第124話 人生イージーモード突入

私がスキルオーブを見つけた露店は、以前の様などこからどうやって商品を仕入れているのか分からない怪しげな露店ではなく、子供向けの人形や玩具・アクセサリーが置いてある普通の品揃えの露店だった。

スキルオーブの様な球体も、商品の目玉としてドンと設置されているのではなく、普通に人形や玩具の近くにまとめて置いてあり、チラッと見ただけでは普通見逃してしまうだろう。


……そう、まとめて置いてあったのだ。

スキルオーブが8個……。

ドロップ率が上昇するアプデでもされたのだろうか?

そんなことを考えてしまうような光景だった。


とりあえず店主のおっさんに声をかけてみる。


「これっていくら?」


「ん?1つ銀貨1枚だが……買うのか?こんなので遊ぶような歳でもないだろう?」


以前錬成魔法を入手したときは金貨1枚だったのに……。

なんでもっと安くなるんや!?

銀貨100枚で金貨1枚だったはずだから、価値が100分の1にまで落ちてるよ!


出来るだけ表情や声のトーンを変えないように気を付けて、会話を続ける。


「まぁ、綺麗だから集めてるんで。」


「あぁなる程。いくつ欲しい?」


ポケットの中に入れていた硬貨を出して確認してみる。

ほとんど金貨で、銀貨は5枚しかない。

インベントリの中には沢山あった気がするが、流石に目の前でインベントリを使うのは面倒臭いことになるだろう。

お釣りは持っているのだろうか?


「銀貨じゃ足りないんで金貨で払いたいんですけど、お釣りってあります?」


「あ~……流石にないな。こっちの人形も買ってくれればお釣りも足りると思うがどうだ?」


正直スキルオーブが買えるのなら『釣りはいらねぇ』ってやるだけの価値があるのだが、怪しまれないためにはどうすればいいかな……?

考えをまとめるための時間を稼ぐために、とりあえず店主のおっさんがお勧めしてくれた人形を確認する。

……結構品質はいいな。

エルフちゃんと在庫ちゃんにでもあげればいいだろうか?


「この人形はいくら?」


「布製の人形は全て銀貨30枚だ。木製は全て銀貨20枚。」


「じゃあこれとこの人形2つと、これを全部ください。」


そう言って金貨を1枚差し出す。


「お、いいのか?ありがとな。」


「ずっとこの街で商売してるんですか?」


「ん?ああ、俺はこの街でしか商売してないぞ。仕入れもこの街に来る奴らからだ。」


「ならお釣りはいいので、これを仕入れた時は取っておいて欲しいんですが……。」


「それは確約しかねる。欲しいと言われれば売るのが商人だからな。」


独占は無理そうだ。

必死に探し回っているドワーフやエルフさん達の前で、スキルオーブでお手玉をしようと思ったのに……。


お釣りに銀貨32枚を受け取って、その場を後にした。




「あ~……なんというか。本物なんだよな?」


「たぶん……。」


商店から少し離れたところで、スキルオーブがまさかの銀貨1枚で売られている事態に完全にフリーズしてしまっていた隊長さんが、意識を取り戻した様だ。

私は冷静に買い物を行えたと思うが、フリーズしてしまう気持ちは非常に良く分かる。


「少し待っていてくれ。子供向けの商品が並ぶ店にスキルオーブが置いてあったことを伝えてくる。」


「了解です。」


隊長さんは行ってしまった。

まぁ、スキルオーブをビー玉みたいなものとしか認識していなければ、普通の商店で取り扱うことはほとんどないと思う。

雑貨品が並んでいる商店や露店でばかり立ち止まって品定めしているドワーフやエルフさん達では、スキルオーブを見つけるまでに時間が掛かり過ぎるだろう。

正直錬成魔法1点狙いでスキルオーブガチャをするつもりのドワーフさん達にはなかなかの地獄か沼が待っていると思うのだが、欲しいと思ったものに全投資する人は元の世界にもいたからな~……。


とりあえず、今回入手したスキルオーブを壊してみようかな?

8個もあるから被りが出るかもしれないが、錬成魔法のような大当たりが出る可能性もあるので非常に楽しみだ。

何のスキルオーブだったのかを判断するために、一応先に今のステータスを確認しておくか。


____________


Lv.58(41%)

・HP(体力):498/500

・MP(魔力):499/500

・STR(筋力):500

・MAG(超感覚):500

・SEN(器用さ):500

・COG(認識力):500

・INT(知力):100

・LUC(運):100

SP.1042


スキル

・ステータス割り振り

・回復魔法(5/100)

・氷魔法(31/100)

・破魔魔法(33/100)

・火魔法(57/100)

・物理魔法(53/100)

・錬成魔法(60/100)


____________


やっぱり錬成魔法だけ伸びてるな~。

5・31・33・57・53・60。

よし……1つ目いってみるか。


……ステータスに『水魔法』が追加された。

被ってないから当たりだ。

水魔法があればどこでも生きていける気がするね。

水源ってやっぱり生活をするうえで重要な問題だし。


次行ってみるか。

……水魔法のレベルが(2/100)になった。

さっそく被ったようだ。

少し落ち込む。

切り替えて次。

……あ、火魔法が(58/100)になってる。

また被りか。

運のステータス頑張れよ!

スキルオーブを見つけただけで仕事を終わりにするんじゃねーよ!


……さて次だ、残りスキルオーブは5個。

いいの来い!


____________


Lv.58(41%)

・HP(体力):498/500

・MP(魔力):499/500

・STR(筋力):500

・MAG(超感覚):500

・SEN(器用さ):500

・COG(認識力):500

・INT(知力):100

・LUC(運):100

SP.1042


スキル

・ステータス割り振り

・回復魔法(5/100)

・鑑定魔法(1/100)

・氷魔法(31/100)

・破魔魔法(33/100)

・火魔法(57/100)

・物理魔法(53/100)

・水魔法(2/100)

・錬成魔法(60/100)


____________


……『鑑定魔法』?

マジで?


にーとは『鑑定魔法』をてにいれた。


もうこの先の人生イージーモードじゃね?


「あ、もういくつか壊しているのか。少しスキルオーブの実物を見せてあげて欲しいのだが……何かあったのか?珍しいスキルでも手に入ったのか?」


隊長さんが男を連れて戻って来た。

身長は私より明らかに低いが、腕や肩の筋肉が凄まじい。

間違いなくドワーフだろう。

スキルオーブを見せるのは別に問題ないのだが、1つだけ先に自慢させてほしい。


「『鑑定魔法』をゲットしました。」


「なっ!?」


さっそく隊長さんを鑑定しちゃおっかな~?

……いや、先にスキルオーブを鑑定するべきだろう。

勝手に人のステータスを見るのは失礼な気がするし……。

『鑑定魔法』ということは、発動の仕方は魔法と同じような感じかな?

少なくとも何もしていない状態だと、何の情報も得られない様だ。

スキルオーブに魔力を……あぁ、錬成魔法とは違って、魔力を流し込むのではなく纏わせる感じね。

オッケーオッケー理解した。

それじゃあ『鑑定魔法』発動。


『風魔法のスキルオーブ』

『土魔法のスキルオーブ』

『レア度1のスキルオーブ』

『レア度3のスキルオーブ』


……。

『風魔法のスキルオーブ』と『土魔法のスキルオーブ』はそのままの意味だろう。

『レア度』ってもしかして、スキルオーブの中にはマジモンのガチャオーブが存在するわけ?

どういうことだ……?

そういえば、モンスターを倒してスキルオーブが出たんじゃなくて、宝箱からスキルオーブが出た記憶があるような……。

宝箱から出るスキルオーブは、どのスキルを覚えられるのかランダムなのかな?

詳細ってどうやって見るんだろう?


「今、そのスキルオーブに鑑定魔法を使ったのか?どんな感じだ?なんのスキルを入手できるのか分かるのか?」


「これは『風魔法のスキルオーブ』で、これは『土魔法のスキルオーブ』何ですけど、こっちの2つが『レア度1のスキルオーブ』と『レア度3のスキルオーブ』って鑑定されたんですよね。詳細が見れないので、こっちの2つはなんのスキルが獲得できるのか分からないです。」


「凄いじゃないか!私のステータスやスキルも分かるのか!?」


隊長さん大興奮だ。

ドワーフと思われる男はず~っとフリーズしている。

男の方は放っておこう。


「鑑定魔法を使うには魔力を対象に纏わせないといけないで、ちょっとソフィーアに魔力を放出させてもらうよ。」


「分かった!」


魔力を隊長さんの全身を包み込むように纏わせ『鑑定魔法』!


____________


Lv.119(99%)

・HP(体力):777/780(1190)

・MP(魔力):130/132(1190)

・STR(筋力):1211(1211)

・MAG(超感覚):87(1190)

・SEN(器用さ):885(1190)

・COG(認識力):980(1190)

・INT(知力):54

・LUC(運):41


スキル

・風魔法(33/100)

・光魔法(1/100)


____________


……とりあえず、問題なく使えた。

『鑑定魔法』を使っても、スリーサイズが分かったりはしない様だ。

……Lv.119かぁ~……。

何も言えねぇや……。


「どうだ?見えたか?」


「レベルが119ですね。ステータスは魔法関係以外は凄く高いと思います。持っているスキルは『風魔法』と『光魔法』ですけど、『光魔法』を持っていることは知らなかったんじゃないですか?」


「そうか……。確かに『風魔法』は使えるが、『光魔法』を持っていることは知らなかったな……。」


『鑑定魔法』凄いわ~。

このスキルを持っている人が近くにいれば、才能を無駄にすることなく効率的に強くなれるんじゃないの?

……昔『鑑定』が使える転移者がいたから、奴隷から解放されて多種族の国が作れたのか。


それにしても、鑑定魔法は意識が逸れるとすぐに効果がなくなるな。

使っている間は魔力を流し続けないといけないし、結構使い勝手は悪い気がする。

それに詳細までは分からないのがなぁ~……。

さっきは4つのスキルオーブをまとめて鑑定したけど、1つづつなら詳細も分かるかな?


____________


『レア度1のスキルオーブ』

基本属性魔法スキルの内、使用者に最も適性の高い魔法スキルを獲得することが出来る。このアイテムは使用後消滅する。

____________


詳細も見れたわ。

基本属性魔法……?

属性っていうことはやっぱり、火・水・風・土みたいな大昔の大雑把な感覚で分類されているのだろうか?

私は火・水・氷を持っているし、風と土のスキルオーブもここにある。

別に使ってもいいけど、高くで売り払うのもいいかな?


さて、『レア度3のスキルオーブ』はどんな感じかな~?


____________


『レア度3のスキルオーブ』

ランダムに魔法スキルを獲得することが出来る。このアイテムは使用後消滅する。

____________


……絶対これ手抜きだろ。

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