山賊団の滅亡(1)
さてと…… これからどうするか。 山賊団の退治に向かう? と言っても、そもそもアジトはどこにあるのか知らないな。 村長さんもたぶん知らないからわざわざ聞く必要がないだろう。
ってことは、黒幕を探し出すしかないな。 でもそれって、口で言うほど簡単じゃない。 まずは手がかりがないんだ。
この村に着いたばかりだから当然のことだ。 それに情報もない。 情報がないと始められないだろうな。 つまりあれだ。
情報を収集しないと。 と、そう思ったその瞬間だった。 目の前に半透明な画面が現れる。
─────────────────
クエスト通知!!!
クエスト:デーマン村に到着した俺は村長との話し合いの後、黒幕がいるということが判明した。黒幕の正体を明らかにせよ。
目標
◇宿屋で情報を収集する
◇商業ギルドで情報を収集する
◇村長に報告する
◇黒幕と対面する
◇山賊団を殲滅する
クエストクリアの報酬: ・デーマン村の人口の中で評判が高まる ・新しい仲間たち ・50000E ─────────────────
あ。そういえばこんな機能もあったじゃん。 あの時以来全然出てこなかったから忘れてた。 なんでだろう? と、そんなことを思いながら画面に書いてある情報を読む。
クエストは俺がさっき言ったこと。 山賊団の殲滅を行う前にまずは黒幕の正体を探し出さなければならないみたいだ。
元々そんなつもりだったからいいんだけど。 しかし、どうやら順番に物事をやらなきゃいけないみたいだ。
やらないとダメなのかな? ゲームだったら順番を気にせず好きなように目標を果たせばいいと俺は個人的に思うけど、順番にやらないといけないときもある。
今回はどっちかな。 まあ、とりあえず順番に従ってやろうか。 念のためにさ。 で、まずはやらないといけないのは、情報収集。
確かアズサスは冒険者がこの村にいないって言ってたろ。 つまりこの村に冒険者ギルドがないってことかな。
【世界地図】を開いてしばらくデーマン村の地図を見ると……うん、冒険者ギルドはないな。商業ギルドはあるけど……この村は貿易で生計を立ててるというアズサスの言葉を考えると、それはそうだな。
商業ギルドって役に立つ情報があるかな? 飢饉の最中で、人があまり商業ギルドに立ち寄らない感じだけど、一応行ってみようか? とまあ、その前に宿に寄ればいいだろう。 宿に寄って、俺の現在の依頼に役立つ情報があるかどうかを確認する。
どちらにせよ、損はしないと俺はそう思っている。 うん、悪くない計画だ。 とりあえず、宿に行ってみよう。
部屋を借りて情報を集めて、それから商業ギルドに行ってプロセスを繰り返す。(部屋を借りるところを除いて) そう決めると、【世界地図】を開いて宿を探す。
探すことは10秒すら経っていなかった。
俺が現在いるところに割と近いから。
◇
地図を頼りに俺はしばらく通りを歩くと、やっと目的地に到着した。 中に入ると箒を手にせっせと床を掃いている女の子がいた。 あ、目が合った。 彼女は俺を見て驚いているからか、口を開いても何も言わなかった。
よく見たら金魚のようにパクパクしていた。 可愛いっていうか何っていうか、やっぱり変な顔をしているな。
とりあえず用件をはっきり言わなきゃ。 会釈して、口を開いた。
「ここは宿ですよね?泊まりたいんですけど、いいですか?」
俺が聞くと、彼女は何も言わずに俺を見つめるばかり。 えっと……大丈夫かな? 壊れてる? そう思った瞬間。
「おい、シャアちゃん。掃除はまだ終わって……ない?あ、お客さんか」
ムキムキの男がカウンターの後ろに現れた。
「お前さん、なんでここに来たんだろ?」
「まあ、一泊や二泊で泊まりたいんですが、いいですか?」
「もちろん、いいよ」
「何名?」
「一人」
「自分一人か?よく山賊に会わずにここまで辿り着いたな」
「そうか?」
これいい機会なのでは?
「うん。まあ、そうだな。あいつらはよく一人旅をしている人を襲うからな。兄さんが会わなかったってことは運がいいみたいだ」
思っていたより野蛮な連中だな。
「この山賊団ってよく村に来るの?」
俺がそう聞くと、ムキムキの男は眉を顰めた。
「なんだ、興味があるかい?」
「山賊団の殲滅を頼まれ冒険者だし、そりゃ興味持つでしょ?」
と、俺の発言を聞いて目を大きく見開いたおじさん。
「え?兄さんは山賊団を排除してくれるの?」
「うん。仕事だし。まあでも、行動する前にちょっとした情報集めをしようかなって思って。このあと商業ギルドにも寄るつもりだから、できればこの山賊団についての情報を教えてくれると助かる」
俺がはっきりと本心を言うと、おじさんは頷いた。
「あ、わかったわかった。で、質問とかがあるか?」
そう問いかけてくるおじさん。 そうだな。じゃあ、
「まずは俺がさっき聞いた質問に答えてくれるのはどう?」
おじさんのところまで歩き、近くの椅子に腰をかけた。 おじさんはカウンターの後ろから出てきて、俺が座っているテーブルに来ると、椅子を引いて向こう側に腰をかけた。
「そうだな。まあ、確かに昔に比べるとその頻度がかなり下がったが…うん、よく来るな。確か1週間ごとに3回か4回ぐらいかな。恐らく盗んだ物がなくなりかけてるときに来ると思う」
まあ、そりゃそうだな。 ありとあらゆる生き物は生き続けるために食料や水など、いろいろな物が必要だ。
「今日は?」
と、俺が聞くと、おじさんは困惑しているような顔をした。
「なんで、そんなこと知りたいの?」
そう問いかけてくる。 おじさんの質問に俺は溜息を押し殺して答えた。
「1週間ごとに3回か4回くらい襲ってくるって言ったよな?あいつらが来る時を前もって知っていたら簡単にアジトまでついていくことができるよ。そんなために聞いたんだ」
俺が説明すると、おじさんはなるほどなるほど、と言わんばかりの顔をした。
「なるほど。まあ、今日は日曜日だ。何時に来るかは知らんが、確実に明日は来る」
都合のいいときに来たな、俺。
「何人がいるか知ってる?」
「それはさすがに物知りの俺でも知らないけどなぁ」
うん、なんとなくそれを知ってた。 黒幕について質問してもたぶん何も知らないよな。 ってことは……、
「はい。じゃあ、これが最後の質問となるんだけど、この村にいる人の中で、村長さん以外最も権力を持っているのは誰だと思う?」
そう、俺が聞いた。
すると、おじさんは難しそうな顔をしながらもしばらく考え込んだあげく、口を開いた。
「村長さんに次ぐ権力者と考えて、やはり商業ギルドのギルドマスターかな。どうして、知りたいの? もしかして、ブラッディ・スカルに関係があるとでも思ってる? そんなバカな」
まさかな……
「情報ありがとうございました。よろしければ、部屋を借りてもいいか?」
「別にいいけど、 情報収集はここで終わりか?」
「うん、まあ、一旦だな」
「あ、わかった。まあ、部屋なら沢山空いているよ。ただ、食事が作れない。食材がなくてさ」
「いや、それはいいよ。食材分けてやるから……と言えど肉のことなんだけど」
「え? いいのか?」
「うん。別にいいよ」
そう言うと、インベントリーを開いてウサギの肉、羊の肉の肉、そしてデカいネズミの肉を1000枚テーブルの上に召喚する。
「これで充分か?」
まとめて肉は3000枚もある。
「いや、充分すぎるだろ! これ全部もらっていい?」
「うん。いいよ、別に。正直に言って小麦粉とか穀物とか、いろいろな材料が欲しかったんだけど、どこにあるのか全然知らなくてさ。悪いけど、肉でしばらく我慢して」
「いやいや! 全然大丈夫だ! シャアちゃん、ほら、見ろぞ? 肉だ!」
片隅で静かに床を掃きながらこっちをチラ見しているシャアという名前の子はおじさんのデカい声に怯えて思わず手にしている箒を手放した。
箒はそれからそのまま床にぶつかって、銃声のような音を発する。
一瞬、誰も動くなくなった。
すると、シャアちゃんは顔を赤にし、怒りで叫んだ。
「急に大声をだすんじゃなぇ、お父さん!」
あ、親子だったか、こいつら。
◇
─────────────────
目標
◆宿屋で情報を収集する
◇商業ギルドで情報を収集する
◇村長に報告する
◇黒幕と対面する
◇山賊団を殲滅する
クエストクリアの報酬:
・デーマン村の人口の中で評判を高める
・新たな仲間
・50000E
─────────────────
そうか。そういう感じで目標達成が表示されるか。
部屋に案内され、出かける前にしばらく休むことにした。
そのとき、クエストはどうなっているのかが気になって、メニュー画面を開いた。
クエストを開くオプションはメニュー画面の2番目のタブにある。
前にメニュー画面を開いた時に全然気づいていなかったけど。
クエスト画面を開いた。
そして表示されたのは前に出た画面だった。
どうやら目標を達成する度に、クエストの前に表示されているダイヤは黒になるようだ。
あのときクエストが出てきたら別に何も大したことは思わなかったが、こう、定期的に出る、もしくは出る頻度が上がるっていうことならばもうちょっとこのクエスト機能について調べないといけないみたいだ。
と言っても、今は依頼中だから別に後にしてもいいだろ。
そういえば、依頼の話になるんだけど、どうしてもおじさんが言ったことを頭から離れない。
「村長さんに次ぐ権力者と考えたら、やはり商業ギルドのギルドマスターかな」
と。
なんの意図で山賊団の後援者になるんだ?
金儲けをする為に?
もっと権力を手に入れる為に?
この村の制覇をする為に?
恐らく上述全ての選択肢が狙いだと俺は個人的に思う。
だったら相当腐っているやつだな、あいつ。
いずれにせよ、ちゃんとした証拠がないと断罪することができないだろ。
まあ、おじさんの情報をうまく採用すれば何とかなるでしょ?
明日、村を襲ってくるやつらを逮捕すれば詰問できるし。
問題は何時に来るかは知らないっていうのことなのだ。
俺だったらみんなが寝ているときに来るんだけど、脳細胞のないあいつらだったら違うかもしれない。
どっちにせよ、あいつらの到来を警戒しなきゃいかん。その事実だけに変わりはないんだ。
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