北門の守護者との戦い、その後のこと

骨を凍らすほどの寒さを宿る吹雪が生まれた。

暴風とともに吹き荒れ、半径50マイル以内にある全ての物を脱出不可能の氷の塊に閉ざしていた。

幸いなことに、戦いが始まる前に結界を張ったので、ルシアナとアリスは無事だった。


それにしてもこれ、やはり魔力を入れすぎたからか。

中級魔法である【凍える風】はこんな最強な魔法ではなかった気がしたんだが。

このレベルの効果があるってことは、少なくとも高級魔法に匹敵するスペックがあるってことだ。


それに、


「あ、やばいやばい!」


間違いなく、飛べない為にシリカの両翼を凍らそうとしていたが、魔力を入れすぎたせいでどうやら【凍える風】を強化させてしまったみたい。その結果、両翼も含まれて、シリカの全身を凍らせてしまった。


こいつ、まだ生きているでしょ?

人間だったら即死確定なんだけど、シリカは神に次ぐ存在であるドラゴンなのだ。

しかも低位龍じゃなく上位龍だ。

こんな程度の魔法で、死ぬわけないだろ。

解凍させるのが多分時間がかかると思うが、普通、高級火属性魔法である【殲滅の猛火】を使えばすぐ解凍できるかな。

……いや、そりゃあまりにもリスキーすぎる。

こいつの【火耐性】はどれほどのものか知らないし、もしかして、森で出くわしたドラゴンみたいに鱗も骨も、何も残らずに吹き飛ばされるのかもしれない。


まあ、どんな生き物であろうと、息ができないと生きられない。これ、結構時間がかかると思うので、まずは息ができるように氷に風穴を作ろう。


残念なことに、エルフなのに魔法の理論をちょっとだけ知ってるルシアナとちょうど今朝初の魔法を覚えたアリスが今回は、あまり役に立てないと思う。

つまり自分1人で、なんとかしないといかないってわけなのだ。魔法の呪文じゃなく普通、【火属性】を操作できたらいいなぁ。まあでも、そりゃしかたない。


あとで絶対に教える。

そう、心に留めると、シリカを解凍させる為に体内を流れる魔力を引っ張り出して【非属性】を【火属性】に変え、そのまま

両手の甲に集めた魔力を流通させて氷河になったシリカへと突き出す。

解凍方法はきっと沢山はあると思うが、方法はこれしか知らない。一応退屈しのぎに【結界・強】を下ろしてルシアナとアリスと話していたが、それはもう30分前のことだ。

シチューを見張る為にルシアナは家に戻り、お腹が空いたからアリスも家に戻った。


いつの間にか太陽が半分地平線の下に沈み込み、気温も一気に下がっていた。


完全に、夕方になったのだ。



やはり、人間の姿もあったな。


そして、3時間後。シリカを解凍していると、かなりの力を尽くしてしまったからか、ある程度まで解凍させると意識を失ったまま人間の姿になった。


頭から角が二本突き出た少女だった。

見た目で言うと高校を卒業したばかりの大学生ぐらいの年齢だろうか。恐らく18歳ぐらい。

なんかちょっと、年齢は3000+だったからもっと大人びた見た目をしているのかと思っていたが。

まあ、18歳の女の子は大人とされているから、別に問題があるというわけではないのだけれども。

それに、かなりの美人だ。


スタイルも良くて、顔立ちも整っている。


その胸は残念なものだけど。



にしても、かなり遅くなったなぁ。

太陽はもう空にない。

代わりにいくつかの星とともに、月が高く浮かんでいて、淡い光を全世界に放っているのだ。


こっちもかなり魔力を消費したな。元々の魔力量は9000もあるが、今は2000しか残っていない。

9000から2000までかぁ。

やはり減りが激しいなぁ。


戦いで片手で数えられるほどの数の魔法を使っていたんだから問題はそっちじゃない。

その問題はむしろ戦いが終わったその後のことだ。

……とはいえ、確かにはじめて使っていたから【凍える風】の魔力量消費をちょっと見くびっていたんだが。

多分、その計算ミスと相まって、こいつの3時間解凍セッションが俺の魔力量をそこまで激減させただろう。

【魔法】を使うということよりむしろ【属性】そのものを操作することがより一層激しくて難しい、というのが一般的に知られているからその可能性はかなり高い。

どっちにせよ、これからも気をつけないといかない、という事実に変わりはないんだが。

それに、今夜は情報を手に入れるの無理そうだな。

明日まで待つことしか出来ない。


ダルい。


そう、頭の中で言うと、溜息をする。


「…………あ、」


今更気づいたんだけど、こいつは全裸だ。

元々ドラゴンの姿だったから服を着る必要がなかったな。

一応、予備の服もあるんだが、俺が持っている服装はもちろん男のものばかり。

それに、あまり女の子の服装に詳しくはないので、こいつに合う服を召喚できる自信がない。

まあ、こいつはJKの見た目をしてるんで、とりあえず普通の女子高生の制服にするか。

そう決めると、【想像顕現】を使って俺が前世で通っていた高校生の女子制服を召喚した。



…………そう言えば、こいつは寝ているからこれ、俺が着せないといかないのか?

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