第6話 中々思う様には行かない~隆太視点~

高校の入学式当日、真新しい制服に身を包み、学校へと向かった。女共がこちらを見て頬を赤らめているのが、はっきり言ってウザイ。



学校に着くと、掲示板を確認しクラスを調べる。俺は5組か。渚は、2組。クソ、同じクラスじゃないのか。



「おはよう!隆太。まさかお前が共学を受けるなんてな。もしかして、足立さん狙っているとか?」



声を掛けてきたのは幼馴染の和也だ。どうやらこいつも同じ高校の様だ。



「そうだよ、何か文句あるか!」



「マジかよ!でも、有馬とうまくいかなかった見たいだし、お前カッコいいから付き合えるんじゃねぇ?そうそう、俺も5組なんだ。よろしくな!」



有馬、渚が好きだった男の名前だ。この名前を聞いただけでイライラする。そんな俺の腕を引き、入学式が行われる体育館へと向かう。その時、向こうから渚がやって来た。制服がよく似合っていて、物凄く可愛い。



これから毎日見られるのか。楽しみだな。



「おい、あんまり露骨に見ていると、気持ち悪がられるぞ」



和也に若干引き気味に言われたが、特に気にはならない。今まではずっと別の中学で、中々会えなかったんだ。見るくらいいいだろう!


式の間中渚を見つめていた。どうしてクラスが違うんだ!クソ、一緒だったらずっと見つめられるのに!



そして入学式も終わり、クラスに向かった。ここでも俺の事を見つめる女共の視線がウザイ。



そんな中、1人の女が話しかけて来た。



「私、山岡あゆみって言うの。よろしくね」



「どうも」



面倒くさくて適当に答えた。この日以来、この女が俺にまとわりついて来るようになった。正直ウザイ以外何者でもない。



「俺、好きな人がいるから付きまとうな!」



はっきり本人に伝えたが、全く気にしない女!それどころか、なぜかあの女と俺が付き合っているという噂まで流れ始めた。クソ、このままでは渚に誤解されてしまう。



「なあ、お前そんなに足立さんの事好きなら、告っちまえよ」



「確かに、お前の部屋行った時、マジで引いたもんな。お前顔だけは良いんだから、OK貰えるだろう」



「確かに顔だけは良いもんな」



和也に加え、高校から仲良くなった武司と琢磨が呟いた。



「顔だけは良いってどういう事だよ。勉強だって運動だってそれなりに出来るぞ」



すかさず反論した。



「でもあの部屋は異常だろう。どうせストーカー見たいなもんなんだから、さっさと告っちまった方がスッキリするぞ」



確かにこいつらの言う通りだ。よし、渚に気持ちを伝えよう。そう思い、早速渚を呼び出し、一世一代の告白をしたのだが…



「お断りします」



そう言うと、がに股で帰って行った。



え…



あまりのショックに、周りに人がいるのもお構いなしに、和也たちに振られた事を報告した。



「マジかよ、足立さんお前を振ったのか!」



「そうだよ、振られたよ!俺はどうすればいいんだ!」



ショックすぎて、このまま消えてしまいたい…



「でもさ、よく考えたら初対面の相手に告られたから、びっくりしたんじゃないのか?」



「初対面じゃない。中学の時、2回だけ会っているよ!」



「そんなん初対面みたいなもんだろう」



確かにこいつの言う通りだ。まずは俺の事を知ってもらわないとな!とにかく、渚と友達になる事を、とりあえずの目標にすることにした。





そして翌日。

俺が渚に告白したことが一気に広まっていた。



「お前が皆がいる前で“振られた”って騒ぐからだろ。本当に、何やってるんだよ」



呆れる和也。



「でもさ、隆太が足立さんの事が好きだって皆にバレた訳だし、ある意味良かったんじゃないのか?これでガンガンアタックできるだろう」



そう言ったのは琢磨だ。



「馬鹿か、ただでさえ学校中の噂になっているんだ。今お前がアタックしたら、尚更噂になるだろう。足立さんはあまり目立つことが好きじゃない。今回の事で、迷惑だと思っているだろうから、とにかくしばらくは様子見だ!」



和也は渚と同じ学校だったから、俺たちより渚の事を知っている。そんな和也が言うなら、間違いないだろう。



「分かったよ。こっそり見つめるだけにしておくよ」



「イヤ、それはそれで気持ち悪いだろう!とにかく、印象悪くしない様、しばらく彼女から距離を置け。そうする事が、足立さんと付き合える近道だ」



クソ、確かに和也のいう事は一理ある。仕方がない、しばらくは、渚から距離を置こう。




♢♢♢

渚から距離を置き始めて、2週間ほどが経った。なぜかこの2週間、山岡という女がやたら絡んでくる。何度も迷惑だ!と伝えたのに、本当にしつこい女だ。



「なあ、俺はいつまで我慢すればいいんだ?山岡とか言う女はめちゃくちゃウザいし、渚不足で死にそうだ」



ぐったりとした俺を見て、苦笑いする3人。



「本当なら1ヶ月ぐらい頑張って欲しいくらいだが、もう限界みたいだな。仕方ない。もう足立さんに関わってもいいぞ。ただし、あんまり暴走はするなよ!」



「わかった!」



急いで渚を探しに2組へと向かう。あっ、渚だ!ちょうど友人と角を曲がったとこ

ろを目撃し、急いで走って行く。



角を曲がると、階段の下で座り込んでいる渚の姿が!



急いで階段を降り、声を掛ける。どうやら階段から落ちた様だ。話を聞くと、同じクラスの山岡とその取り巻き達に、突き落とされたとの事。



それだけでなく、今までも散々渚に嫌がらせをしていた事も分かった。



ふざけやがって!体中から怒りが込み上げてきた。おっといけない。今は渚だ!久しぶりの渚に嬉しくて、つい抱きしめて頬ずりしてしまった。もうこうなったら止まらない。



片岡君という渚に、名前で呼ばせるようにお願いた。さらに結婚の約束も取り付けようとしたが、そこは全力で拒否されてしまった。残念…



おっといけない、渚は怪我をしているんだった!早速渚を抱きかかえ、保健室へと連れて行った。



怪我も大した事なくてよかった。帰りは家まで送り届け、渚のお母さんと弟さんにも挨拶できた。残念ながら、お父さんには挨拶できなかったが、またいつでも挨拶は出来るだろう。



それにしても、渚は本当に恥ずかしがり屋だ。こうなったら徹底的に渚に接近して、絶対に渚の口から俺と付き合う事をOKさせよう。



そうそう、その前に山岡たちを何とかしないと。



翌日、早速いつもお世話になっている探偵事務所を訪ね、山岡とその取り巻きに制裁を加えてもらう様お願いした。



ここの探偵事務所は怪しい男たちとも繋がっているらしく、金さえ払えばどんなお願いでも聞いてくれるのだ。



「かしこまりました。早速この女性たちを懲らしめましょう。方法はこちらに任せていただいてもよろしいですか?」



「もちろんだ!ただあいつらに謝らせたいから、月曜日には学校に来るようにして欲しい」



「かしこまりました。任せてください」



とりあえず、これで渚をイジメた奴らは消せる。満面の笑みで事務所を後にしたのであった。

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