第9話 トリプルデートをする事になりました

「やっと期末テスト終わった!」



ニコニコ顔でそう叫ぶのは、親友のマリだ。



「ねえ、来週には臨海学校があるでしょ。今日早速水着を買いに行こうよ」



「おっ!いいねぇ。行こう!渚も行くでしょう?たまにはいいじゃん!別に隆太君も付いて来ていいからさ」



「ありがとう、それじゃあ、行こうかな」



隆太君に公開告白されてから、早1ヶ月。私たちは既に学校中の生徒公認のカップルになってしまった。



最初は恥ずかしくて死にそうだったが、人間慣れと言う物は恐ろしい。すっかり慣れてしまい、隆太君が人前で私にくっ付こうが頬ずりしようがキスしようが、動じなくなった。



それに、私の事をとても大切にしてくれる隆太君。ウザいと思う事も多々あるけれど、なんだか情が湧いてきたと言うか…



何だかんだで、隆太君との恋愛を楽しんでいる。



そうだ、隆太君にLINEしておかないと。いつも私にべったりの隆太君。用事が出来た時は、誰とどこで何をするのか事前に報告するのがルールだ。まあ報告したからと言って、“はいそうですか”と言うような人ではない。



もちろん、陰からこっそりついて来るのだ。そもそもずっと監視しているのなら、首についているGPS付きのチョーカー要らないよね。



LINEを送り終えたところで、先生が入ってきた。ホームルームの後は、早速お買い物だ!そうだ、LINEの返信を見ないと。ポケットからスマホを取り出し確認したが、あれ?既読にはなっているが、返事がない。



まあ、OKという事だろう。



「渚、行くよ」



「うん、今行く」



マリとサラに呼ばれ、急いで教室を出ようとした時、隆太君が教室に入ってきた。



「渚、水着を買いに行くってどういう事?」



あれ?怒っている?



「LINEにも書いた通り、臨海学校で着る為の水着を買いに行くんだけれど、何かまずかった?」



「まずかったじゃないだろう!水着なんてあんな下着の様な姿、他の男の前で晒すつもりかい?」



この人は何を言っているのだろう。そもそも臨海学校は水着を着るのがルールだ。着ない訳には行かない。



「臨海学校では水着を着なきゃダメなんだから、買わないと着る物がないわ」



私の言葉にしばらく考えこんだ隆太君。



「わかったよ、でも渚だけに選ばせるのは心配だ。俺も付いて行くよ」



うん、知ってる!いつもこっそりと付いて来るじゃん。そう言いたいが、面倒なのでそっとしておいた。



こうしていつも通り、私達女3人の後ろを隆太君が付いて来ると言うスタイルで買い物スタート、と思ったのだが…



校門を出ると、なぜかマリとサラの彼氏登場。



「私たちも、水着は一応彼氏の許可を取ってから買おうと思ってね。呼んだんだ。今日は皆でデートしよう」



嬉しそうにそう話すマリとサラ。ゴリラ顔の男性にすり寄るマリ、筋肉マッチョに抱き着くサラ。



「渚も俺に抱き着いていいんだよ」



後ろから抱きしめながら呟く隆太君。既にあなたに抱きしめられているので、抱き着くことは不可能です。



ちなみにマリの彼氏がわたるくん。サラの彼氏がだい君だ。



隆太君と2人の彼氏は初対面なので軽く挨拶をかわし、まずはファーストフード店で腹ごしらえだ。



「渚、あ~んして」



嬉しそうにポテトを私の口に放り込む隆太君。それを見て、固まるマリとサラの彼氏たち。




「マリから話は聞いていたけれど、本当にラブラブなんだね」



「もちろんだよ。これでもセーブしているつもりなんだけれどな。ね、渚」



にっこり笑う隆太君。セーブねぇ…



その後も若干引かれつつ、何とか食事を終えた。次はいよいよ水着選びだ。



「やっぱ水着と言えば、あそこだよね」



「うん、あの店が一番種類も多いし、可愛い物がいっぱい売っているよね」



「よし、早速行こう」



満場一致で決まった場所は、ショッピングモールの中にあるお店だ。早速向かう事にした。お店に着くとやはり人気な様で、沢山の人が見に来ていた。



「うわぁ~、めちゃくちゃ沢山あるよ!サラ、渚、行こ!」



完全に男性陣の存在を忘れたマリが、私たちの手を引いて中に入っていく。



「ねえ、このビキニめちゃくちゃ可愛い!」



「こっちのワンピース型も可愛いよ」



「見てこれ、めちゃくちゃセクシーなんだけれど」



「「ヤダ~~」」



3人でめちゃくちゃ盛り上がる。



「渚はそんな露出の多い水着はダメだよ。こっちのがいいよ!」



隆太君が持ってきたのは、ラッシュガードに水着用レギンス付きの物だ。確かにこれなら肌は大分隠せるけれど…



「ヤダ、隆太君。さすがに臨海学校でこれはダメでしょう。渚が先生に怒られちゃうよ」



隣で見ていたサラが笑いながら言った。



「だからって、こんな下着の様な水着なんて、絶対着せないからね!」



「う~ん、それじゃあ、とりあえず水着を買って、念のためにラッシュガードも持って行けば?それならいいんじゃない?」



マリの提案に渋々納得する隆太君。その後はそれぞれカップルに分かれて、水着を選ぶ事にした。



「渚、ビキニなんてダメだよ。そうだ、ワンピース型の物がいいね。これなんかどうだい?」



隆太君が持ってきたワンピース型の水着は、水色のシンプルなタイプの物だ。基本的に私はシンプルなものが好き。うん、悪くない!



「じゃあ、これにしようかな」



もっと揉めるかと思ったが、意外とあっさり決まった。マリとサラの方はと言うと、どうやら吟味中の様だ。



「マリ、サラ、私決まったから先買って行くね。いつもの場所でカフェオレ飲んで待っているから」



「「OK」」



これで伝わる私達って凄いわね。会計を済ませ、隆太君と2人でいつものカフェに向かう。



その時だった。



「渚!」



急に名前を呼ばれて振り返ると、そこには私のラブレターを晒した男、有馬俊ありましゅんが立っていたのだった。

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