第27話 新しい仲間と褒賞 (イブ視点)
side イブ・アダムス
気がつけば4人で旅をすることになってしまった。神様は、「そんなにアダムが心配なの〜?」や「カーラって娘は綺麗な子だね〜」などと、私を茶化したり、不安を煽って来たりと、私は翻弄されっぱなしだ。
カーラもアダムに魅了されてるみたいだし、かなりの強敵なのは間違いない。綺麗な銀髪。ぷっくりとした唇に芯の強そうな紺碧の瞳。同じ女性だというのに見惚れてしまいそうになってしまうほどの美人だ。
極め付けは豊満な胸。破損した鎧や破れた衣服の隙間から綺麗な白い肌が覗いており、
(こんなの、ズルい!!)
と少しだけ拗ねてしまった。でも、譲ってあげる気はさらさらない! 私が唯一望む物をそう簡単に諦めたりはしない。
(アダムは誰にも渡さない!)
アダムが困った顔をして「2人旅が良かったのに……」と言ってくれた事や「女神に聞いてみてくれないか?」と頼ってくれたのは本当に嬉しかった。
今まで散々言われてきた「神に聞いてみてくれ!」と言う頼み事があんなに嬉しかったのは、初めてだった。
アダムは1人でなんでも解決してくれる。本当に頼もしいし、カッコ良すぎるけど、自分に何も価値がないように思っていたので、本当に嬉しかった。
少しでもアダムのために出来る事がある自分が誇らしかった。「最後までちゃんとこの旅を続けたい」と言ってくれた時は空も飛べそうなほど舞い上がってしまった……。
確実に距離は近づいている。アクアで幸せな家庭を築くんだ! とこれまでアダムがくれた言葉達を支えに頑張ろと、今一度決意しながら、森の中を進む。
カーラは一度、護衛達を連れ帰りに姿を消した。アダムの事はさておき、瞳の力強さ同様に、芯のある女性のようだし、いい友達になれればと思う。
彼女には彼女の苦悩や憤りがあるみたいだし、救ってあげたい!と思っているのも、確かな感情だ。
3人で森の中を進む。アイラは頭を撫でてあげていると、すぐに眠ってしまった。月白げっぱくの瞳が綺麗なドラゴンの女の子。
アダムの言葉にパニックになり、突き放すような事を口走ってしまったのは本当に申し訳なかったな……と後悔したが、アイラは全く気にしていないようで、屈託のない笑顔を向けてくれる。
(ふふっ。本当に可愛い子……)
と母性本能を刺激されながら、眠っているアイラの黒と茶色の髪をまたひと撫でした。
アイラが深い眠りに着いた事を確認し、森の景色を楽しみながら、先程アダムに言われた「たまには2人で散歩しよう!」という言葉はデートの誘いなのか、どうか、をぼんやりと考えていると、アダムが声をかけて来た。
「イブ?」
「ん? どうしたの?」
優しい声色に少しキュンとしながらも平静を装い、返事をした。声をかけられると、すぐ後ろにアダムがいる事を実感させられ、背中が少し熱を帯びる。
「アイラは寝てるだろ? 褒賞は?」
「えっ!! ぇえっ……?」
アダムの言葉に大声を出してしまい、アイラを起こしてしまう! と焦りながら口を手で塞ぐ。
(褒賞……)
と心の中で呟きながら顔が熱くなるのを感じた。私が思わず口走ってしまいそうになった、『アダム以外の男の人には興味がない!』という言葉を途中で切ってしまったのが、事の発端だったのだが、
(こんなの、『好き』って言ってるようなものじゃん!)
と恥ずかしくて、拒絶されるのが怖くてたまらなくなってしまう。
「イブ?」
すぐ耳元で聞こえたアダムの声に「わぁっ!」と声をあげてしまったが、口を塞いだままだったので、「んっ!」と何だか変な感じの声になってしまう。
アダムの口から漏れる息が耳に辺り、耳から全身に熱が充満して行く感覚に陥ってしまい、
「ア、アダム……耳は……辞めて……」
とアイラを起こさないよう途切れ途切れに伝えた。
「……で? 褒賞は……?」
また耳にアダムの息がかかり、身体がビクッとなってしまう……。きっとアダムは意地悪な顔をしているのだろうと思ったら、何だか悔しくなって来てしまう。
思考がぼやけて来て、
(私ばっかりドキドキさせられてズルい!)
と意味の分からない言いがかりを心の中で叫びながら、アダムもちょっとくらい私でドキドキしてくれればいいのに……と願いを込めて、告白まがいの「褒賞」をアダムに投げかける。
「わ、私は……。ア、アダム以外の男の人って興味ないの……」
沈黙してしまったアダムに、(やってしまった!!)と泣きそうになりながら、顔が見えない状況に恐怖が襲ってくる。
すぐにでも振り向いて、アダムの顔を確認したいのに、確認する事が怖くて、近くなったと思っていた距離が勘違いだったような気がして、恥ずかしさのあまり全身が熱くなってしまう。
何も言わないアダムに決意を決め、振り返ろうとすると、アダムの右腕が私を後ろからしっかりと拘束する。まるで抱きしめられているかのような体制に、もう全身が熱くて仕方がなくなってしまう。
「……ア、アダム……?」
名前を呼んでも、アダムに反応はなく、襲いかかる不安とどうしようもない幸福感に、頭がぼーっとしてくる。
(ど、どうしよう……)
と、もう泣きそうになっていると、私のうなじにアダムの息がかかる。全身がゾクゾクっとして、
「んっ……!!」
と声をあげてしまう。今朝のように全身が火照っていく感覚がまた襲って来て、グッと唇を噛み締めると、
「我はアイラなのだーーー!!」
と眠っていたはずのアイラの叫ぶ声が聞こえる。
「ア、アイラ、お、起きたの……? お、おはよう」
先程の熱が一行に収まらない私はアイラに顔を見られるのが恥ずかしくて、少し手で顔を隠した。
「おはようなのだーー! んー? イブ、顔が赤いのだー!!」
アイラは楽しそうに声を張り上げるが、私はもう恥ずかしすぎて、先程とは違う種類の熱が全身にまわってしまう。
「い、いや、ち、違うよ!! 何か熱くて!!」
自分でも何を言っているのか、わかっていないが、何かを言わないともう何だか色々ヤバい気がして、必死に声を上げた。
アイラはニヤ〜ッとイタズラに笑い、
「マスター? イブの顔が赤いの……だ……?」
と言ったが、アイラの口調がおかしい事に気づき、「ん?」と首を傾げると、
「マスターも顔が赤いのだーー!!」
と満面の笑みのアイラの顔が見えた。
(えっ!? 嘘でしょ!!??)
と心の中で絶叫すると、アイラはアワアワと怯えた表情で、
「き、気のせいだったのだ……」
と月白の瞳を泳がしながら呟いた。私は考えるよりも先にアダムに振り返る。
フードから見える綺麗な赤髪とアダムの頬は同じ色だ。漆黒の瞳を見開いて、少し唇を噛み締めている。
(あぁ……。もうやめて……)
あまりに美しい顔を、少し苦しそうに染めるアダムの色気は凄まじく、もうこれ以上、好きになりようがないと思っているのに、また心を奪われてしまう。
森はそろそろ抜けるようだが、今はアダムから目が離せない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます