第7話 渚、もう逃げられないよ~隆太視点~
日曜日の夜、探偵から電話がかかってきた。
“片岡様のお望み通り、たっぷり凝らしめてやりましたよ。とりあえず、明日は学校に行く様に伝えてありますが、明後日からはもう来ないはずですから”
「ありがとう。助かったよ」
これで渚に手を出す奴はいなくなったな。明日が楽しみだ。
そして翌日
渚とその友達を呼び出し、あの女共に謝罪させた。よほど俺が怖いのか、かなりビビっている。一体どういう方法でこいつらを懲らしめたのだろう。まあ、俺には関係ないか。
その日を境に、俺は常に渚を見守った。朝早くに渚の家に行き、渚が家に帰るまで見届ける。男が近づこうものなら追い払い、常にずっと渚と一緒にいた。
最初は引き気味だった渚の友達も協力的で、渚の私物や小さかった頃の写真を俺に売ってくれる。さらに、俺と付き合う様に渚にも掛け合ってくれている様だ。それでも渚は頑なに、俺と付き合う事を拒否する。
なぜだ…
ちなみに、俺の両親にも渚の事を話してあり
「女嫌いの隆太が女の子に夢中になるなんて!早く私達にも渚ちゃんに会わせて」
と言っているくらい、渚に好意的だ。
最初はドン引きしていた俺の友達達だったが、今では完全に俺の味方になっている。今も友人たちに、渚について相談しているところだ。
「なあ、どうしたら渚と付き合えるんだろう。なんだか、渚も意地になっている気がするんだよね」
俺の言葉に考え込む3人。
「そうだな~、足立さんが断れない状況の中、告白できればいいんだけれどな」
和也がポツリと呟く。
「おっ!それいいじゃん。なあ、隆太、この件俺に任せてくれないか?」
そう言いだしたのは、武司だ。何かいい案が思いついたようだ。俺は武司に任せる事にした。
数日後
「隆太、これで足立さんはお前のものだ」
「どういう事だよ、武司」
俺はもちろん、和也と琢磨も食いついた。
「俺さ、こう見えて友達多いんだよ。先輩とかにも知り合いがいてさ。それで、明後日の放課後、体育館で公開告白を行う事にしたんだ。その事を先輩たちに話したら、出来るだけたくさんの人を集めてくれるって言ってくれてさ」
「なるほど、確かに大勢の前で告白すれば、さすがの足立さんも断れないよな」
武司の案に、他の2人も食いついた。
「ただ、大勢の前で告らないといけないけれど、隆太は大丈夫か?」
少し心配そうにそう言った武司。こいつ、本当にいい奴だな。
「俺は全然大丈夫だよ。俺の為に色々と手配してくれて、本当にありがとう。武司たちの期待に応えられる様、頑張るよ」
きっと心優しい渚の事だ。大勢の前で俺を振ったりはしないだろう。そうか、明後日には渚は俺のものか!
そうだ、渚と付き合えた暁には、以前作ったGPS機能が付いたチョーカーを付けさせよう。
そう、俺は高校に入学してすぐ、工業大学に行っている兄さんにお願いしてGPS機能が付いたアクセサリーを作って貰ったんだ。最初はネックレスにしようと思ったのだが、それだと簡単に取り外されてしまう。
そう考えた俺は、俺の指紋を認証して取り外しができるタイプのチョーカーを、兄さんに開発してもらった。
実は機械マニアの兄さんは、こういうのが物凄く得意なのだ。俺の頼みを喜んで引き受けてくれた。
あのチョーカーがやっと日の目を見るんだね。ありがとう、兄さん!
そして待ちに待った公開告白の日。朝からウキウキが止まらない。今日やっと渚は俺のものになるんだ。
そう思うと、胸がドキドキする。ルンルン気分でいつもの様に、渚の家の前で待ち伏せをする。
渚を尾行しながら学校へと向かった。
「隆太、今日だぞ。心の準備はいいか?」
「もちろんだよ、今すぐでも大丈夫なくらいだ」
心配して武司が聞いて来てくれたが、俺の様子を見て苦笑いしている。
「俺たちも援護射撃するからな」
どうやら和也と琢磨も応援してくれる様だ。頼もしい友達を持って俺は幸せだな!
そして放課後
友人たちと一緒に体育館へと向かった。
ちなみに渚は、渚の友人たちが連れて来てくれる事になっている。昨日渚の友人たちには、公開告白をすることを話しておいた。
すると向こうから
「渚を連れて来るから任せて」
と、申し出てくれたのだ。どうやらこの2人も、完全に俺の味方の様だ!
「おい、めちゃくちゃ沢山の人が集まっているぞ。大丈夫か?」
壇上の裏に居る俺に、和也が声を掛ける。
「別に大丈夫だよ。人は多い方が渚も断りにくいだろう?」
そう、人は多いに越したことはない。
「それならいいが…それじゃあ、俺たちはとりあえず野次馬たちに紛れているからな」
そう言うと、和也たち3人は体育館の真ん中に向かって歩いて行った。
しばらく待っていると、来た!渚だ!
友人たちに連れられ、体育館へと入って来る。そして、さりげなく友人たちに誘導され、体育館の真ん中へとやって来た。
よし、始めるか。
早速壇上の中央まで行き、皆に挨拶をした。俺が出て来たのを見て、何かを察知したのか、逃げようとする渚。もちろん、逃がすつもりはない。
「1年の足立渚さん、俺は君のことを心から愛しています!どうかずっと俺と一緒にいてください。お願いします」
大きな声で渚に向かって告白した。一瞬ビクッと肩を震わせた渚。体育館中の視線を一気に集めている。
俺の友人たちも、予定通り援護射撃をしてくれた。
怯える渚の元に小走りで向かい、手を差し出し、もう一度「俺と付き合ってください」と伝えた。
周りからも
「断るなよ~」
「いいねぇ~青春だねぇ~」
なんて声も聞こえてくる。
どうやら観念した様で、俺の手を掴んで「よろしくお願いします」と言った渚。
やっと手に入れた。もう絶対離すものか!その場でチョーカーを渚の首にそっと付けてやった。これでもう君は俺から逃げられない!
周りはもうお祭り騒ぎの様に盛り上がっている。渚は明らかに青い顔をしているが、まあ気にしない様にしよう。
こうして俺は、無事渚を手に入れたのだった。
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