山賊団の滅亡(3)

─────────────────

目標

◆宿屋で情報を収集する

◆商業ギルドで情報を収集する

◇村長に報告する

◇黒幕と対面する

◇山賊団を殲滅する

クエストクリアの報酬:

・デーマン村の人口の中で評判を高める

・新たな仲間

・50000E

─────────────────


クエスト画面を開き、目標を見る。

次は……村長に報告することか。

それって、今の時点で無理じゃねぇ?

村長に報告した後、黒幕と対面するという目標がある。


証拠がないと信じてくれないだろ。

村長に報告する前にブラッディ・スカルのメンバーの一人を逮捕して詰問するのを最優先にした方がいいと思う。

今夜は村を襲いに来るから夜まで待たなければならぬ。

つまり、夜まで大分時間が余っているってわけだ。

どうする?


前世だったら暇つぶしにゲームをしたり、漫画やラノベを読んだり、アニメを見たりしたんだけど、この世に来た以来毎日が忙しくてなかなか気を楽にする暇ができなくなった。

こういう時に限ってステータス画面を見るんだけど、いまはそんな気分じゃない。


寝て過ごそうか?

やることが無くなったので、まあ別にいいでしょ。

そう決めると、商業ギルドを出てしばらく通りを歩くと、やっと宿についたのだ。

宿に入って肉の匂いが鼻腔に侵入してくる。

続いて可愛らしい鼻歌が耳に入ってくる。


見渡すと、カウンターの後ろに普段閉められている扉が大きく開かれた。この宿の台所だろうな。

そして台所に、肉を焼けているシャアさんの姿があった。


「よう、兄さん。腹減ったかい?」


隣に、おじさんが寄ってくる。


おじさんに振り向く俺。

確か今日朝ごはんしか食っていないだろうな。

腹が減っているっちゃ減っているね。


「まあ、確かにな。もう正午を回っている頃だし、そろそろランチを取ろうかなって思っていたところだ」


「おぉ! じゃあ、いいとこに戻ってきたんだな。今さ、シャアちゃんが飯を作っている。兄さんがくれた肉とイーセンからもらった残りのお米っていうやつだ」


………お米?

今お米って言わなかったっけ?

この世にお米もあるんだ。

ってことは醤油も寿司も味噌汁も納豆も存在しているってわけだよな?

だよな?

なんかちょっとワクワクしてきた。


「なんだ、兄さん? 変な顔をしてるんだけど、大丈夫かい?」


「あ、すまんすまん」


おじさんの声に我に返る俺。


「で、飯はいつ出来上がる?」

「えっと、もうちょっとかな」





【商業ギルドマスター視点】


これはまずいのでは?

ついさっきほどBランクの冒険者を名乗った奴はここに来て受付嬢の一人に質問をしたのだ。

別の部屋に移動したからどんな質問をしたのかはわからない。

しかし恐らく、我がブラッディ・スカル団の情報を聞き出したのだろ。


窓の外を見る。

遠ざかっていくあいつの後ろ姿を見つめながら思わず詰めていた息を吐き捨てる。


5年前この村の商業ギルドマスターになった。

元々は大きな街の商業ギルドの職員だった。それがギルドマスターになれると聞いて受けてみればこんな辺鄙な村にだった。

それでも頑張ってきた5年間。

お金を貯めて、大きな街に戻るためにやってきた。

でも、結局それができなかったのだ。

何故かというと、それは単に、ここで儲けたお金は美味しかったからだ。


残念ながら、村長はまだここにいる。

もし居なかったら俺が新しい村長になっただろ。

簡単に暗殺者を雇い、村長を殺せ、という依頼を出したらな。

でも俺がこの村に来ると同時に村長が死んでいたら明らかに俺が第一の容疑者になるに違いない。

だからしないことにした。


その代わりに、村を守る為という装いで、村人からお金を取って、言ったことを信じてくれる為に少量の食料品を買って配った。でもそれだけではない。


ここに突然現れたドラゴンの2匹を恐れ、住民達の半分は逃げ出した。

村の外にお金を持ち出すわけにはいかない。逃げ出した住民からお金を奪い、村長からもこっそりとお金を吸い上げた。

そしてそのお金を使ってこの村についてきた冒険者を雇い、我が山賊になれ、って命じたのだ。


本当に、お金の為に何でもする愚かな奴らがばっかりだ。

とは言っても、俺はその愚かな奴らの一人なんだ。


そして俺の山賊となったバカ者どもに更なる動機を与える為に、捕まえた男や女になんでもしていい、って言ったんだ。

言うまでもなく、俺の部下としてふさわしい働きっぷりを見せたのだ。


人間って、単純な者だマジで。


しかし、この冒険者の到来とともに終わりの兆しが見えてきた。


数による強さ、という格言がある。

でも俺が集めたEとD、Fランクの冒険者に例え数があるのだとしても勝ち目がないということがわかっている。

俺でもそれほどのバカじゃないし。


しかたない。

村を去る準備をしないといけないのだ。

念の為に。

今まで集めていた財産を確保できるまで恐らく1、2日がかかるだろ。

それに馬車も用意しないとな。

一番近い街からここまでは今から予約したら恐らく2日間がかかる。つまりまとめて3、もしくは4日間ここに滞在して待たなければならないってわけなのだ。


幸いなことに、あいつは俺の山賊団のアジト、その居場所を知らない。

つまり、充分に時間が残っているってわけだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る