食っている。
ちなみにアリスは、今日も元気そうなのだ。
今朝のあんなことを見なくてよかった。
「あれ、肌が綺麗ね」
それを言ったのは、ルシアナだった。
きまずいこの沈黙を破ろうとしているだろ。
ルシアナってもしかして、けっこう空気読めるやつなのでは?
とまぁ、すげえ気になっているけど、今口を開けばまだ睨みつけられるだろう。
いやだなぉ。
どうしてもそれを避けたいってわけだ。
よし、口を開けないで静かに朝食を食おう。
そう決めると、ルシアナとシリカの会話に気を払う。
「羨ましいなぁ。シリカさんの肌、絶対触り心地がいいねぇ。触っても……いいですか?」
お前何聞いてんだ?
ってかなんかちょっと、息遣いが荒くないんか?
気のせい…かな。
「いやぁ、別に構いませんが、今はちょっと……」
あとシリカ、お前何承諾してんだ?
もしかして……?
いやいや。
想像したくない。
と言っても、実を言うとめっちゃ想像したいけど、今はちょっとそんなところじゃないなぁって。
ほら、女の子に囲まれてるし。
あとでな。
「………ってかルシアナさん、なんであんたの胸がそんなにデカいわけ? なんかまじでぼいんぼいんですよ、ぼいんぼいん」
………肌の話から胸の大きさの話に?
ってか未成年がいるからやめてくれぇ〜
アリスは……どうやら周りの話に耳を傾けていなさそうだけど。
本当に、無邪気な子ねぇ。
大人にならないでずっと子供のままでいてよ。
お兄ちゃんの正気の為に、な?
そう、そんなことを心の底から強請っていても、
っていうか、エルフの成長は人間より何倍も早いって聞いたんだ。
幼年時代、後何年が残っているのだろう。
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