第8話 ストーカー男の部屋に連れて行かれました

「俺の可愛い渚。一緒に帰ろう!」



ニコニコ顔でやって来たのは、今日無理やり?彼氏になった隆太君です。友人のマリとサラは「また明日ね~」なんて言って帰ってしまった。



薄情者どもめ…



「ねえ、隆太君。このチョーカー外してくれないかな?なんだか首が絞められているみたいで、気持ち悪いの」



本当に彼に囚われている様な気がして嫌なのだ。



「う~ん、それは無理だよ。これを外したら、渚がどこに居るか分からなくなっちゃうからね」



やっぱりGPS機能搭載かよ!

何となく分かっていたけれど、嫌すぎる。




「隆太君、やっぱりこれ、首輪みたいでイヤだわ。ネックレス型やブローチ型が良いんだけれど」



どうせGPSを付けられるなら、そっちの方が自然だ。



「それは無理だよ。だってネックレスやブローチなら、取り外しちゃうでしょう。このチョーカーはね。俺しか取り外せないんだよ。そうだね、後は渚の首をちょん切れが取り外せるかな」



どさくさに紛れて、なんて恐ろしい事を言うのよ。あり得ないわ。



「さあ、渚!着いたよ」



あれ?ここはどこ?いつの間にか、隆太君に誘導されて来てしまったわ。



「ここは俺の家だよ。さあ、入って」



なぜか隆太君に誘導され、恐る恐る家の中に入る。



「お邪魔します」



とりあえず、人様の家に上がるんだ。礼儀として一言掛けた。



すると


「あら、隆太。おかえり。まあ、あなたがいつも隆太が話をしている渚ちゃんね。こんにちは、隆太の母です」



これまた超絶美人が出て来た。それもなぜか、めちゃくちゃ嬉しそうな顔をしている。



「初めまして。足立渚と申します」



「ご丁寧にありがとう。隆太からあなたの事は色々と聞いているわ。私の事も本当の母親だと思って接してね。どうぞ、上がって」



隆太君のお母さんに促されるまま、上がってしまった。



「母さん、俺たち付き合い始めたばかりなんだ。邪魔しないでね」



そう言うと、隆太君に腰を回され、2階へと案内された。



「ここが俺の部屋だよ」



ニコニコ顔の隆太君に案内されて、部屋の中に入った。



何なの、この部屋は…



部屋中、私の写真が貼られている。それも、いつ撮ったのよ!というものまで、含まれているではないか!



「何なのよこの部屋は」



慌てて部屋に貼られている写真を剥がそうとしたのだが



「渚、ダメだよ。剥がしたら」



そう言うと私を強く抱きしめて、動きを封じられてしまった。いくら何でも、こんな恥ずかしい部屋、耐えられない。



その時


コンコン


「隆太、渚ちゃん。お菓子とジュース持ってきたわよ。お母さん、今から出かけるから、ゆっくりして行ってね」



なぜか物凄く笑顔の隆太君のお母さん。それにしても、この部屋を見ても何も思わないのかしら。



とりあえず、「ありがとうございます」とお礼は言っておいた。



「ねえ、隆太君、この部屋に人を入れたりしているの?」



めちゃくちゃ気になるが、聞きたくない。でも気かなきゃ!そんな思いから、意を決して隆太君に問いかけた。



「もちろんだよ。俺の友人や家族は普通に入っているよ」



やっぱり…


「お友達、何も言わない?」



「最初は皆絶句するけれど、俺がいかに渚を好きか、丁寧に説明すると分かってくれるよ」



満面の笑みを浮かべる隆太君。この人、もうダメだ…



「そんな事よりも渚ちゃん、俺たち今日から付き合ったんだよね」



なぜか嬉しそうにすり寄って来る隆太君。ちょっと待って、お願い。



そう言おうと思ったのだが、秒殺で唇を塞がれた。どんどん深くなっていく。



ヤバい。


そう思った時には時すでに遅し。



獣と化した隆太君によって、無残にも食べられてしまったのだ。



「渚、大丈夫。ほら、お水のもうね」



そう言って、私に口移しで水を飲ませて来る隆太君。私の体には、隆太君に付けられた赤い印が無数にある。



「こっちにおいで、俺の可愛い渚ちゃん」



嬉しそうに私を抱きしめると、頬ずりをしたり、唇をなめたりとやりたい放題だ。



何が嫌かって、それは天井に私のドアップの顔がでかでかと貼られている事だ。どうしてこんな物を見ながら、隆太君に抱かれなければいけないんだろう。



「ねえ、隆太君。あの天井に貼ってあるのだけでも、剥がしたらいけないかしら?」



「う~ん、寝る時に渚を見つめながら寝たいんだ。でも、渚が一緒に住んでくれるなら剥がしてもいいよ」



こいつ、高校1年の分際で何を言っているんだ。そんな事できる訳がないだろう。



「私達まだ高校生よ。さすがにそれは無理ね」



「だったらあれを剥がすのも無理だね」



物凄い笑顔で答えられた。それにしても、隆太君ってよく見ると、細マッチョだ。筋肉の事に詳しくない私が見ても、奇麗な腹筋をしている。



何となく腹筋を触ってみた。やっぱり筋肉だけあって固いわね。こっちはどうなのかしら。



男の子の裸なんて見た事が無い為、つい興味津々で触ってしまった。でも、それがいけなかった。



「渚、俺の体そんなに触って、もしかして誘っている?」



しまった、つい珍しくて触りすぎたわ。



「ごめんなさい。特に理由は無いから気にしないで」



そう言ったものの、どうやらスイッチが入ってしまった隆太君。そのまま、2回戦に突入してしまった。そのせいで疲れ果て、どうやら眠ってしまった様だ。



「渚、そろそろ起きて」



う~ん、もうちょっと。



「な~ぎ~さ~」



うるさいな!そう思いゆっくり目を開けると、目の前にはドアップの隆太君が!



「ギャーーーー」



びっくりして布団に潜り込んだ。



「渚、大丈夫?母さんが晩ご飯を食べて行けって言うから、そろそろ下に降りようか。父さんにも紹介したいし」



何ですと?ふと時計を見ると、午後7時を指していた。嘘でしょ!私どんだけ寝ていたのかしら。



取りあえず食事はお断りしよう。そう思っていたのだが…



「渚ちゃん。こっちよ!さあ座って」



とても強引な隆太君のお母さんに捕まり、結局晩ご飯をご馳走になる事になった。それにしても、隆太君のお父さんは隆太君にそっくりの超絶イケメンだ。



やっぱり美男美女からは、美しい人が産まれるんだなという事を、嫌と言うほど思い知らされた。



「君が渚ちゃんか、息子から君の話は色々と聞いているよ。話通りの可愛らしい子だね」



「本当ね、こんな可愛い子が家にお嫁さんに来てくれるなんて嬉しいわ。そうだわ、せっかくだからこの家を改築して、二世帯住宅にしましょう」



楽しそうに話す隆太君のお母さん、横でお父さんも頷いている。ちょっと待って、結婚なんてまだ考えていないし。そう思い、口を開こうとした時だった。



「母さん、俺たちは別で家を建てるから。それに二世帯なんて建てたら、兄さんはどうするんだよ。とにかく二世帯は諦めて。ごめんね、渚。家のかあさんが変な事を言って」



イヤイヤイヤ。謝るところは、そこじゃないでしょう。



「あの、私、まだ高校1年生ですし、結婚とかはまだ考えていないです」



よし、言いきってやった。そう思ったのだが…



「そうよね。まだ卒業までに2年もあるものね。そうだわ、一度相手のご両親にも挨拶に行かないとね。いつがいいかしら?」



この人、人の話全く聞いていないし…



その後もあまりかみ合わない話をした後、やっと家に帰る事になった。もちろん、家までは隆太君が送ってくれる。



「それじゃあ、送ってくれてありがとう」



そう言って家に入ろうとしたのだが、なぜが隆太君に後ろから抱きしめられた。



「渚、俺まだ渚と一緒に居たい。離れたくないんだ!」



「ちょっと、隆太君、声が大きいよ」



「だって渚と離れたくないもん!」



ギューギュー抱きしめて来る隆太君を何とか振り払おうとするが、「渚~」と叫んで中々離れない。



そうしている間にお母さんが出て来た。



「あら隆太君、良かったら上がっていく?」



ちょっとお母さん、なんてこと言うのよ。



「もちろんです、お邪魔します!」



私が抗議の声を上げる前に、ズカズカと家の中に入っていく隆太君。その後、お父さんとも会話を弾ませていた。



着実に私の家族との仲を深めている、隆太君なのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る