第4話


「いわゆるスポーツだよ。Battle Links Territoryっていう領域内で行う戦闘スポーツ」

「え、人間界でそんなスポーツが流行ってるんですか?」

「まぁな」


 信じてないだろうから、適当に話す。


「まさか適当な話じゃないですよね?」

「はっはっはっ!」

「否定してください!」


 馬鹿な事をやっている間に、俺の競技用戦闘服が形成される。

 装備数に上限があるので、装備を一個一個装着するのはBLT競技あるある。

 トッププレイヤーでも時々、装備数上限越えてしまい、試合開始前に注意を受けたりペナルティを受けたりするくらいだ。


「あれ……女性用?」


 アリスが俺の姿を見ての第一声がそれだった。


「違う!」

「でも、スカート」

「腰巻!決してスカートじゃない」

「胸当てもちょっとふっくらしてますし」

「そういうデザインなだけだ」

「色合いもちょっと華やかですよね」

「トップスの青はいいだろう。ランドセルの時代から青と黒は男の色だ」


 今はいろんな色あるらしいけどな。


「でも、ちょっとカッコいいです」


 はにかみながら言いおったよこの娘。

 娘に褒められるときの父親ってこういう気持ちなのか?


「なんか失礼な事考えてませんか?」

「いや、失礼な事は一切考えてない」


 俺は腰のホルダーに相棒を差し、構える。


「アリス。今だけは近づくなよ」

「は、はい」


 アリスはそれまでのチャラけた雰囲気を飲み込み、俺の構えた姿を見つめる。


「フッ……!」


 鞘が無いので、厳密には抜刀術ではない。

 それでもホルダーから刃が外れ、綺麗な線を描くその姿を指して、”抜刀術”と報道されていた。

 鎧アリの状態で刀を振るうのは競技を辞めて以来だから4年のブランクがある。

 正直、ヒヤヒヤしていた割には刀の動きに違和感を感じなかった。

 嬉しい誤算だ。


「うっし。これで問題ないだろ」


 刀を再度、ホルダーへと差してアリスに向かう。

 すると、アリスは何やら目をキラキラと輝かせていた。


「どしたん?」

「え?あ、いえいえいえ!なんでもありません!」


 何でもないとは思えないけど、なんか嬉しそう?


「それじゃあ、森を出るために移動を開始だ!」

「はい!」


 アリスの元気な返事を聞いてASDを操作し、《野鳥斥候(スカウターバード)》を発動。

 そのまま元気に左腕を上げて、声を出す。


「しゅぱーつ!おしんこ~!」


 このネタ分かる訳じゃないから、アリスからの反応は一切なかった。

 異世界ってちょっと寂しいな。

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