第113話 24時間戦えますか?

まぁ、エルフちゃんの目標はどうであれ、私に出来ることは特にない。

アドバイスしようにも『とりあえず筋肉だ。筋肉は全てを解決する!』なんて言えないし、技術面については隊長さんに指導してもらうのが一番だろう。

……あ、1つだけアドバイス出来ることあるわ。


「とりあえず強くなりたいなら、もう少しお肉を沢山食べた方がいいと思うよ。小食な上にお肉の量が少ないから、筋肉が成長するための栄養とか足りてなさそうだし……。」


そう、エルフちゃんは普通の女の子らしく結構な少食だ。

しかも、いかにも物語にいそうなエルフっぽい感じで、ほとんど野菜ばかり食べている。

お肉を食べないわけではないので菜食主義という訳ではないが、もう少しお肉をたくさん食べるべきだと思っていた。

この世界にプロテインドリンクがあるとは思えないし、タンパク質を取るなら肉をたくさん食べるのが一番だろう。


「お肉ですか……?」


隊長さんはお肉も野菜もモリモリ食べてるよね。

エルフちゃんもあれくらい食べた方がいいんだよ。

いきなり沢山食べるのは難しいと思うけど、少しづつでも食べる量を増やすべきだと思う。

隊長さんみたいに強くなりたいなら、隊長さんみたいにいっぱい食べなきゃ!

私のいた世界には『食べるのもトレーニングの一環』なんて言葉もあるくらいだよ。

……マジで沢山食べるのってキツイんだよね……。


「そうなんですね……。確かに伯母様は昔からよく食べていました。私も頑張って沢山食べるようにしてみます。」


頑張ってね~。

いっぱい食べて、どことは言わないけど大きくなるんだぞ。

ついでに筋肉もつけて、強くなれるといいね。


エルフちゃんにアドバイスもしたので、そろそろ休憩を切り上げて運動を再開する。

と言っても引き続きエルフちゃんの運動がメインだが……。

まず用意したのは大きな水の入った樽。

『何に使うんだろう』という目で見てきているエルフちゃんに、まずは持ってもらおう。

……少し重そうだが持てるようだ。

じゃあもう1個追加で……。

……うん、大丈夫そうだね。

それじゃあ、その樽を持ってスクワットでもしてもらおうかな。

目標は10回3セットで。


めちゃくちゃ戸惑うエルフちゃんなどお構いなしに、「膝が前に出ない様に気を付けて~」だの、「ここ、ここの筋肉を使うことを意識して~」だの、「もっとゆっくり下ろして~、はい一気に上げる!」だの好き勝手に指示を出したところ、10回目が終わったところでエルフちゃんは限界が来てしまった。

まぁ、樽の下敷きにならない様に近くにいたから何も問題はなかったが。


「私は鍛錬が全く足りていなかったんですね……。」


……エルフちゃんのメンタルが多少傷つく問題があったようだ。


10回出来ただけでも凄いって!

この樽1つ50キロくらいあると思うよ。

それを2個持てた時点で、(やっぱレベルとかステータスって凄いな〜)とか思ったもん。

1回スクワット出来た時点で普通に驚いたよ!

だから落ち込む必要は無いって!


エルフちゃんを励ましながら立たせ、1分経ったので2セット目をする様に告げた。

絶望感たっぷりの目で見てくるエルフちゃんは、今日も可愛いかった。




見事に約100キロの樽を抱えて、スクワットを10回3セットやり遂げたエルフちゃん!

しかしその代償は大きく、脚に力が入らなくなる程疲れ切ってしまうのだった……。

どうやら立てないみたいだけど、特に怪我はしていない様なので、回復するまでのんびりしておけばいいでしょ。

という訳でおやつの時間だよ~!


エルフちゃんをお姫様抱っこで抱えてテーブルへと移動し、テキパキと飲み物やおやつの準備をしていく。

まぁ、出したものは『おやつ』というにはガッツリした食べ物だが……。


硬めの丸いパン。

表面をしっかりと焼かれ折り畳まれたベーコン。

型に入れられて焼かれた丸い目玉焼き。

薄くパンに収まりそうな程小さいハンバーグ。

そう、私好みの肉々しいハンバーガーだ!

……あ、キンキンに冷えた炭酸抜きコーラもあるよ。

フライドポテトも少しならある。

完璧な布陣ではないだろうか……?

少なくとも匂いは完璧だ。

エルフちゃん、よだれがたれそうだよ……。


それじゃあ、いただきます。

やはりまずはメインのハンバーガーを一口……。

やっぱり店で食べていたスパイスとかたっぷり含まれていそうなお肉や、いろいろな調味料で作られたソースがないからか、味がシンプルな感じでほんの少しの物足りなさを感じる。

流石に家庭科の授業でスパイスの調合は習わなかったんだよ……。

まぁ、ほんの少しの物足りなさは感じるものの、十分美味いと言える仕上がりだった。

私が一口の余韻に浸っている間に、エルフちゃんなんて完食しそうな勢いで食べていることからも、その出来の良さが分かってもらえるだろう。


しかし忘れてはいけない。

このお屋敷の主は、非常に嗅覚の優れたエルフであることを……。

うん、いつの間にかエルフちゃんの背後を取ってるね。

サーシャさんは……遅れて来たようだ。

隊長さんに置いて行かれたのかな?


「『ハンバーガー』か、随分と美味そうだな。私の分はないのか?」


「勿論用意してますよ。サーシャさんも1つどうぞ。」


在庫ちゃんの姿はないのでいらないだろう。

……可哀想だから後であげるか。

隊長さんとサーシャさんも席に着いたので、それぞれにハンバーガーを出してから、私も残りを食べ始めた。

隊長さんとサーシャさんには炭酸抜きコーラはいらんやろ、お酒をずっと手放してないし……。


それぞれがのんびりとおやつを楽しみ、用意したおやつのほとんどが胃袋に収まったあたりで、隊長さんの悪魔の囁きが……。


「ソフィーナは随分と汚れているみたいだし、夕食前に風呂に入った方がよさそうだな。ニートと一緒に入ってくるといい。」


隊長さんの言葉にエルフちゃんは少し顔を赤くしているが、私と一緒にお風呂に入ることが嫌という訳ではなさそうだ。

私としては……まぁ、隊長さんと一緒にお風呂に入るよりかは気疲れしなさそうだしいいかな?って感じだ。

勿論、『お風呂は1人で入りたい派』なのでそこまで気は乗らないが、これは隊長さんからの『もう少しエルフちゃんとの仲を深めておけ』というメッセージなのだろう。


そんな訳で、エルフちゃんをまたお姫様抱っこで抱えて、お風呂へと移動した。


それ程離れていないためすぐに脱衣所に着いたので、エルフちゃんを下ろし、特に躊躇することなく、エルフちゃんの目の前で服を脱ぐ。

目の前で繰り広げられるストリップショーにエルフちゃんの目も釘付けだ。

……そんなに見つめられると流石に恥ずかしいんだけどなぁ~……。

純真無垢感じの顔立ちだが、やっぱりエルフちゃんはムッツリかもしれない。


服を全て脱ぎ終わったので、今度はエルフちゃんの服を脱がせにかかる。


はい両手を上に上げて~。

よいではないか~よいではないか~。

あらエルフちゃんってば、お肌が凄く綺麗ね~。

美容品何使ってるの?


服を全て脱がされ、顔を真っ赤にしているエルフちゃんを抱えてお風呂へと突入した。

そして気づく、お風呂にお湯を溜めてない……。

まぁ、お湯が浴槽に溜まるまでそれ程時間はかからないし、先に体を洗いながら待っていようかな?

……いや、お湯を出す魔道具を発動してなきゃいけないのか……。

これってずっと触ってないと駄目なのかな?


少し魔力をコントロールし、遠隔でも魔道具を使えないか挑戦したところ、触れなくとも問題なく発動できるようだ。

ここまでしっかりと観察したことはなかったけど、魔道具の一部が魔力を吸っているんだな~。

今度研究してみよう。




エルフちゃんの髪を非常に丁寧に洗い、表情が緩みきるまでヘッドマッサージを施し、(器用さ)全開のソフトタッチで全身隅々までくまなく体を洗った。

反応が可愛くてついついやり過ぎてしまったような気もするが、エルフちゃんにも悦んでもらえた様なので問題はないだろう。


勿論やることはやった。

湯船のお湯が溢れるくらいの時間はヤっていた。

そして分かったことは、タネマシンガン(セミオート)を発射しても、(体力)は減らないということだけだった。

隊長さんに絞りつくされて体力激ローだったのは、エルフの秘薬の効果なのだろう。

恐ろしい反面、(体力)さえあれば絶倫になれるエルフの秘薬は、種馬の身からすると非常に魅力的に感じるね。


その後は一緒に湯船に浸かり、一緒に風呂から上がって、エルフちゃんの部屋まで連れて行ってから自室に戻ったのだが……。


「やぁ。私の時とは違い、ソフィーナ相手にお風呂で随分とお愉しみだったみたいだな……。」


自室では隊長さんが待ち構えていたよ。

すごくニヤニヤしていて、少し怖いよ。

わざわざ私の部屋で待ち構えているなんて、何か用かな?


「まずは1つ報告だな。ちょっと面倒な中型モンスターが、明日にでもこの街に来るかもしれない。戦闘になる可能性は十分にあるから、準備を整えていてくれ。」


「分かりました。」


中型モンスターか……。

隊長さんが『ちょっと面倒』と言うほどの相手だし、しっかり準備しておかないと心配だね。

まぁ、私の荷物はほとんどインベントリ内に入れっぱなしだけど……。


「まぁ、そっちはついでだ。これを渡しておこうと思ってな……。とりあえず1つ飲んでくれ。」


隊長さんが手渡してきたのは木でできた箱だ。

この感じは桐の木だったかな?

『1つ飲め』ということは中に何か入っているのだろう。

恐る恐る箱をスライドさせるように開けると、中には小さな紙の袋がいくつも入っていた。

1つの紙袋を開いていくと、中には非常に怪しげな粉状のお薬が……。

だいたい想像はつくが、一応これがなんなのか聞いてみる。


「勿論『エルフの秘薬』だ。普通は長期保存が難しいのだが、君なら持っていても問題ないだろう?」


デスヨネー……。

『ちょっと面倒な中型モンスター』はついでで、絶対こっちが本題だわ~。

……『今これを1つ飲め』ということは、今夜は眠れない夜になるのかもしれない。


まぁ、ヤることに対して特に忌避感はないので、開いた分の薬を飲んで、水で流し込んだ。

……クッソ苦いのかと思ったけど、むしろ少し甘みを感じた。

これで今夜も戦えるぜ!

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