第4話


「あ、起きた?」

「え?え?」


 寝起きから元気だなぁ。

 起きてすぐに叫んだ美少女は恐怖におびえ、困惑した表情で俺を見上げている。

 んー……美少女だから許せるが、あんま好きな表情じゃない。


「体に痛みはあるか?」

「体……、あれ?」


 体をさわさわと触る美少女。

 しかし、腹に開いていたはずのどドデカイ穴は影も形もなく、他の細かな擦り傷切り傷も綺麗になくなっていた。

 まぁ、そのせいで服がボロボロになっていたため、彼女の体を僅かに隠していた布切れは容易く地面に落ちる。


「…………ッッッ!キャァァァ!!!!!」


 体を隠して羞恥の叫び。

 耳にキィンとくるけど、まぁ想定内だったので対策済み。

 耳の中から耳栓を取り外し、俺は彼女に近づいてしゃがみ込む。


「落ち着くのです美少女よ。記憶はちゃんとありますか?」

「き、記憶?」

「貴女は牛のお化けに襲われていたのです」

「牛の……ッ!ミノタウロスは……?」

「そこにいるでしょうに」


 俺が指さした先には先ほど彼女の目の前に置いたミノタウロスの首。

 それを見て彼女は少しだけ落ち着きを取り戻す。


「も、もしかして……貴方が助けてくださった……のですか?」

「イエス」


 頷きながら肯定すると、彼女は律義に座り直し、頭を両手を地面に付ける。

 どこからどう見ても土下座だ。


「あ、ありがとうございます。どこの部族の方かは存じませんが、貴方は命の恩人です」

「気にしない気にしない。それより」

「はい?わぷっ」


 顔を上げたタイミングで俺が投げたスウェットが彼女に命中。

 それを手で持ち上げ、彼女は首を傾げた。


「これは?」

「当面の着るもの。サイズフリーだけど、おそらくはブカブカになるだろうから、この紐で要所要所縛って留めて」

「あ、はい」


 呆気にとられつつ、彼女は俺に言われた通りに着替え始めた。

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