第135話 初めて『死の気配』を感じたよ

無事に街へと帰還。

怪我一つないし街も朝と何も変わらないので一安心だ。

まぁ、壁がある為街の外へ逃げられないからか、街中の雰囲気は重苦しさを感じたが……。


寝泊まりしているビルへと戻ると笑顔ソフィーアに出迎えられ、嬉しい様な、少し気恥ずかしい様な、何とも言えない気持ちになる。


「ただいま。」


「あぁ、おかえり。早かったな。何かあったのか?」


「一応あるにはあったけど、そもそもダンジョンがあまり深くなかったし、出てきたモンスターも全然強くなかったからね。結構簡単に潰せたよ。」


「……最後のダンジョンに向かわずに早く帰って来たということは、養殖されているモンスターを見つけたのか?」


「そう。サイズの小さいドラゴンがそこそこいて、倒しても死体が消えなかった。ほぼ間違いないと思う。」


「そうか……。まぁ、君が無事でよかった。お茶を用意させて、ゆっくりと休むことにしよう。」


「……妊娠中ってお茶飲んでも良かったっけ?カフェインが胎児に良くないって聞いた記憶があるけど……。」


「……かふぇいん?お茶は飲まない方がいいのか?」


「確かそうだった気がするけど……少しなら問題ないのかな?カフェインの含まれる紅茶やコーヒーは飲まない方が良くて、妊娠中のお酒はもっと駄目だったはずだよ。どっちもお腹の赤ちゃんに悪影響がでるとかなんとか……。」


「そうなのか……。お茶も酒も飲めないとなると、水くらいしか飲めるものがないな……。」


本当に妊娠中は注意すべきことが多くて大変そうだ。

確か親戚の妊娠中は麦茶を好んで飲んでいた気がするが、麦茶はあるのだろうか?

麦茶は麦を炒めてお湯に入れるだけで簡単に作れたような記憶があるけど、味の保障は出来ないからな~……。

一応後で試してみるか。


「ソフィーア、今夜この者は私が借ります。よろしいですね?」


……ハイ師匠がいきなりぶっこんできた。

ちゃんと言っておかなくちゃいけないことだが、いきなりはビックリさせてしまうだろう。

ソフィーアが固まっちゃったよ……。

戻ってこ~い。


「い、一応私もこの国の巫女もしばらく出来ませんので、彼が問題ないのなら構いませんが……ハイエルフとなった師匠は妊娠しないのでは?」


「子を生すために行う訳ではありません。では、今夜は彼を1人で寝かせるように。」


ハイ師匠はそう言って行ってしまった。

非常にマイペースなお方だ。

……正直緊張してきたな。

今夜は大丈夫だろうか……?

一応エルフの秘薬を飲んでおいた方がいいのかもしれない。


「な、なぁ……師匠と何かあったのか?あの師匠がその……男に積極的になるなんて正直信じられないのだが……。」


「え~っと……。なんと言いますか……。私と魔王の間に何らかの縁があることは間違いないらしいので、師匠さんと私の間に縁を結ぶことで間接的に魔王との縁を作りたい様で……。」


そう説明すると、少しだけソフィーアは納得した様子……。

昔から目的の為なら手段は択ばないタイプだったのかな?

ハイ師匠に関しては強いこと以外本当に何も知らないんだよなぁ~……。

名前すら知らない……。

というかハイエルフって妊娠しないの?


「……君が師匠と仲良くなってくれると嬉しいが、無理はするんじゃないぞ。師匠は珍しいまともなハイエルフに見えるが、ハイエルフはハイエルフだからな。結構無茶苦茶だから気を付けるんだぞ。」


……本当に不安になって来た……。




なんだかんだ穏やかな夕食を経て、ソフィーアと一緒にお風呂に入り、体を隅々まで洗って貰って夜となった。

私はパンツ一丁の状態でベッドに座り、ハイ師匠を待つ。

エルフの秘薬をしっかりと飲んだので、既に下半身の自己主張率はマックスだ。


ノックも無しに部屋のドアが開き、ハイ師匠が入って来た。

いよいよの様だ……。


「準備は出来ているようですね。……では、始めましょう。」


そう言って目の前で服を脱ぎ始めたハイ師匠。

一切日焼けしていない白い肌。

全体的に細く小柄で、儚さを感じるほど華奢な体つき。

健康的な色気のソフィーアとは、また違った色気を漂わせており、思わず見入ってしまう光景だった。


「どうかしましたか?そんなに見つめられると、流石に少し恥ずかしいのですが……。あなたも早く脱いでください。」


服を脱いだハイ師匠は、少し照れた表情でそう言って、ベッドで横になった。

もう既に、先ほどまで感じていた不安など頭から完全に消え去り、今はハイ師匠とヤルことしか考えられない。

最近下半身に正直に生き過ぎている自覚はあるが、求められた結果こうなった気もするので気にしない。

ところで、ハイ師匠はベッドで横になって待ち構えているだけだが、前戯などを行った経験はないのだろうか?

小柄なハイ師匠にこのまま入れちゃうと、間違いなく痛い思いをすると思うのだが……。


「私はあまりこの様な経験がありません。あなたの望むまま、好きなようにしてください。」


……私の中の理性は完全に消え去った。

愛液が溢れでて止まらなくなる程前戯をした後、止まるよう懇願されようが失神しようが腰から下が激しく痙攣していようが一切構わず、朝日が昇ったことを認識するまでハイ師匠を徹底的に攻め続けた。

スラエラとした時以上に独りよがりな行為になってしまった気はするが、ハイ師匠との縁はしっかりと築けたと思うので、特に問題はないだろう。

……朝日が昇っているのが問題だったわ。


この日のダンジョン攻略は、当然ながら休むことにした。




はいという訳で、本日は近場最後のダンジョン攻略へと来ております。

ハイ師匠による街からダンジョン間の護衛もなしの、完全に1人っきりでの行動だ。

正直何かあった場合にすぐ助けを求めることが出来ないので、少しだけ不安を感じているのだが、最近不安を感じてもすぐに頭から消えるので気にしなくてもいいだろう。


とりあえずダンジョンに入り、そしてすぐに出た。

今回のダンジョンは吹雪吹き荒れる極寒の地となっている様だ。

インベントリから防寒具を取り出してしっかりと着込み、再び中へ。

数メートル前も見えない程の吹雪で視界の状況が非常に悪いが、結構広い雪原の階層となっている様だ。


火魔法で体の周りの空気を一定の温度を保つように温めた後、ダンジョンの探索を開始した。


この階で出てきたのは白いウサギだった。

サイズは中型犬程度。

頭から立派な一本角が生えているが、毛皮はモフモフしており非常に可愛い。

角が刺さるように体当たりをされると危険かもしれないが、私としたら角を掴んで持ち上げやすいので非常に楽なモンスターだ。

何匹も角を掴んで持ち上げ、毛並みを堪能した後にナイフで処理した。

手で握っていた角の感触が溶けるように消失するのは、何とも言えない寂しさを感じた。

エルフの国で飼うペットはウサギがいいのかもしれない。


地下1階。

ここも前と同じ雪原の様だが、吹雪が少し弱くなっており、先ほどよりは遠くまで見通せる感じだ。

出てきたモンスターは白い狼、カッコイイね。

体毛がふさふさしており、毛皮をベッドに敷いて横になればグッスリと眠れそうだが、非常に残念なことに首を斬ると消失してしまった。

死体が消えるダンジョンは本当に虚しい。


地下2階。

雪原から雪のトンネルの様なエリアへと変わった。

壁や地面はしっかりと凍っている様で、しばらく同じところにいても私の周りの氷の様な壁が解けることはなさそうだ。

出てきたモンスターはイエティ。

……鑑定で調べたから嘘じゃないよ。

顔と手のひら以外毛むくじゃらの、2足歩行で移動するモンスターで、首に物理魔法の弾丸を放てば簡単に処理できた。

毛むくじゃらでも、可愛くないと触りたくなかった。


地下3階。

この階も雪の中のトンネルみたいな通路だが、先程よりも氷っぽい印象となった。

問題は寒さ。

火魔法で周囲の温度を上げているが、寒ければ寒いほど魔力消費が増えていくのだ。

魔力の減り方が最初の雪原の2倍くらいになっているので、下手に火魔法を解除したら肺まで凍り付いてしまうのではないだろうか?

正直少し危険性を感じる。

まぁその分モンスターは弱い様で、出てきたのはアザラシだった。

……クッソ可愛い。

海もないこんなところでパタパタと移動している姿は、本気でお持ち帰りしたいほど可愛かったのだが、少し可哀そうな気もする。

移動がクッソ遅くて待っていないと襲われそうにないので、無視して先に進むことにした。


地下4階。

広い空間の真ん中に透き通るような氷の柱が立っている。

少し距離があるのでよく見えないが、氷の中に何かいるようだ……。

……柱の中の何かと目があった様な……。


すると突然、気温をあげるために使用中の火魔法の魔力消費が加速した。

恐らくあの氷の柱の中にいる何かが、この階の気温を下げているのだろう。


(逃げるべきか……?)


そんな考えが頭をよぎる。

すると、背後にあった階段入り口が氷で閉ざされてしまった。

いかにもダンジョンらしく、1度入ったらあれを何とかしない限り、外には出られない場所だったようだ。

……なんでこんな時にそんな存在と会うのかなぁ……。


仕方がないのでインベントリからハンマーを取り出し、氷の柱へと全力で叩き込む。

この氷の柱は相当硬いようだが、今の一撃でひびが入る程度には脆いようだ。

柱の中にいると思われる存在は相変わらず見えない。

透明な柱にいながら見えないということは実体のない生物なのかな?


何度も何度もハンマーで氷の柱を殴り続け、ついに柱を粉々に吹き飛ばすことが出来た。

氷の柱の中にいた敵を倒した感覚はないが、気温の低下も止まった様で、魔力消費も少なくなっている。

一応助かったのだろう。


「……人間に負けるとは思わなかった。」


……どこからか声が聞えて来たよ……。

柱の中にいた敵かな?

話しかけてくるのなら姿を現して欲しい。


「私は帰ることにする。そこに落ちている石を持って行くといい。」


そう言い残し、敵は姿を見せないまま消えてしまった様だ。

……『帰る』っていうことは、ダンジョンのモンスターではなかったってことだよね?

……神様に相談しよう。


恐らくこれのことを言っていたのであろう石を拾ってインベントリに放り込み、正直もう帰るつもりだが一応念のため、次の階をチラッと見ていくことにした。


地下5階。

いつものダンジョンコアの設置された広間だった。

さっきのやつで終わりだったんか~い!

ラスボスがわけわからん奴で釈然としないが、魔石を壊し、Lv.61となってダンジョンから出た。

帰りにアザラシはいなかった。

癒しが欲しい……。

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