第108話 昨夜はお愉しみでしたね。私以外は……。

無事に目が覚めた。

どうやら生き残ることが出来たようだ。

窓の隙間からは朝日が差し込んできており、今日は清々しい天気になりそうだ。


それにしても、恐らく薬で眠らされたのだろうが、久しぶりになんの警戒心も持たずに爆睡をかましたおかげか、肩や首に感じていた疲労感が消え去っており、深い睡眠の大切さを改めて実感する。

……まぁ、腰から下に関してはめちゃくちゃ疲れ切っているのだが……。

どことは言わないが、寝起きだからか大きく漲っているのだけれど、その反面、何のエネルギーも感じない程枯れきっている感覚がある。

ここまで枯れている感覚があるのに大きく漲っているのは、睡眠薬以外にも、特定部位が異常に元気になるお薬でも飲まされたのだろうか?


今この部屋には私しかいないが、着ていた服は全て脱がされて床に散らかっていて、部屋の中には女性特有の匂いが漂っており、ベットのシーツに着いた染みや汚れから、ここで何が行われたかは明らかである。

というか、少し血の汚れもあるな。

誰の血か確認したらセクハラになりそうだから確認しないけど。


元いた世界にも、寝ているところを襲って既成事実を作る文化や習慣があったことは知っているし、今でもある所にはあることくらいは知っていたが……完全に油断していた。

元の世界の私の生きていた国では普通に犯罪だったし、この世界ではどうなのかなんてそもそも興味がなかったから警戒すらしていなかった。

もしこの国では合法なら泣き寝入りするしかないのかな……?

シクシク。


まぁ、ぶっちゃけ何とも思っていないが、とりあえず睡眠薬だけは怖いからやめて貰おう。

あと、下半身に効き過ぎている薬もやめて貰おう。

というか、マジで下半身に力が入らないくらい絞り取られた感じなのに、アレだけギンギンなんだよ……。

天然物のバイアグラでもあるのかな?

名前くらいしか知らないけど、ED治療薬だったっけ?

『元々は心臓病の薬として開発された』って海外の医療ドラマで言ってたから知っているけど、主な使い方がナニをおっきくガッチガチにすることだって、私知ってるもん。

それを75歳のおばあさんに処方してたんだよな~。

懐かしい。


……さて、マジで体のエネルギー切れを感じるし、何か食べに行こうかな。

未だに治まる気配のない下半身は……まぁ、そのままでいいか。

もっこりは仕方がない、男の子だもん。

私が眠っている間に全て見られたとしても、丸出しで歩く勇気はないんだよな~。




そんなわけで、いつも食事しているダイニングに移動すると、既に3人揃って座っていた。

私が最後だったようだ。


「おはよう。今日もいい天気になりそうだな。」


「「お、おはようございます。」」


隊長さんは非常に上機嫌で、お肌に艶が出ている感じだ。

この人が主犯だな、間違いない。

エルフちゃんは私を見た瞬間に顔が耳の先まで真っ赤になった。

だが、チラチラと私の下半身に視線を送ってきているので、ムッツリの可能性が非常に高い。

在庫ちゃんも私を見た瞬間に顔が赤くなったが、横を向いてこちらを直視することが出来ないでいるようだ。


「おはようございます。本当にいい天気ですね。ところで、私に何を飲ませましたか?」


「ふむ……。」


隊長さんはもっこりしている私の下半身を凝視だ。

興奮しちゃうね。

これ以上大きくならないけど……。


「子作りの際エルフの男に飲ませる秘薬を、強力な睡眠薬と一緒に君の食事に混ぜたのだが……人間の君には効き過ぎた様だな。次に混ぜるときは、朝には薬が抜けるよう量を調整するから、心配しなくてもいいぞ。」


そっか、それなら安心だね!……とはならないよっ!

改善するべきところはそこじゃないよ!

……まぁいい。

正直に自供してくれたし深くはツッコまない。

それで、下半身を元気にするお薬はともかく、なんで睡眠薬も混ぜたの?

私が眠っている間に全てが終わっているなんて悲しいじゃない!

どうせなら私にも愉しませてよ!


「……なんとなく逃げられそうな気がしたからな。誰にでも積極的に手を出せとは言わないが、裸の私と風呂で2人きりなのに逃げようとする君を見るとなぁ……。」


……お風呂は体を綺麗にするところだもん。

それで、誰が眠っている私に対してイヤらしいことをしたんです?

正直に答えてくれたら怒らないよ?

大丈夫、本当に怒ってないから。

正直に答えなさい。


「……ソフィーナとエアリアが1回づつで、私が5回だ……。」


エルフちゃんと在庫ちゃんを見てみると、2人とも先程よりも顔を真っ赤にして俯いている。

どうやら3人とも共犯なのは間違いないようだ。


そっかぁ……。

通りで枯れ果てた感じがするわけだね。

……隊長さん、本当に5回?

……目を逸らされた。

5回ではないらしい。

まぁ、そこら辺は深く聞く必要もないだろう。


とりあえず、強力な睡眠薬や強壮薬は効果の反面危険性を伴うので控えるように伝え、そろそろ朝食をお願いすることにする。

結構本気でエネルギーが足りていないのだ。

正直今日はあまり動きたくないが、いい天気なのでインベントリ内にたまっている洗濯物くらいは片付けておきたい。

そのためには今は食わねば……。

隊長さんが出す食べ物に対する警戒心?

そんなもの食ってから考える!




流石に朝っぱらから子作りに励むつもりはないようで、朝食を食べ終えても体に異常は感じなかった。

肝心の洗濯物は、在庫ちゃんがやってくれるらしく、枯れ果てた私はお庭でのんびりとひなたぼっこ中だ。

エネルギーに満ち溢れ、元気いっぱいな感じの隊長さんは用事があるようで、朝食を食べ終えてすぐにどこかへと出かけてしまった。


在庫ちゃんが庭に洗濯物を干していく風景を眺めながら、『とりあえずステータスを上げよう』とインベントリの中にたまっているモンスターの魔石を砕いていると、エルフちゃんがやって来た。

何か用かな?


「お茶を淹れたのでよかったらどうぞ。」


……カップの中身は紅茶のようだ。

少なくとも匂いはこの国で売られている普通の紅茶だ。

味?

私の味覚じゃよっぽど不味い薬じゃない限り、紅茶に薬を混ぜられても味の違いに気づけないよ。

怪しむだけ無駄無駄。

まぁ、エルフちゃんだし、大丈夫やろ。

エルフちゃんに、お茶のお礼と『美味しい』と伝えると、少し嬉しそうな表情を見せた。


可愛いね~。

こんな娘が、寝ている私に対してイヤらしいことことをしたなんて……。

興奮しちゃうね!

……ヤバいな。

ちょっと理性を保てなくなってきている気がする。

こういうのは1度やっちゃうと我慢出来なくなるもんだよな~。

もう少し冷静に自身を見つめ直さないと。


エルフちゃんは近くに座り、何か言いたげな感じでこちらをチラチラ見ている。

きっと未だに元気に自己主張し続けている私の下半身に興味津々なお年頃なのだろう。

……もしや、やはりさっきのお茶に何かしらのお薬を混ぜたのか!?

昨日の睡眠薬は食後1時間くらいした頃に急に眠気に襲われたが、まだお茶を飲んでから数分も経っていない。

となると薬の効果を確認しているわけではないだろう。

……一応聞いてみるか。


「どうかしたの?」


「その……、ずっと大きいままですけど大丈夫ですか?」


心配して聞いてくれたのだろうが、何と答えるべきだろうか?

正直に『問題ない』と言うべきか、せっかくなのでセクハラでもしてみるか……。

いや、私は常識人だから、セクハラなんてしないもんね。

正直に答えよう。


「一応、体に異常はないと思う。」


「そ、そうですか。……男の人ってそんなに大きくなるんですね……。」


「……あ~、見るのは初めて?」


これは普通の質問であって、セクハラではないよ?

当たり前だけど、この世界には街の外に公衆トイレなんてあるわけないから、数日間の移動とかになると野ションとか野糞は普通のことじゃん?

タイミング悪くそういう場面に遭遇しちゃうことって普通にあるのよね。

基本ぼっちの私でも、実際に遭遇したことあるし……。

だから、男の下半身を見たことくらい普通にあると思って聞いただけだよ?

繰り返すけど、決してセクハラの意思はないよ?

ホントダヨ?


「はい……。隊にいたとき何度か先輩の女性から話を聞いたことはありますけど、こんなに大きくなるとは思ってませんでした……。」


エルフちゃんの顔がどんどん赤くなる~。

クッ!この感情がかわいい子にいたずらしたくなるお子様の気持ちか。

まさかこの歳になって理解できるようになるとは……。

ほら、もっと近くでしっかりと見てもいいんだよ?

……変態みたいだし、普通に恥ずかしいからやっぱりなしだな。


それにしてもなにか違和感を感じる。

身体的な方ではなく、精神的な違和感だ。

まぁ、合意の上で子作りしたのではなく、睡眠薬で眠らされたところを襲われたのだから、今までのような距離感で関係を保てるわけなどないのだが……。

隊長さんみたいに一緒に風呂に入って、薄々襲われそうな気配を感じていればまた違ったのだろうけど、エルフちゃんと在庫ちゃんに関しては普通に困惑しているのが正直なところだ。

今からでも、もう少し親密な関係になった方がいいのかなぁ~……。


見える位置に在庫ちゃんはいるが、一応2人きりの状況で近くに座っているのだ。

なんとなく、もう少し距離を詰めてみる。

……10センチ近づいただけで警戒心が上がったんだけど?

ちょっと私に対して過敏過ぎない?

一応、どちらかと言うと私は被害者だよ?

逃げる様子は一切ないが、私の一挙手一投足に対して非常に敏感になっているようだ。


(まぁ、逃げないなら勝手にやっちゃってもいいか。)

そう思い、エルフちゃんの耳に手を伸ばした。

物語に登場するエルフと同じように、エルフちゃんの耳は人間と比べると尖ったように長い。

触った感触は……うん、形が違うだけで普通の耳だね。

物語によっては耳が敏感だったりするが、エルフちゃんの様子を見るに、この世界では敏感かどうかなど個体差でしかないのだろう。


近い方にあった耳を触ってみても逃げられることはなかったので、エルフちゃんの後ろに移動して、寝込みを襲われた仕返しに遠慮なく両耳をムニムニとマッサージしていると、隊長さんが帰ってきていたようでこちらにやって来た。


「帰ったぞ。……2人は随分仲良くなったようだな。長い付き合いになるのだし、その調子で頼むぞ。さてニート……良い知らせと悪い知らせがあるが、どちらから聞きたい?」


……正直どちらも聞きたくはないけれど、聞いたうえで何か行動を起こさないといけない知らせを後にして欲しいかな?

何の話だろう?

戦争に関しての続報の可能性が高いかな?


「とりあえず良い知らせを話すと、人間国と我々多種族との戦争は恐らく起きないだろう。人間国の中枢は既に甚大な被害を受けて滅びかけているそうだ。まだ油断できるわけではないが、心配事の一つがなくなったな。」


……何があったんだ?

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