訪問者
【???の視点】
ふむ。
ここがアイツのお住いか?
なかなか慎ましい建物みたいだね。
ってか建物はどうでもいいんだ。
しかしあの家にいるのは、あいつだけじゃないみたい。
2人のエルフの気配も感じられる。
人間にエルフの2人か。
まあ、人間とはいえ、アイツは確実に龍の印を持っている。
つまり、アイツが【龍の末裔】ということなのか?
我々【龍族】を救うと言われている、最強の英雄。
確かに感じているアイツの魔力は圧倒的なものだ。
しかしその実力はどうなのか、確かめてみたい。
◇
【楓の視点】
「退屈だ〜」
魔法の練習をしてから数時間後。
居間にて本を読んでいると、隣に座っているアリスがそう呟いた。
ちなみに、ルシアナは台所で夕食を作っている。
めっちゃいい匂いがするなぁ。
いつ出来上がるかわかんないが、待ち遠しい。
「お兄ちゃん、アリス退屈だよ? なんか遊ぼうよ」
そう言われてもな。
まあ、仕方ないか。
魔物についての本に栞を挟み込むと、閉める。
「じゃあ、何がしたい?」
正直に言って、本当に遊ぶ気分ではないが、まあいい。
ちょうどこっちも退屈だったから。
「えっと………じゃあ、隠れん坊しよう!」
隠れん坊か。
確かに久しぶりに隠れん坊をやったなぁ。
でも、
「そりゃできないじゃないか? この家、あまり隠れる場所がないし、外でやるのも森の付近にいるから危ないしな」
そう、俺が言うと、深く溜息をつくアリス。
ガッカリしてそうな顔をしている。
「鬼ごっこ?」
「それもダメだろ? 家の中を走り回れば怪我をしてしまったらどうする?」
「じゃあ、お兄ちゃんなんかおすすめある?」
そうだな。
まあ、【想像顕現】を使えばテレビゲームを除いて、いろんなゲームが召喚できる。
チェスとか将棋とかオセロとかトランプとかな。
でも、10歳の女の子があまり好きそうじゃないヤツばかりだ。
こりゃ困るなぁ。
もし俺が10歳の女の子だったら、退屈しのぎに何をやるか?
そりゃまぁ、友達と遊ぶだろうな。
けど、こんなところに引っ越すことにしてからこいつには友達なんて1人もいない。
幼い俺みたいだな。
今度、街を訪れたら自分と同じ年齢の子供達に紹介しようか?
まあ、俺じゃなくエレン、もしくはロリババアにやって貰う。
ってか、ロリババアの弟子の年齢は幾つだった?
こいつと同い年だと思うが、違うかな。
久しぶりにロリババアに会ったから今度だな。
街に行ったら立ち寄ろうか。
で、友達と遊ぶ以外何をするんだろ?
そりゃ、ゲームをやったり、ラノベや漫画を読んだり、アニメを見たりするでしょ。
マジぼっちやん、俺。
確かにあの頃にも友達いなかったもんだな。
なんか悲しい。
「そうだな。まあ、子供が好きそうなゲームなかなか知らないので、とりあえず街に寄ろうか?」
いろいろ考えた結果、街に寄ることにしたんだ。
こいつは確かに1回だけ行ったことあったんだろうな。
確か依頼の達成をギルドに報告しに行ったときだった。
その後は商業ギルドに行って、土地を買ってさっさと街を出ていたんだな。
「街に? 本当?!?!」
そう、嬉しそうに言うアリス。
目がキラキラしている。
「うん、ちょうど訪れたい人もいるしな」
と、俺がアリスの質問に答える。
「行く! 行こうよ、お兄ちゃん!」
ソファから跳ね上がるアリス。
随分と楽しそうだな。
まあでも、あのときイマゼンに行っていたらあまり探検する暇がなかなかなかったな。
これがあれか?
子供の好奇心なのか?
「わかった。わかったよww」
と、その前に。
「おい、ルシアナ! ちょっとアリスと一緒に街に寄るんだけど、お前も来るか? 」
とりあえず、ルシアナに報告しておこう。
すると、
「今はちょっと忙しいんだけど……今回はパスしてもいいかしら? もしよかったら?」
「そうか? じゃあ、持って帰りたいものとかあるの? 買ってくるからなんか欲しいものあるなら遠慮なく言ってくれ」
そう、俺が提案する。
するとルシアナはすぐ返事してくる。
「あ、じゃあ、砂糖を買ってくれる?買い忘れちゃったみたいだわ」
「砂糖だけ?」
「……あと、チーズと卵と鶏肉お願いします〜」
お前何作ってるんだ?
「うん、了解した」
そう、俺が返事すると、ルシアナが何かを思い出したように付け足す。
「そうだ。あまり食べすぎなよ? 食べすぎたら食欲がなくなり、じゃあ、なんのためにこんなにたくさんの料理を作っていたんだ、っていう気持ちになるのが嫌だからね?」
言葉に潜んでいる脅かしを聞いたのは俺だけみたい。
「わかったよ、お姉ちゃん! アリス、行って参りま~す!」
行って参りま〜すって、本でも見かけたのかな?
と、そんなことを思う俺。
その反面で、アリスは強く俺の手を握りしめて玄関へ引きずろうとしていた。
子供がエネルギーいっぱい、というのが本当みたいだな。
まさか、俺が子供だった頃にこんなに元気だったのか?
そんなわけないだろうな。
「な、ちょっと待って、アリスちゃん。早く街に着きたいでしょ?」
そう、俺がいうと、訝しげな視線をこっちに向けるアリス。
忘れているかな?
「うん! だから行こうよ〜」
と、アリスは再び玄関へ俺を引きずろうとしていた。
「まあまあ、ちょっと落ち着け。ほら、俺には【とある】スキルがあるっていうのをもう忘れている?」
「【とある】スキル?」
ガチで忘れているじゃないんかい。
「いいか。そのままギュッと俺の手を握りしめてよ」
そう言った瞬間だった。
ドンドンとかなり強くドアがノックされた。
あれ?
誰? こんなところに来る人なかなかいないんじゃないか?
しかも、叩き方が乱暴すぎだ。
マジでドアを破壊されそう。
とっとと開けにいこうか。
そう決めると、アリスの手から俺の手を解放させると、玄関に行ってドアを開ける。
「はい、どなたです…………か?」
はぁ?
ものすごく巨大なものが俺の前にいた。
背が高い。
というか、そもそも人間じゃなかったんだ。
水色の鱗に、大きな翼。
それに大きな体。
二本の角も生えている。
間違いない。
俺の目の前には、確実にドラゴンがいるんだ。
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