ピンチを乗り越えろ
第1話
殺し屋兄弟との戦闘後、俺たちがすぐに行ったのは互いの力量を知る事だった。
自己申告ではあるものの、その辺は互いを信用して自分の力がどの程度なのかを開示。
その上で一番知識のあった俺が二人に戦い方を教える流れとなった。
目的地は変わらずにアダマイト鉱山。
二日経つが、今のところ殺し屋兄弟からの追撃はない。
ちなみに、馬はあの戦闘のどさくさでどこぞへと逃げてしまった。
「アリス、《身体強化(パワード)》の魔力配分をもっと意識しろ!極端に足に集めると、高速移動でのGに体が耐えられないぞ」
「はい!」
「ティリス、《風刃射出魔術(ウィンドカッター)》の本体形状がまだ大きい!先端の刃部分の魔力配分がまだ少ない!推進力はもっと細く出すように意識しろ!」
「はい!」
スポコンみたいな修行風景。
こんな風に朝イチと昼前、夕方を二人の修行に当て、残りで移動をしている。
それでも急に襲われたら困るので、体力・魔力の消費は抑えなきゃいけないから時間は短め。
「アリスの課題は魔力操作の向上だな。高速移動は体への負担がでかいから、足に魔力を集めて移動と同時に魔力の配分を戻してって作業をやんないと」
「そ、想像以上に難しいです」
「んで、ティリスの方はイメージ力の向上。魔具や魔術陣で使ってた頃の感覚が残ってるから、それを基礎に自分のイメージ力で術の形を自在に変える。《強化》系に比べれば魔力操作は楽だから、どういう術にしたいのかを頭ン中に浮かべるんだ」
「イメージしているつもりなんですけど……」
割と二人は苦戦中。
そんな中、アリスは困り顔で尋ねてくる。
「ピーターは昔からこういう特訓をしてきたんですか?」
「まぁな」
「ピーターさんのお師匠さんってどなたなんですか?もしかして有名な将軍とか?」
ティリスの言葉に俺は言葉が詰まる。
「基礎は小学校の時の遠藤先生かなぁ」
マンガのバスケ部顧問みたいなおデブな教師だった遠藤先生。
テレビ出演の時に俺の恥ずかしい過去を色々と明かしてくれた遠藤先生。
イラァッ……。
「え、どういう心境の表情なんですか?」
「思い出し怒り」
「あの……どういう先生だったんですか?」
「普通の先生だよ。特段、説明を加えるような人じゃない」
「でも……、ピーターはその人に魔術を学んだんですよね?」
「まぁな」
「ボクらが今学んでいるような事を教わったんですよね?」
「うんにゃ」
突然の否定に二人は首を傾げる。
「え、じゃあ魔力操作とかイメージの話とかは誰に教わったんですか?」
うん?
質問の意味が分からず、今度は俺が首を傾げる。
「いや、《身体強化(パワード)》の魔力操作も攻撃魔術のイメージによる改変も普通やるもんだろ?」
二人の表情が固まる。
と、そこで俺も昔を思い出しす。
「そういえば、昔もそうやって不思議そうに首傾げてた奴いたなぁ」
プロの戦い観てればわかるだろうに……。
「まぁ、偉そうに言ってるけど俺も先輩のやってる事を見て学んだだけだからな。あんまり自慢にはならないよ」
とは言っても、明確に魔力操作だなんて技術が流行り出したのは俺よりも少し上の世代の人とかからだ。
っつーか、そのせいで俺も大変な思いをした。
考案者と広めた奴らを引っ叩きたいと思ったくらい。
「んっと……ピーターさん」
「どうした?」
「まさかとは思うんですけど一応聞いておきますね。ピーターは他人の魔力の動きを見たんですか?」
「え?あ、うん」
え?なんで二人とも口の端がヒクついているの?
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