第5話
森の中、上下灰色スウェット姿の美少女と、半袖Tシャツジーパン姿の俺が向かい合って座っている。
どう見ても浮いてるな。
彼女に渡したスウェットはやはりブカブカで、腰と足首で固定されたパンツの部分が重力で垂れさがって面白い感じになっていた。
「着替えまで頂けるなんて……。本当にありがとうございます」
「あぁ、いいよいいよ。ほとんど気まぐれみたいなもんだし」
「その……助けて頂いた上に不躾なお願いで恐縮ではありますが」
「なんだ?」
「此度の件に対する金銭などの謝礼は待っていただけないでしょうか」
ふむ、そういうのをそっちから切り出すんだ。
ほんの少し意地の悪い性格が顔を出し、俺は手をイヤらしく動かしながら彼女の方に向ける。
「金銭を待たずとも払えるものはあるはずだ」
「はぅ!?」
顔を真っ赤にしながら、仰け反る美少女。
キチンと体を腕でガードしているところが高評価に繋がっている。
「そ……それは体で支払えと?」
「話が早くて助かる」
わなわなと羞恥に震え、唇を噛み、顔を歪める。
しばらくそんな姿を見て癒されていたのだが、彼女はこちらが話を変える前に自分の意思と内在する価値観に沿い、覚悟を決めた。
どこか吹っ切れた様に、それでも羞恥は残ったまま、彼女は口を開く。
「わかりました。で、ですが……仮にそういうことを致すのでしたら場所を変えてください!初めてをこんな場所で行うのは抵抗があります」
「却下だ」
「うぅ……」
んー……、思ってた以上に楽しいな。
小さい子供をイジメるのは抵抗感あったけど、美少女となるとなんかゾクゾクくるものがある。
そんな小学生男子みたいな感想を抱いてから、俺は本題に戻す。
「ここってどこか知ってる?」
「あ、え……っと。申し訳ございません。ミノタウロスから逃げるのに夢中で存じ上げていません」
「そっか。この森は悪魔の森って言うんだ」
「悪魔の森……でしたか」
彼女は俺の言葉を復唱し、辺りを見渡して妙に納得した感じで俺の方に視線を戻す。
「んで、人間の国で日本って名前を聞いたことある?」
「申し訳ございません。人間界の細事には疎くて……記憶にございません」
「そっかー」
「一応、中規模国家であればある程度は記憶していると自負しているのですが、小国であるとかなり多いため覚えきれず……」
「んー……、いやまぁいいや」
よぅ知らんけど、これってラノベでよくある異世界転移って奴か?
えぇ?28歳のおっさんが異世界転移して、美少女と出会っても意味無いだろ。
年齢差あり過ぎて“可愛いなぁ”でおしまいだよ。
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