第8話
しかし、まぁ……正直な話、課題は山積みだ。
もういっそのこと、ターン制かつ仲間のHPが0になっても戦闘終了後に宿屋とかで生き返らせられる仕様を追加して欲しい。
少なくともターン制が導入されれば、どうにかなる気がする。
「次にあの兄弟が来た時」
くだらない事を考えて、思考放棄をしているとアリスが深刻そうな声で話し始めた。
「確実に足を引っ張るのは私です」
なんか言い始めた。
キリッとした顔つきで、ものすごいネガティブなこと言いだした。
「そ、そんな事ありません!」
ティリスがアリスの言い分に大声で否定を入れる。
そうだ!言ってやれティリス!
「アリスさんはその武器で応戦できるじゃないですか!それに比べて、ボクは逃げるくらいしかできませんし」
「そんなことないですよ!ティリスは相手の攻撃を避けることが出来て、至近距離で魔術を当てることが出来ます!私は近づくことさえできず、しかも遅いから遠くにいても逃げきれません。狙われているのが私だというのに……」
なんか……間に入れないくらい二人が自分の言葉に落ち込んでいる。
んな、劣等感抱くようなことないだろうに……。
「気にすんなって。アリスは今自分で言った通りに遠くから魔導銃での援護。ティリスは中距離で魔術による攻撃と、何かあった時にアリスを抱きかかえて逃げればいい」
「そのくらいしか」
「できないんですよね」
なんで落ち込むのさ。
そのくらいでも出来る事あんだから良いだろうに。
「しょうがないだろう?それぞれの持ち味を生かす役割配分だ。それ以上の働きをしたいんだったら、これから練習して学んでいくしかない」
っつーか、なんで俺が励ましてんだろ。
明確な対処法が浮かばないのは俺も同じなのに……。
万能だなんて言いきった自分が恥ずかしいくらいだ。
「ピーター!」
「ピーターさん!」
「どうしたんだ二人とも!?」
なぜかアリスとティリスが俺に近づき、顔をグイっと近づけてくる。
ティリスの性別勘違いしている奴が観たら、二人の女子に言い寄られているようにも見えそう。
しかし、二人の口から出てきたのは甘酸っぱくない現実味のある言葉。
「ピーターの使う瞬間移動を教えてください!」
「ボクはあの《風刃射出魔法(ウィンドカッター)》を教えてください!あんな風に威力を強めたいです!」
真剣に頼み込んでくる若者の言葉を無下にできるほど俺の心は強くない。
諦めを込めた溜息を軽く吐いてから、俺は顔を見られないようにギュッと二人を抱き寄せる。
「わかったわかった。正直な話、教えるのは下手だからわかりにくくても勘弁してくれよ。理解できるまで諦めずに何度も聞いてくれ」
そして、頼りにしてくれる二人の期待に応えられるように、自分の自信の無さにフタをするように、かつて選手だった頃の自分を思い出す。
「アイツら、次は潰すぞ」
僅かに空気がピリッとした気がすると同時に、両側の耳から二人が息を呑む音が聞こえてきた。
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