第11話 ヤバい展開になった~隆太視点~

少し強引ではあったものの、渚を無事手に入れる事が出来た。嬉しくて、つい渚にベタベタくっ付いてしまう。そんな俺を最初は嫌がっていたが、最近では随分慣れた様で、人前で抱き着いても頬ずりしても怒らなくなった。



もちろん、付き合ったその日に渚の全てを手に入れ、両親にも紹介した。家の両親も渚の事を気に入ってくれた。特に母さんは渚を自分の娘の様に思っている様で、最近はよく2人でお菓子を作っている。


「渚ちゃんはとってもいい子ね。早く本当の娘になって欲しいわ」


それが最近の母さんの口癖だ。




もちろん、学校でも俺たちカップルは全校生徒公認だ。あれだけ大勢の前で告白したのだから、自然な流れと言えば自然な流れだ。少しずつ外堀を固めていく事に、成功している。



さらに、渚は基本的に素直だ。どこかに出掛ける時は、どこで誰と何をするかきちんと報告しろと伝えれば、律儀に報告をしてくる。それに付き合ってからは、俺を優先してくれる様になったし、とにかくよく笑いかけてくれる様になった。渚の笑顔は本当に可愛い。


付き合う前から大好きだったが、付き合ってからはあの時とは比べ物にならない程、渚を愛している。高校を卒業したら、すぐに結婚しよう。既に両親にはその事を話してあるし、きっと渚のご両親も賛成してくれるだろう。


そう、全てが順風満帆だと思っていた。

そんな俺を、一気に不安へと突き落とす出来事が起きてしまったのだ。


それは夏休みが目前に迫ったある日。

臨海学校に着ていく水着を買いに行くという名目の、トリプルデートをした時の事だ。先に水着を買い終えた俺と渚は、他のカップルの買い物が終わるまで、カフェでお茶をしようという事になった。


その時だった。

中学の時に渚が好きだった男が、俺たちの目の前に現れたのだ!


動揺する渚に、話したいことがあると渚に近づく有馬という男。もちろん、近づかせる訳にはいかない。


すかさず渚の腰を引き寄せ、男を睨みつけた。そもそも渚が好きだった男に会ってしまった時点でイライラしているのに、俺の渚を呼び捨てにするなんて!そう思ったら、体中から怒りが込み上げてくる。


そんな俺に自らくっ付いて来る渚。やっぱり渚は可愛い!そうだ、今は俺の彼女なんだ。


どうやらこの男、俺が渚を無理やり手に入れた事を知っていやがった。まあ、知られていても別にどうでもいいが。


さて、この男をどうやって追い払おうか!とにかく、これ以上渚の瞳にこいつを映したくないし、こいつの瞳にも渚を映したくない。


そう思った時だった。


「有馬俊!渚から離れなさい!!」



鬼の形相でこちらに向かって来たのは、渚の親友のマリちゃんとサラちゃんだ。この2人と渚は幼馴染の様で、もちろんこの男の事も知っている。


2人が有無も言わさず男から引き離してくれたため、これ以上何か言って来る事はなかった。


その後は皆でファミレスに行ったのだが、明らかに動揺している渚。もしかしたら、まだあの男に未練があるのか?



幸い、マリちゃんもサラちゃんもあの男を毛嫌いしている為、今後あの男が渚に近づかない様に協力してくれるとの事。



もちろん、俺もあの男がこれ以上渚に接触して来ない様、徹底的に渚を見守ろう。



話し合いの後は、6人で遊んだ。有難いことに、2人の彼氏でもある航と大とも仲良くなった。また6人で遊ぼうと約束して、この日は解散となった。



2人で渚の家に向かっていると、急に渚が俺に礼を言って来た。どうやら、あの男の事で礼を言った様だ。



もしかしたら、あの男が渚の家で待ち伏せしているかもしれない。そう思ったら、つい渚を自分の方に引き寄せた。「とにかく俺から離れない様に」そう伝えると、にっこり笑って「はい」と答えてくれた渚。


その笑顔が物凄く可愛い。この子をあの男に取られたくない!そう思ったら、つい渚の唇に自分の唇を押し当てていた。


渚に抗議されたが、素直にあの男に取られるのではないかと、不安な気持ちを抱えていると伝えた。


すると


「隆太君には話していなかったけれど、私あの人に振られているの。それも、ラブレターを晒されると言う最低な方法でね。だから、たとえ地球がひっくり返っても、私とあの人が付き合う事は無いから安心して」


そう言ってにっこり笑う渚。

そんな渚を、おもいっきり抱きしめた。もし、渚が本当の事を知ったらどうするだろう。


渚のラブレターを晒したのは、あの男ではない!俺が雇った探偵の息子だ。もし、あの男がラブレターを晒したのは自分ではないと渚に伝えたら、渚は俺の元を離れて行くかもしれない。



そもそも渚は、あの男の事が好きだった。もし俺を捨ててあの男の元へ行ってしまったら、きっと俺はもう生きていけないだろう。こんなにも渚を愛してしまったのだから…



きっと無理やり俺の側に置いたとしても、もう今までの様に俺に笑いかけてくれないかもしれない。渚の笑顔を知ってしまった今の俺が、そんな状況に耐えられるのだろうか…


とにかく、あの男を渚に近づかせない様にしよう。絶対に!今まで以上に渚の側に居て、ずっと監視しよう。


渚、絶対君は誰にも渡さないからね

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る