第132話 ダンジョン攻略なんてやってられるか!

ダンジョン2階。

ゴブリンが単体ではなく複数で行動するようになった。

強さ自体は変わらないので瞬殺だった。


ダンジョン3階。

モンスター自体は2階と何も変わらなかった。

ただ、数がクッソ多かったから時間がかかった。


ダンジョン4階。

ゴブリンはゴブリンなのだが、身長180センチくらいの大きな体の奴が混ざり始めた。

でも瞬殺だった。


ダンジョン5階。

体の大きな奴の割合は増えたが、モンスター自体は4階と何も変わらなかった。


ダンジョン6階。

頭がブタで、2足歩行のモンスターが現れた。

いわゆる『オーク』という奴だろうか?

少し(獣人の方だろうか?)と悩んだが、普通に攻撃してきたので普通に反撃して倒した。

即死だった。


7階への階段を見つけたので、このタイミングで一旦休憩することにした。


「なんと言うか……歯ごたえが全くないな。力任せな攻撃は当たると少し危険だが、反応が鈍いのか簡単に斬れる。」


……まぁ、私はオークを斬れなかったので魔法で頭を吹っ飛ばして攻撃していたのだが、確かにここのモンスターは正直弱い。

これまで見てきた一般的な強さの人たちでも、連携をしっかりと取れば勝てるであろう相手だ。

この先何かしらの強敵が現れるのだろうか?

一応警戒はしておいた方がいいのだろうが、こうも弱い敵が続くと集中力が切れそうである。


「まぁ、このダンジョンが攻略されてない以上、何かしらの問題があるんだろうし、無駄に怪我はしない様に気を付けて進まないとね。」


「そうだな。油断して怪我を負うなんて、笑い話では済まないからな。」


15分ほどの休憩の後、先へ進み始める。


ダンジョン7階。

オークと思われるモンスターが複数匹で行動する様になった。

ゴブリンと同じパターンかな?

何も問題はなかった。


ダンジョン8階。

以前一緒に仕事した龍人族の方と、結構似た感じの見た目をしたモンスターが出てきた。

このダンジョンは2足歩行のモンスターにこだわりでもあるのだろうか?

鑑定してみると『リザードマン』という名前のモンスターで、スキルは何も持っていない。

ただ基礎スペックは高い様で、ソフィーアの一振りにしっかりと反応して、ちゃんと間に合うタイミングで剣を頭上に構えていた。

剣ごと真っ二つに切断されたが……。


不思議なことに、死体は魔石を残して消失したが、真っ二つになった剣はその場に残っている。

そういえばゴブリンも大きなゴブリンもオークも、誰も武器を持っていなかったな。

こいつはどっかで剣を拾ったのかな?

普通にステータスは高そうだし、この階が一般的な強さの人たちの鬼門になっていそうだ。


残された剣をインベントリに回収し、どんどん先に進む。

何度かリザードマンが現れたが誰も武器防具は持っておらず、全員ソフィーアが真っ二つに切断した。


ダンジョン9階。

さっきまでの洞窟とは違い、結構広い場所だった。

大きな石で出来た椅子の様なものがあり、そこには非常に大きなオークが座っていた。

立ち上がれば体長4メールほどだろうか?

頭は完全に豚だしお腹のポッコリ具合もBMIがヤバそうだが、雰囲気はなかなか強そうな感じだ。


私たちの存在に気づいたのだろう、巨大オークは立ち上がり、こちらへ向かって走って来た。

ソフィーアが迎撃しようと剣を構え、巨大オークは大きく腕を振りかぶる。

……次の瞬間にはオークの手足が全て切断されていた。

私の前にいたソフィーアはオークの後ろに移動している……。

……ハイ師匠の技が使えるようになったのか……。


「……私は今こいつを斬ったよな?なにか違和感があったんだが……。」


「ソフィーアの師匠さんと同じ技を使ってましたよ。しっかり見ていたつもりですけど、いつの間に斬ったのか全く分かりませんでした。」


「……そうか……。こんな感じだったのだな……。」


この感じだと今の技は初めて使えたのだろうか?

しかも意識して使ったのではなく、気づいたら使っていたって感じで……。

ソフィーアがハイエルフに進化するのも、そう遠くはないのではないだろうか?

ハイエルフになっても一緒にいられるのかな?


「先に進もう。今のでこのダンジョンも終わりかもしれない。」


「そうですね。」


巨大オークの座っていた大きな石の後ろにあった階段を登ると、そこはお馴染みのダンジョンコアと思われるものが置いてある広間だった。


「君が壊すか?」


隊長さんが聞いてきた。


「ちょっと先に鑑定してみます。」


____________


『ダンジョンコアの魔石』

壊すとLvが1上昇する。壊した後は消失する。

____________


……説明が短いな~。


「ソフィーアをちょっと鑑定するよ。」


「ん?分かった。」


ソフィーアのレベルは、以前鑑定したときのLv.119(99%)から何も変わっていない。

たぶん上限に引っかかっているのだと思う。

それならソフィーアに壊してもらった方がいいかもね。

私ももう少しで上限のありそうなLv59になるけど、まだいくつかダンジョンを回るんだし……。


「ソフィーアはレベルが上限に引っかかってるみたいだし、これはソフィーアが壊した方がいいね。」


「そうなのか?分かった。じゃあ、壊すぞ。」


ほい鑑定。


____________


Lv.120(0%)

・HP(体力):759/780(1200)

・MP(魔力):119/132(1200)

・STR(筋力):1211(1216)

・MAG(超感覚):87(1200)

・SEN(器用さ):885(1200)

・COG(認識力):980(1200)

・INT(知力):54

・LUC(運):41


スキル

・風魔法(33/100)

・光魔法(1/100)


____________


うん、レベルが上がったみたいだね。

元々1211だった(筋力)の上限は他のと比べると伸びが違うな……。

他のステータス上限が10増えたのに対して、5しか増えてない。

上限以上には成長しにくいのかもしれないけど、少し勿体ない気もするなぁ……。

まぁ、レベルとステータスをバランスよく両方上げた方がいいってことなんだろうね。


ダンジョンの攻略も終わり、ここでモンスターの養殖が行なわれていた形跡もなかったので、さっさとダンジョンを出ることにした。

9階と10階は1部屋の広間しかないから移動時間もほとんどないが、8階分の移動は非常に面倒臭いものである。

ダンジョンから一瞬で脱出するための機能も付けてくれればよかったのになぁ~……。

ダンジョンに入ったのはお昼前だったが、あれだけハイペースで順調に攻略しても、出る頃には夕方になっているのだった。


「中途半端な時間だし、今日はもう終わりにして帰ろうかと思うのだが、君はどう思う?」


「そうだね。正直この時間から次のダンジョンまで移動して攻略するのは面倒臭いかな……。1日で1つのダンジョンを潰したんだし、帰って休んでも全然問題ないと思う。」


「では帰るとするか。少し急げば、夕食の時間には十分間に合うだろう。」


……なんとなくソフィーアの様子がおかしい気がする。

な~んかそわそわしている様な、焦っているかの様な……?

何か気になることでもあるのかな?

やっぱり今日、ハイ師匠のあの技が出たことが気になっているとか?

あの技に関しては私も気になってる。

原理がさっぱり分からないよね。

時を止めたのか、時間を飛ばしたのか、過程を飛ばしたのか……。

全部ラスボスが持っていそうな能力だぜ!


そんなことを考えながら街へと戻り、昨日の建物へと戻った。

あ、ボーイッシュボインちゃんだ。

……そんな私の顔を見て隠れなくてもいいじゃない……。

ちょっと傷ついちゃうわ~。

とりあえず今日の報告をしておきたいんだけど、神様はどこかな?


「私は師匠に聞くことがあるからちょっと行ってくる。」


やはりソフィーアには何か気になることがあった様だ。

ハイ師匠を探して足早に歩いて行ってしまった。

そして2人っきりになる私とボーイッシュボインちゃん……。


「神様……デヴェロプ様は今どこにいるか分かる?」


「え?……え~っと……後ろに……。」


振り返ると普通に神様が立っていた。


「スラエラを怖がらせたら駄目だよ~。今後長い付き合いになるんだから~。」


……種馬以上のことを求められても……。

私はソフィーアと一緒にいるつもりだから、エルフの国に帰るつもりだし……。


「そこは問題ないよ!なんせすでに、君のいたエルフの国とこの国、どちらからでも自由に転移で行き来出来る魔道具を開発済みだからね!いや~、作るの大変だった……。」


……なる程。

それなら確かに今後も関わりがあるかもしれない。

私としても『ヤるだけヤって、後は知らない』みたいなことをするのは、少し人としてどうかと思ってはいたのだ。

まぁ、ソフィーアのことが常に最優先だが……。

こればっかりは出会って関係を深めた順番なので仕方がない。


「君は変に真面目だね~。君はただ、下半身に忠実に生きてくれるだけで、周りが幸せになるのに……。あ、知らないの?親の持っているスキルって、全てではないけど、子供が同じスキルを持って生まれることが多いんだよ!もちろん異世界転移者が持っている特殊なユニークスキルは例外ね。さて……君はいったい、いくつのスキルを持っているんだっけ?」


……ちょっと待ってね、今確認するから……。

『ステータス割り振り』はたぶんその特殊なユニークスキルだから……。

それ以外だと10個の魔法スキルを持ってるね。

これ全部が子供に受け継がれるわけじゃないんだろうけど、複数個のスキルを持って生まれるだけでもこの世界ではだいぶ有利なのでは……?


「……10個は聞いてないな~。まぁ今更言う必要はないだろうけど、優秀な子孫を望んで君の子種を欲しがる人が沢山いることは、忘れずに覚えていた方がいいね~。」


……なんというか、ビジネスライクな関係が増えそうだね。

種馬活動は嫌いではないけど、あまりにも関係を持つ人が多いのはどうなんだろう?

その辺はまだ、前の世界での価値観が抜けていないんだろうな~。


「そういえばついさっき見たけどソフィーアちゃん、妊娠したみたいだね。おめでとう!これでエルフの国も安泰だ~。」


……そういう大事なことは本人の口から最初に聞きたかったよ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る