第109話 人間をやめられそうだぞぉ~!

「時間的にはちょうど私達が領主の屋敷を襲撃した日なんだが、首都近くのダンジョンからモンスターの大襲撃が始まったみたいでな。城壁のおかげで数日は持ったらしいのだが、巨大な翼のないドラゴンの登場で全てが破壊されて首都が滅んだ。その後は周辺の街や村などを見事なまでに滅ぼしていき、もう少しで完全に国が崩壊しそうな感じみたいだ。いや~、戦争が回避できそうで良かったな~。」


よかったね~。

それが良い話だとしたら、悪い話はこっちにもモンスターの大襲撃が来るとかかな?

……エルフの国の城壁ってそこまで立派だとは思わないけど大丈夫?

普通のモンスターならともかく、首都の城壁を破壊する大きな翼のないドラゴンか~……。

以前、ダンジョンで会った恐竜みたいなやつかな?

あれは格好良かった。

剥製にして庭に飾りたいレベルで格好良かった。

でも、ダンジョンから発生した大襲撃なら、殺しちゃうと死体が残らないからなぁ……。

魔石だけ落として死体が消えるのって、解体に時間を取られないから良い面もあるけど、もう少し魔石以外にも何か欲しいよね~。

現金を落とすとかゲームっぽくていいと思うんですけど、どうですかね?

……神は何も答えてくれない。

まぁ、神が常に私の心の声を聞いてるとは思わないが、祈るくらいはタダだろう。

(大きなイチモツはいらないので、寿命を迎えるまで浪費し続けてもなくならないくらいの資産を下さい。)

……祈りは届いたかな?


「……ニート?聞いていないなこれは。まぁ、いいか。とりあえず、ソフィーナやエアリアもいろいろと準備していてくれ。ここまでモンスターの大群が来るとは思わないが、多少は来るだろうから、出番があるかもしれないぞ。」


おっと。

普通に隊長さんの話を聞いていなかった。

まぁ、大した内容は話してないっしょ!

確認と称して、後でもう一回聞けばいいや。

さて、話も終わって解散するみたいだし、ひなたぼっこの続きに戻ろうかな。

私のでりけぇとなお肌が少し日焼けしそうで気になるけど、他に急いでやることもないし……。


「ニート、少し話があるから来てくれ。」


……まぁ、私だけ呼ばれる可能性は予測してた。

ただ、なんかスキンシップ激しくないです?

もう私相手じゃ遠慮なんてないんですか?

きゃ~!

密室に連れ込まれて2人きりになっちゃう~!

まだお昼ご飯も食べていないのに~。


そんなわけで部屋の一室に2人きりになったのだが……。

流石に今回は真面目な感じの雰囲気だ。

隊長さんは椅子に座った私の太股に遠慮なく座っているが、雰囲気だけは真面目だ。

なにか深刻な問題でもあったのかな?

さっきの話、全然聞いてなかったから予測がつかないや。

もう少し人の話しはよく聞くことにしよう。

全然話聞いてなくてもそれっぽいリアクションさえしていれば、結構何とかなるからなぁ……。


「さっき話したモンスターの大襲撃の件なのだが……。」


隊長さんが非常に重苦しい真剣な表情で話し出した。

良かった、私が原因の問題ではなさそうだ。


「まるで街を完全に滅ぼすために仕組まれたような感じで、モンスター達の動きが組織的過ぎるように思える。以前、ダンジョンで遭遇した悪魔を覚えているか?あの時悪魔は、『魔王様に使える悪魔の1人』だと言っていた……。位置的にもそう離れていないし、今回の大襲撃は『魔王』という存在が仕組んだことなのではないかと疑っているのだが、この話を聞いて君はどう思う?」


……私に真面目な話をされても困っちゃうね。

『悪魔』に『魔王』か~……。

まぁ、私より詳しいであろう隊長さんが組織的だと感じるのなら、可能性としては普通にありえると思うけど、この世界での『魔王』の存在を知らないんだよな~。

物語に出てくるような、特に理由もなく人類を滅ぼしたがっている存在なのかな?

確か今回の大襲撃はダンジョンで発生したらしいし、以前悪魔と遭遇した場所もダンジョンでしょ?

普通に関連性は高いんじゃないかな?

確証は全くないけど。

まぁ、隊長さんも確証が全くないから同意を得たいのだろうけど、私が同意しても意味ないと思うんだよね~。

そういうのは神様に聞いて欲しい。

さっきの私の祈りは届かなかったようだけど……そういえば隊長さんは『巫女』さんなんでしょ?

聞いたりすることは出来ないの?


「『巫女』の肩書は精霊樹を守るのが主な役割で、神の声を聞いたりなど出来ないぞ?君の世界にいる『巫女』は神の声を聞くことが出来たのか?」


……そもそも神様の存在自体眉唾ものでしたね~。

まぁ、そうだよね。

肩書が役に立つのはその集団の中だけの話で、実際は何の力もないんだよね。

集団外でも『逆らうと面倒だ』と判断したら従うだろうけど……。


とりあえず今回の大襲撃が組織的な物だとしても、実害が出ないうちは気にしない方がいいんじゃないかな?

情報の収集は欠かせないけど、今動くと余計に目を付けられる気がする。

既に悪魔の1体を殺しちゃってるけど、あれはドラゴンさんの責任として擦り付けられるし、実際に殺したのはドラゴンさんだし、知らぬ存ぜぬで専守防衛が一番だと思うな。

面倒臭いし。


「……そうだな。一応気にかけておく程度でいいか。何か重要な問題が起きた時にはハイエルフの方が出てくるだろうし。」


へ~。

なんとなく、ハイエルフの方々は国営には関与していない印象だったけど、何かあった場合はちゃんと協力してくれる感じなんだ。

なんだろうね?

以前海で塩焼きそばを振舞った方と、亀の通訳をしてくれた方の印象だと、自称:神様と比べると明らかに劣るけど、普通のエルフや人間と比べると明らかに生物としての格が違う印象を受けたんだよね。

エルフさん達の扱いとしては、前に住んでいたところで言う『皇族』みたいに敬っている感じ?

国営とか行政には関わっていないらしいからそんな印象を受けたけど、『精霊樹』を大切にしているらしいから、ハイエルフは全勢力をもって『精霊樹』を守っているものだと思ってたけど……。

まぁ、この国に何かあった場合は『精霊樹』も影響を受けるから、前に出て何かしらをしてくれるってことなのかな?

まぁ、長く関わっていればそのうち分かるようになるだろうね。

……長く関わることになりそうなんだよなぁ……。


隊長さんはある程度考えがまとまったようだが、まだ私の太股の上に座った状態で何か考え事をしている。

これはあれだね。

以前友人の家に行ったときに、大型犬にめちゃくちゃじゃれつかれた時のことを思い出すね。

座っているところに遠慮なく乗ってきて、体をめちゃくちゃスリスリされながら顔とか耳とか舐められまくったなぁ~。

可愛いけど純粋に重かった……。


一つだけ違う点を挙げるとするならば、今現在も私の下半身はもっこりと自己主張を続けている。

隊長さんは一切気にしていない様だが、非常に気まずい。

スンスン、隊長さんの匂いだぁ~……降りてくれないかな~?


「まぁいいか。さて……こうして2人きりの状況で密着しているわけだが、何かやることがあるんじゃないのか?ほら、遠慮しなくてもいいんだぞ?」


それなりに考えがまとまった様で、隊長さんから真面目で深刻そうな雰囲気が消え去ってしまった。

真面目に言っている訳ではなく、なんか揶揄われているだけの様な気がするんだよなぁ~。

流石に真昼間から盛っている感じではないし……。


「まぁ、流石に冗談だが……もう少し君の方から積極的にアプローチしてもいいんだぞ?特にエアリアに対しては積極的に手を出した方がいい。何かあった場合に君の女だと主張できるくらいには関係を深めておかないと、面倒になる可能性があるからな。」


隊長さんは妙に在庫ちゃんのことを気に入ってるね~。

捕虜ではなくて、私と同じ様に隊長さんの客人として扱えばいいんじゃないの?

『客人として扱うには実力が足りない』とかかな?


「……まぁ今更だから言うが、君の扱いは『私の客人』だと言ったが、実際のところ周りの者たちは皆、君のことを『私が連れてきた種馬』的な認識をしていてだな……。」


隊長さんは非常に気まずそうに目を逸らしながら衝撃的なことを言ってきた。

……もしかして、睡眠薬とかこの下半身が異常に元気になるお薬って、計画的に準備してました?

ほら、こっちを見て正直に答えて?

……隊長さんは頑なに目を合わせようとしない。

まぁいいや。

『種馬』という割には、ダンジョンだったり戦争だったりといろいろと働かされたような気がするが、インベントリが手に入ったり大金も稼げそうなのだ。

私の色欲が『役得役得!』と上機嫌なこともあるし、何も言う必要はないだろう。


とりあえず、女性である在庫ちゃんが隊長さんの『客人(種馬)』になれないことは理解できた。

そのためにも『しっかりと手を出して所有権を主張できるようにしろ』と隊長さんは言いたいのだろう。

ただね隊長さん……私の残弾は0なの。

せめてマガジンに弾が補充されるまで数日は待って欲しいなって……。


「そこでエルフの秘薬だ。薬が効いている間勃起し続けるだけではなく、(体力)を消費して種の生産活動を活発にしてくれるぞ。」


……エルフ怖い……。




特に何事もなくひなたぼっこに戻ることが出来たので、急いでレベル上げの為の魔石の破壊活動に戻る。

(もう少し体力を上げるべきだなぁ~)とは思っていたが、エルフの秘薬を今後も口にする物に混入される可能性が高い以上、マジで(体力)のステータス上げが急務になった。

そういえば、(体力)を回復するための手段はないのだろうか?

休んでいれば自然と回復するので今まで全然気にしていなかったが、(体力)の回復手段があればエルフの秘薬を飲まされても怖くなくなる。

……薬の飲み合わせとか無いよね?

…………やっぱ怖いから無しだな。

今は(体力)そのものを上げよう。


そうして4桁は軽く超えるくらいの数の魔石を砕き続け、昼食前には40だったLvが58まで上昇した。

結果、SPがとんでもないことになった。


____________


Lv.58(32%)

・HP(体力):16/100

・MP(魔力)300/300

・STR(筋力):200

・MAG(超感覚):300

・SEN(器用さ):300

・COG(認識力):100

・INT(知力):100

・LUC(運):100

SP.2742


スキル

・ステータス割り振り

・氷魔法(21/100)

・破魔魔法(30/100)

・火魔法(51/100)

・物理魔法(52/100)

・錬成魔法(47/100)


____________


……まぁ、計算した感じ、Lv40時点で1489のSPが累計でもらえていたっぽいけど、Lv58時点では累計4162になる。

そのうち使われているSPは1420だけ。

とりあえず、(運)をこれ以上上げることは出来ないみたいだし、(知力)は上げても一切効果を感じない。

それ以外のステータスを全て500まで上げようかな?

SPがいっぱいで夢が膨らむなぁ~!

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