第8話

「次からは気を付けるよ」


 二人をギュッと抱きしめて誤魔化しつつ、俺は謝る。


「悪かったな。不安にさせて」


 正直、俺の性分はもう治らないと思っている。

 自己犠牲なんて綺麗事はできない。

 だけど、自分のモノが失われる事への抵抗感は薄い。

 そのくせ、誰かのモノが他人に奪われる事は嫌いとか言う自分勝手さ。


 最初からそうだったのかもしれないし、あの時にそうなったのかもしれない。

 何が原因かを突き止める術はない。


 そんな風に考えていると、アリスが俺の背に腕を回してギュッと抱きしめ返して来た。


「絶対に無茶したらダメですよ」


 続いてティリスも同じように俺を抱きしめ返す。


「力不足はわかってます。だけど、お願いですからボクたちにも心配くらいさせてください」


 おいお前たち。

 それは一体、俺に何をどうしろと言うんだ?

 とりあえず分かったのは、この二人は誰かが目の前で死ぬのは嫌らしいってことくらいか。


「りょ~かい、りょ~かい。それくらいは約束するよ」

「「絶対ですよ」」


 俺は二人の体を少し押して、俺から離す。

 そして、二人それぞれに手を差しだし、小指を上げた。


「これは?」

「お前らの聞き手で小指を上げろ。んで、こうやって絡める」


 アリスとティリスの小指を結んで、二人の顔を見つめる。


「ゆ~びき~りげ~んま~ん、う~そつ~いた~ら、は~りせ~んぼ~んの~ます。ゆ~びき~った!」


 意味が分からずキョトンとする二人に俺は説明を加える。


「俺の故郷にあった約束の歌だよ。もうお前らを残して無茶なんてしないって約束だ」


 二人が本当にうれしそうに頬を緩ませる。


 あぁ……。

 やっぱりなんか……。

 子供は笑顔に限るよな。

 泣き顔もあんまり見たくないし、泣き声も極力聞きたくないよ。

 嬉しそうに頬を緩ませる二人を再度抱きしめ、俺は二人に見えないように軽く笑った。

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