第134話 拒否権なんてなかった……。

今日はハイ師匠にダンジョンの前まで案内してもらい、久しぶりの様な気がする1人でのダンジョン攻略にやって来た。

昨日は洞窟型だったが、今日のダンジョンには平原が広がっており、ピクニックに来たような気分だ……ピクニックなんて生まれてから1度も行ったことないけど。


出現しているモンスターは鹿の様なちょっと違うような、なんか鹿っぽい感じのモンスターだ。

鹿ってそもそも種類が多いのよ。

狩猟ゲームで鹿の種類に合わせて鹿笛だったりを用意しないといけなくて、覚えるのが面倒だった記憶がある。


とりあえず鹿に向かって物理魔法で作った弾丸を飛ばしてみる。

……ちょっと弾が大きかったようで、頭がブシャッとなって消滅してしまった。

まぁ、倒せないよりはいいのだが、1人で進む以上魔力の節約は大事

もう少し小さな弾を作り、魔法の射程距離内にいる全ての鹿を、消滅させたのだった。


今日のダンジョンは階段を降りる様で、地下1階。

この階も鹿のようだが、さっきのやつとは違いこいつは知っている。

ヘラジカだ。

ゲームで何度も体当たりを受けて死んだから忘れるわけがない。

まぁ、死にまくったのは、銃があるのに弓矢の高威力に惹かれて、弓矢で狩猟しようとして必要以上に近づいていたからだけど……。

こいつならサイズが変わろうと心臓だろうが首の骨だろうが感覚的に攻撃できる。

遠距離から物理魔法をピュンピュンしちゃって、穴を開けちゃうんだもんね~。


地下2階。

鹿、鹿と来てこの階はバクだった。

最初に見た時に(なんだこいつ)と思って鑑定したから間違いない。

やはりモンスターなのでサイズが非常に大きいが、モンスター化しているのに温厚な性格なのか、一切攻撃してこない。

硬そうに見えて案外フワフワだった体毛を楽しんでいる間も平然と草をムシャムシャしていたので、倒すようなことはせず普通に先へと進んだ。

ダンジョンでもこんなことあるんだなぁ……。


地下3階。

ほのぼのした雰囲気をぶち壊すように、降りた先には大量のドラゴンが……。

と言ってもサイズは全部小さいので、以前よりステータスの上がった私が、特性のハンマーで殴れば余裕で対処できたが……。

さて、ドラゴンの首の骨が60度の角度に曲がる程殴り、頭をグチャッとなるまで叩き潰したのだが死体が消えない。

これはもう間違いないだろう。

……養殖場を見つけちまったよ……。


とりあえずミニドラゴンは丸焼き用にすべて倒して、インベントリに確保した。

端から端まで見落としが無いように歩き回り、恐らくすべてのミニドラゴンを処理できたと思うので次の階へ。


地下4階。

この階にも先程の階よりかは大きくなったドラゴンがいるのだが、いるのはドラゴンだけではなかった。

馬のモンスターだ。

以前魔王が化けていた馬モンスターとそっくりだが、数が多いし、なんならドラゴンにムシャムシャされているので魔王ではないだろう。

……まさかドラゴンを育てるために魔王自身の分身体を食わせてるなんてことはないよね?

モンスターにとっては栄養価高そうな気もするけど……。


とりあえず、ドラゴンは引き続きハンマーでぶん殴って殺しインベントリへ。

馬モンは物理魔法を撃ちこんで……死体が消えねぇ……。

一応インベントリに入れる。


サクサク進んで地下5階。

いたのはいつかの大きな熊が1匹。

ドラゴンの後だからか、凄くほのぼのとした気持ちになってしまった。

立ち上がって威嚇してきても、可愛いとしか思えないので末期なのかもしれない。

養殖は地下3・4階だけで行なわれていたみたいだね。


攻撃してきたので脳天にハンマーを叩き込み、熊は魔石と宝箱を残して消失した。

宝箱から出てきたのは、取説が付属されていない四角い魔道具の様な物……。

インベントリの時もそうだったけど、魔道具を出すなら簡単な仕様書くらい付属して欲しいものだよね。

え~っと……魔力を流すと四角くて薄いものが出てくるのね。

それで……流石に覚えてねぇわ。

魔道具について勉強したのもうだいぶ前のことだからね。

とりあえず使ってみ……鑑定すればいいやん。


____________


『ステータスボード』

魔力を流している間、使用者のステータスが表示される。

____________


……いらねぇ……。

いや……私はそもそも必要としてないし、今ではマジで必要ないけど、これ間違いなく高値で売れるものだわ。

持って帰って生活費にするんだ~!

インベントリに仕舞った。


地下6階はダンジョンコアの部屋だった。

今Lv.58(99%)と惜しい状況。

……ちょっとこのダンジョンコアは持っておいて、帰りにあの温厚なバクを倒せばレベルが上がるかな……?

その後使えば上限超えるでしょ。

少なくとも上限ではない(99%)の時に、レベルを1上げる魔石は使いたくねぇ……。


……この場では魔石を壊さずに、戻ることにした。




ふぅ……。

襲って来ないモンスターを倒すのが、ここまで虚しい気持ちになるなんて……。

____________


Lv.60(0%)

・HP(体力):482/500

・MP(魔力):411/500

・STR(筋力):500

・MAG(超感覚):500

・SEN(器用さ):500

・COG(認識力):500

・INT(知力):100

・LUC(運):100

SP.1459


スキル

・ステータス割り振り

・回復魔法(12/100)

・風魔法(3/100)

・鑑定魔法(15/100)

・氷魔法(38/100)

・土魔法(5/100)

・破魔魔法(35/100)

・火魔法(59/100)

・物理魔法(57/100)

・水魔法(7/100)

・錬成魔法(67/100)


____________


ついにレベル60だやったぁ~!

ソフィーアの半分だぞ~!

長寿のエルフって長期間のレベル上げをちゃんとすれば圧倒的に有利な気がしていたけど、この世界に来てまだ1年も経っていない私が500歳のソフィーアの半分までレベルが上がったことの方が違和感を感じる……。

もしかして長寿な分、レベルを上げるのに必要とする経験値量が多いのかな?

それとも単に私の成長が早いだけ?


……まぁ、どっちでもいいか。

とりあえず今は、寄り道せずにダンジョンから脱出して、ダンジョン前で待っているハイ師匠に今回のことを報告しなければ……。


「終わった様ですね。何かおかしなところはありましたか?」


「地下3階と地下4階で、ドラゴンの養殖がおこなわれていました。死んでも死体が消えなかったので間違いないと思います。さらに地下4階では、ドラゴンの餌にするためか馬のモンスターも死体が消えずに残るタイプでした。残った死体はすべて回収してあります。」


「……ダンジョンを潰したのであれば、今日はもう帰りましょう。問題ありませんね?」


「問題ありません。」


太陽の位置から考えて、まだおやつ時にすらなっていない時間だ。

ダンジョンを1つ潰したけど、思ったより早く終わったな~。

肉体的には全くつかれている気がしないし、魔力もまだまだ余裕があるが、やっぱり1人だと常に気を張っていないといけないので、精神的に少し疲れを感じている。

なので、帰るのは全然問題ないどころか早上がりウェルカムって感じなのだが、ハイ師匠は何かが気になっている様子……。

やっぱり馬モンの分身体を餌に、ドラゴンたちはすくすくと成長していたのかな……?

私はそれが一番気になっている。


「1つ聞いてもいいですか?」


「何ですか?」


「あなたは魔王について、どこまで理解していますか?」


……正直全く理解していない。

『魔王』を名乗る馬モンを知っているだけだし、あれが本当に魔王なのかすら少し怪しく思っている。

まぁ、分身体だったからかもしれないけど……。

でもセリフだけは魔王っぽかったよね。


「魔王について、ほとんど何も知りません。私が知っていることといえば、人間やエルフに対して妙に殺意が高いことくらいです。」


「……そうですか。では大昔、神が殺されて死んだ話は知っていますか?」


「それなら聞いたことがあります。」


「最初の魔王は、大昔神を殺したヒトの成れの果てです。膨大なエネルギーを間近で受け、人の形も保てなくなり、モンスターに寄生し、ただ衝動のままに生物を殺そうとする存在……。あれを消滅させることが、我々ハイエルフの使命となっています。」


……へ~。

そういえば神が死んだことは言ってたけど、神を殺したやつがどうなったかについては言ってなかったね。

魔王になったのか……。

……異世界から来た奴も魔王として転生してなかったっけ?

魔王って何人いるの?

魔王を全て倒し、大魔王も倒すことで世界平和を実現し、人間同士を泥沼の戦争状態に突入させるのが目標なのかな?


「あなたは妙に魔王と繋がりがあるようです。確か魔王について書かれた紙も、あなた達が見つけたのですよね?それに大襲撃で、最初に魔王と相対したのはあなたでした。それに今回の一連の出来事も……。あなたと魔王の間には何かしらの縁がある様に感じます。」


「……気のせいだと思いますけど、異世界から転生した方の魔王は私の住んでいた国と同じ国にいたみたいですし、なんらかの縁がある可能性は否定できないですね。」


「あなたと魔王の縁を辿れば、悲願である魔王討伐に少し近づけるかもしれません……。」


……ハイ師匠が怖いです。


「ですが、あなたを危険な矢面に立てることは、ソフィーアが反対するでしょう。」


そうですね。

ソフィーアに『死ぬことは許さない』と言われたばかり。

私も子供がデキた以上、危険なことは出来るだけしたくない。

矢面は嫌でござる。


「そこで1つ考えました。あなたと私の間に、しっかりとした縁があればいいのではないかと……。私とあなたに縁があれば、私と魔王にも縁が出来るのではないかと……。」


縁ならこうして既にあるじゃないですかヤダナー。

もう既に縁はあるんですから、これから先はどんどん魔王と遭遇して、バッタバッタと魔王をなぎ倒して悲願を達成できますって!


「今夜は1人で寝ていてくださいね。」


……はい。

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