第3話


「うわぁ!随分と広い場所に出ましたね!」


 辿り着いたのは三つ目くらいの採掘場。

 他の採掘場と同じく道具が投げ捨てられているが、今までとの違いは天井がものすごく高いという事と川が流れている事。

 どうやら自然に開いた空間らしい。


「どっかに繋がってるのかもな」

「鍾乳洞みたいですね」


 ティリスの言葉に頷き、俺はASDを取り出す。


「そろそろ休憩するか」

「「はーい!」」


 子供は元気だなぁ。


「ピーター?」

「アリスは最近、相手の心を読む技能でも習得したのか?」

「子供を慈しむような目で私を見ているからです」

「なるほど、それは仕方がないな」

「何が仕方が無いんですか!」


 《野営領域展開(キャンピング・フィールド)》を発動し、ついでにいろんな道具類を取り出す。


「ついでに食事にしますか?」

「そうだな。って、今回の当番俺か」


 この人数で役割を回していると当番は早く回ってくる。

 けど、最近はアリスとティリスに奪われがちだったため、飯を作るのは久しぶりだ。


「ピーターの料理ですか!?」

「なんでそんな嬉しそうなのさ」


 アリスが珍しくテンションを上げている。

 というか、そんな俺の料理に興味示してたの?


「ピーターの料理って見たことないのばっかりで面白いんですよね」

「あと、美味しいですよね。凝ったものが多いと言いますか」

「へぇ、そうなんですか?ピーター殿の料理は初めてなので、それは楽しみですね」

「そう持ち上げられても美味い飯しか出てこないぞ」


 ちょっと照れを隠しつつ、飯の準備をする。

 つっても、一人暮らしでやってた程度のモンだしな。

 周りにウケが良いってのは嬉しいってこと以上に安心した。


 マットとティリスが椅子と机を準備する中、当番に当てはまらないアリスが俺に近寄ってきた。


「ピーターは料理も誰かに教わっていたんですか?」

「うんにゃ、料理は暇な時に手を出してたくらいだな。あの頃はやること無くて、いろんな事に手を出してたからな」


 今思えば、料理もやっといてよかったな。

 こういう事を想定していたわけじゃないけど、役立ったわけだし。

 そう考えてるとアリスがちょっと悲しそうな目になる。

 そして、ちょっと不満そうにつぶやく。


「ピーターって割と自分のこと話さないですよね」

「そうかぁ?常にフルオープンを目指しているんだがな」

「そうですよ。まぁ、私が言える事じゃないですし、全部を話して欲しいわけじゃないですけど」

「どないせいっちゅーねん」


 なぜかアリスは首を傾げる。


「どうしろって言うんだ」

「あぁ!」


 最近わかってきたことは、ちょっとした方言でも伝わらない時がある。

 この会話が成り立っている原因も思っているような事じゃないのかもしれない。

 俺としては単純に神様の都合って事にしといて欲しい。

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