第2話


「しっかし、カエルにヤドカリにコウモリとか本当にゲーム序盤の敵だな」

「また私たちの分からない話ですか?」

「まぁな」


 ちなみに、こっちでの魔物の名前は【ポイズンフロッグ】、【パラライズクラブ】、【コンフューズバット】。

 どう見てもゲーム序盤の敵。


「魔物ではありますが、数が多いだけで保有魔力量も強さもだいぶ下ですけどね」

「いや、アリスさん。魔物というだけで我々一般人からすれば死を覚悟するレベルなんですけどね」

「どこの世界に剣で魔物と渡り合う一般人がいるんだよ」


 あぁ、ちなみに今は俺以外が戦闘中です。

 数が多いだけでものすごく弱いので、みんな楽に戦っている。

 俺は避けるだけで攻撃はしていない。


「っつーか、なんで魔物ってこんな風に襲ってくんの?」

「知りませんよ」

「え?」


 アリスの答えに声を上げたのはティリス。

 しかし、やってしまったと言わんばかりに口を押さえて、こちらにチラッと視線を向けてきた。

 なんで助けを求めた。

 なんで野郎なのに仕草が可愛いんだよ。


「私の立場から言わせてもらえれば、魔物はこの世に生きるすべての生物に牙を剥くという認識です。食事を必要とせず、魔力でのみ生き、何故か目に入った生物を襲う害獣」

「なるほどな。魔物って聞くと魔族が操ってそうだが、そういう訳じゃないって事か」

「魔族の事は私も知らないので断定はできませんけど。その通りです」


 この辺もゲームそのまんまだな。

 理由はわかんないけど、主人公たちを襲う存在。

 普通の野生動物なら逃げるところをわざわざ牙を剥いて襲ってくる気の狂った生物。


「今のはあまり信じがたい話ですね」

「そうなん?」


 なぜか重く言い放つマットの言葉を軽く返す。

 すると、マットは剣を振ってカエルを斬った後にアリスへと鋭い視線を向けた。


「魔物は魔族が操っているというのが人間国での定説です。過去には魔物を操って人間国に攻め入ってきたという記録もある。アリスさん、断定できない話であれば、そういったことはあまり話さない方が良い。たとえ清廉な騎士が聞いても逆上されるでしょう」

「……わかりました」


 アリスは目を伏せ、コウモリに一発入れてから了承を示す。

 マットはほぼ気づいているんだろうし、アリスの事を隠し通すのは難しそうだな。

 そんなら俺がやることは決まってる。


「固っ苦しいなぁ」

「この辺の国同士の諍いですから。完全な部外者ともなれば理解は難しいでしょうね」

「そんなもんなんかな」


 マットの棘のある言葉も軽く流す。

 こうやって面倒ごとは軽くあしらう方が良い。


 っつーか、この坑道に入ってから数えるのも面倒臭くなるくらいの戦闘が繰り返された。

 どこから湧いているのかもわかんないけど、これも解決しないとな。

 なんて風に現実逃避もしていた。

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