依頼の達成(前半)

書いて気づいたらもう7000文字数突破しましたので、分けて投稿することにしました。

後半はいつもの時間に

─────


そして6時間ちょっとすぎた頃に、俺達はやっと村に到着した。


はぁ。足痛てぇ。

一応、昼食を食う為に休憩はしたんだけど、食い終わったらすぐまた歩き始めたんだ。

足の裏は今、抗議しているかのようにずきずき疼いている。

回復するには5分は足りないと思うから、別に村長の話を聞かなくても大丈夫だと判断した。

討伐対象であるゴブリンの居場所を聞き、さっさと依頼を終わらせてイマゼンに戻る。

そう、俺とルリーナが決めたんだ。

村の入り口に向かい、門番に話しかけられる。


「タイゼンへようそう。もしかして、冒険者か」


答えたのは、俺じゃなくルリーナのほうだった。

「うん、わたしたちは冒険者です。このあたりに現われたゴブリンを討伐しにきました」


ルリーナと俺を交互に見る門番。


「あんたら、二人だけか? 確か村長様は4人組のパーティーを呼び出したはずだったが………」


そう、戸惑いながらも言う。

そうだな。この依頼、元々ルリーナのパーティーがやるものだったな。


「ちょっと事情があってさ。残りの二人は来られんかった。でも大丈夫。ゴブリンは弱い魔物だから例え100匹が居ても容易くさくさくと倒せる」


俺がそう言うと、納得してなさそうに門番の顔色はビクッと変わらなかった。

まだ不安がその目に映っていたのだ。


「まあ、冒険者さんがそう言ってくれると、たぶん大丈夫かだな。では、僕についてきてください。村長様の家まで案内するから」


そう言うと、踵を返し、門を潜って村に入る。

しばらく大通りを歩いていく俺たち。

すると門兵に連れられ、村の中央にある一軒だけ少し大きな家に案内される。


扉の前に立ち、声を上げる門兵。

「村長様! いるか!」

そう叫んだ瞬間、物音が家から聞こえた。

大丈夫か?


そう思いながら扉が勢いよく開いた。

「なんだ。ロイか」

家から50代ぐらいの男の人が出てくる。


「冒険者が来てくれたんです」

「ああ、来てくれたか」


そう言うと、老人は俺とルリーナを交互に見る。

困惑しそうな表情を浮かべている。


「この二人だけか?」

村長は門兵──名前はロイだっけ──に聞くと、門兵は頷いた。

「だそうです。男冒険者によると、事情があって残りの二人が来られませんでした。でもゴブリンは弱い魔物ですから例え100匹が居ても容易く退治できるって」

「そうなんすか」

門兵みたいに老人の目に不安しか映っていないが、正直に言って、そりゃどうでもよい。

太陽はまだ空に浮かんでいるうちにゴブリンを討伐しに行きたい。


「できればゴブリンを見かけた場所を教えてほしいのですが」


ルリーナは村長の態度をスルーして話を進ませようとする。

時間を浪費しているだけってことがわかったか、村長は頷いて咳払いをすると、話を始める。


「ゴブリンはこちらから行った山に出ます。狩りに行った者が何度も見かけてます」

「ゴブリンの数が100匹と聞いたのですが確認の方は」

「ゴブリンはDランクの魔物ですからDランクの冒険者パーティーを呼んで討伐しに行かれました。残念ながら一人以外全員死亡しましたが、生存者の一人によって100匹が居るって確認しました」

「なるほど、そうですか」

そう、ルリーナが言う。

顔は無表情だからなにを考えているのか全然わかんない。

なるほど。これがベテランの冒険者か。

なんかちょっと、意外っていうか、こんな明るい子でもそんな表情もできるんだって実感したみたいな、不思議な感じだな。

「情報ありがとうございました。では行ってきます。もし、翌日になっても戻らなかった場合はギルドに連絡をお願いします」

「わかりました。よろしくお願いします」


と、そういうやり取りを交わすと、俺とルリーナは村を出て、ゴブリンがいる山に向かう。



「カエデさん、本当に一人で大丈夫なの?」


歩くこと10分。

山に向かいながら【気配察知】を使って敵が周りにいるかどうかを確認している。

もちろん、いるがまだ襲っていない上に、討伐対象であるゴブリンではないから何もしなかった。

そんな、平気に歩いている俺を見たか、ルリーナは突然そのことを聞いた。


「うん、全然大丈夫だ。むしろ、どうやって殺そうかな、それを考えているところだ」

「そんなに気にしてないですね」

そう、苦笑いをしながら言うルリーナ。

そんなルリーナに対して俺は話を続ける。

「当たり前だ。確かにありふれた冒険者には100匹、もしくはそれ以上の魔物の数は恐ろしいかもしれないが……」

「いや、そりゃ普通でしょ。どれだけ弱い魔物とはいえ、その数の魔物が集まったらもうヤバいでしょ」


あ、タメ口だ。

与えた印象はそんなに大きかったか、俺?


「それに、周りを気にしないで歩いているけど、もう少し、周りを気にした方が……」


あ、そっちも気になるか。

まあ、別に教えてもいいな。


「大丈夫よ。【気配察知】というスキルを使っているから。この辺りに魔物は普通にいるが、襲いかかる様子なんてない」


そう、俺は説明すると、ルリーナは大きく目を見開いた。


「えっ、そんなスキルが!」


驚いているね。いやでも、【鑑定】に比べて【気配察知】のほうが1番知られているかと思っていた。

ルリーナがこんなに驚いているってことはそうではなさそうだな。


「なんかちょっと、カエデさんのこと見くびってしまったみたいね。こんなに便利なスキルをたくさん取得しているってことは、恐らくわたしが思っていたよりすごい人のでは?」


ん?こんなにたくさんのスキル?

確かスキルを二つしか見せなかっただろ?


そのままルリーナに聞くと、彼女は言う。

「そうかもしれないね。ギルドでやったのあれはもしかして、スキルじゃなく魔法だったの?」


あれ?

あれって何?

1番記憶に鮮明なのは………あ、もしかして……


「ガシンの大剣を受け止めたとき?」


そして俺の言葉に、ルリーナが頷いた。


「そうそう! 刀を魔力で強化したでしょ? そんなことで受け止めたわけ! だと思うけど、違うかしら?」


洞察力と観察力エグいなぁ、この人。


「まあ、確かにな。普通に魔力を入れずに受け止められたんだけど、念の為にな、ほんの少しの魔力を入れた。あれはスキルじゃなく魔法だよ」

確かに前はスキルかと思っていたが、スキルリストを見ればそんなことではないというのがわかってきたんだ。


「やっぱり! 魔力を使って武器を強化できる。それはもう、普通じゃないことを判明したわ」

「ん? そういうの普通じゃないの?」

俺が聞くと、ルリーナが頷く。

「うん、そんな事ができるのは、剣士の勇者クラス冒険者のみ。身体を強化するとは違って剣の金属にあるミネラルのせいでなかなかできないね。まあ、魔力金属を使って武器が作られたのなら話は別わ。カエデさんのあの刀を見ると、魔力金属で作られた武器だとわかるが、あの刀を手に入れる前に模擬戦で木剣に魔力を流通することができたんでしょ、カエデさんは? ジャクからそんな話を聞いてたらもちろん信じなかったけど、自分の目で見ていたら嘘ではないとやっとわかってきたわ」


そう、熱心に語るルリーナ。

俺、すげぇことができるって言ってんのか、この人?

いやまぁ、それより凄いことができると思うが。


ドラゴンを一発で仕留められることとかな。

まあ、それを知る必要がないけどさ。

いや、別に教えてもいいが………

でも、もし教えていたらかなり大変なことになるだろ?

それに俺をそもそも信じるかどうかも、疑わしいなぁ。

考慮せなばならぬことが多いが、まあ、別にいまの時点で教えなくていいけどな。

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