第94話 神も宗教も存在自体が胡散臭いよね。
あなたは神を信じますか?
……胡散臭いね。
私としては神なんて空想の産物としか思っていなかったけど、神を自称するこの存在はいったいなんなのか……。
まぁ、間違いなく人間以上の存在だとは思うよ?
何もないところから当たり前のように両性っ子ちゃんに着せる服を取り出してるし。
というか、目を離していないのに気づいたらダボダボの服を着てるし。
なんて言うか、この存在の行動に関しては認識が出来ていないよね。
時間の概念からズレてるのかな?
私には認識出来ないけれど、この自称:神が過去に戻って、服を着て、その状態で元いた時間に戻ると、私から見たら『気づいたら服を着ている』という状態になるとか?
この考えが間違ってるかもしれないし、正解でも色々と問題がありそうだけど、神ならタイムパラドックスとか関係ないのかな?
そんなことを考えている間に、神を自称する女形の存在は沢山の服を並べていた。
メイド服もスク水もない、いたって普通の服だ。
色は沢山あるけど、デザインはどれも似たような感じだな~。
両性っ子ちゃんは1人しかいないけど、この沢山の服に今からお着換えタイムかな?
もう体感で5分近く待ってるんだけど……。
両性っ子ちゃんの服が決まるまで、30分近く待たされた。
あんまり言いたくないけれど、この存在とは仲良くできそうにないなぁ……。
無駄に人を待たせる相手って嫌いなんだよね。
どうか面倒臭いことになりませんように。
両性っ子ちゃんに着せる服が決定したようなので、さっさと話を聞くことにしよう。
まぁ、先に洋服を着ている両性っ子ちゃんからKATANAを回収したけど。
「それで、なんで私は呼ばれたんですか?」
「異世界から人が迷い込むのは珍しいので、少しお話がしたくて……。あなたの住んでいた世界はどのような所だったのですか?」
……引きこもりに聞かれても困る質問だぜ。
世界を語れるほど外に出てないよ。
なんて答えようかな……?
「まぁ、人以外の種族やモンスターが存在しないことと、ステータスがないこと以外は、この世界と大差ないんじゃないですかね?少しこの世界より文明が進んでいるとは思いますけど。」
「モンスターがいないのですか?それは……良いことですね。外の世界では神は存在しましたか?」
「神を自称する異常者ならいましたが、神だと思える存在はいませんでしたね。神を崇める宗教はいくつもありましたが、そのほとんどが言葉だけで、実際は金儲けか利権争いのために作られた組織ばかりでしたし。」
「この世界の宗教も似たような物です。ですが、神とヒトが決別した以上、それも仕方のないこと。ヒトの問題はヒトが解決すべきでしょう。」
……神と人が決別したって、またかよ。
この世界の人間って、マジで過去にどれだけやらかしてるの?
元居た世界も似たようなものかもしれないけど、今を生きる私としては滅茶苦茶迷惑だよ。
「……この世界の人間って、過去に何をやらかしたんですか?」
「……そうですね。あなたには言っておいた方がいいのかもしれません。かつて、まだ人間と神が共に暮らしていた時代のことです。ある1柱の神を、人間が殺してしまったことで、この世界は大きく変わってしまいました。」
……なんか壮大なスケールの話が始まりそうだわ。
ポップコーンとコーラ用意しなきゃ。
というか、神って人間でも殺せるんだね。
私は殺るつもりはないけれど、こんなにホイホイ『神域』とやらに人間を招いても大丈夫?
警戒心が足りないんじゃない?
自称:神の話は無駄に長かった……。
出来るだけ要約して言うと、神は生まれたときから万能なわけではない。
神と呼ばれる存在も、最初は人とたいして変わらない普通の生き物として生まれ、そこから進化し、少しずつ私達がイメージする全知全能の神へと近づいていくそうだ。
まず3次元を生きている状態から、時間の1次元を越えられるようになって半神。
そこからさらに5次元、6次元と、説明を聞いてもさっぱり分からなかった次元へと昇華することで神になるらしい。
『時間を超える』や『世界の中に世界を作り出す』とかならまだわかるけど、銀河系の話とかされても宇宙の知識はないし、ぶっちゃけ興味もなかったから普通に聞き流したんだよね。
まぁ、そんな色々と超越した存在が神なのだが、超大昔に1人の愚かな人間に殺されてしまったらしい。
ただの人間がどうやって神を殺ったのかと聞いたら、普通に落ちてた石で撲殺だそうだ。
怖いわぁ~。
その時、問題は『神が殺された』ことではなく、『神の遺体がこの世界に遺されてしまった』ことらしい。
神とは膨大な魔力が意志を持ったことで生まれる存在らしく、そんな存在が初めてこの世界のこの次元で殺されて死んでしまったのだ。
遺された神の遺体は砂のように崩れ去り、やがて純粋な魔力となって、この世界全体に満ち溢れるようになったらしい。
結果、動物からモンスターが誕生するようになり、生きるものの中に特別な能力を持つ者が誕生したりと色々あったそうだが、話をしてくれたこの自称:神は、その後に誕生したまだまだ若い神らしく、知識として情報があるだけなのだそうだ。
モンスターによる被害が出ようと、それは神を殺した人間の自業自得なので、神が直接助けることはしないらしいのだが、心優しき昔の神々は少しでも人間を助けようと、ダンジョンを作ってその周辺に被害が集中するようにしたりだとか、特別な才能が歪まない様にステータスとスキルを作ったりだとか、少しでもこの世界の魔力を消費しようだとか色々と頑張ってくれたらしい。
そのダンジョンを作る人、今じゃ『魔王』を名乗ってるらしいっすよ!
調子にノってるみたいなんで、締めちゃってくださいよ!
神もいちいち自分でダンジョンを作るのが面倒臭くなって、たまたまこっちに迷い込んだ異世界人に能力を与えて外注したのかな?
その辺のこと、ボロボロの日記に書いてありそうだな。
修復されたらちゃんと読んでみるか。
その後、今後この様な世界を改変しかねないほどの大事故を防ぐために、神々はヒトとは違う次元を生きる様になったらしい。
ここも意味が分からなかったからちょっと詳しく聞いたところ、私が目の前の自称:神に触ろうとした場合、私には触れた感触があるけど、この自称:神には触られていないことになるらしい。
意味わかんないよね。
私は触ってるのに、向こうは触られていないって何?
小学生のくだらない言い合いかな?
鬼ごっこでよくあったよね、タッチしたかしてないかのくだらない言い争い。
それがリアルで発生するのか……。
いや待て、例えば今ここで私が目の前に座る自称:神のブルンブルン揺れそうな大きな胸を触ったとしても、向こうは触られていないからセーフなのでは?
…………もちろん冗談だよ?
こんな下らないことを考えるって、自覚はないけど欲求不満なのかな?
それとも、久しぶりに全裸の女性を見たことで、性欲が刺激されたのかな?
というか、なんで全裸だったんだろうね?
1人で全裸ならまだ共感できるけど、両性っ子ちゃんもいるのに全裸だったのは共感できないわぁ。
裸族なのかな?
それとも痴女なのかな?
もしくは、犬や猫に裸を見られても恥ずかしくないとか、そんな感じの感覚なのかな?
確かに全裸は開放的でいいものだよ?
私も寒くない限り、服は脱いでいたい派だったから、気持ちは分かる。
室温が高い訳でもないのに、座ってるだけで汗をかいてたからなぁ……。
いきなり地震が起きて逃げないといけない可能性とかがあるから、流石にパンツくらいは履いてたけど。
そんなこんなで、色々なことを聞けたのだが、最後の最後に面倒なことを聞いてしまった。
私がこの世界に迷い込んだ時のことを思い出すことが出来れば、神に昇格するらしい。
やったね!
まぁ、異世界に来るって、間違いなく次元は超えてるはずだもんね。
その記憶がさっぱりないけど、思い出せば神か……。
別にどうでもいいかな。
なんというか、目の前の自称:神を見ていても面白そうじゃないし。
胡散臭い宗教みたいに『迷える人々を救い導くのです』とか言われたら、神相手だろうとガン無視決め込む覚悟しかないね。
という訳で、そろそろ帰ってもいいですか?
最後の『私が神になれるかもしれない』っていうのが、ここに呼び出した本題みたいだし。
最初は『外の世界のお話が聞きたいなぁ~。』的な雰囲気だったのに、ほとんどこの世界の歴史を聞いてただけだったよ。
そして気が付くと、世界樹と思われる大きな木の前の広場に戻っていた。
お別れの言葉とか挨拶も無しなのか。
まぁ、自分から関わる気はないから別にいいんだけど……。
時間はどれくらい経ったのかな?
振り返ると隊長さんとエルフちゃんがいたので、そちらに歩み寄った。
「帰りましょうか。」
「さすがに今来たところだぞ。もう少し待ってみたらどうだ?」
……この反応だと、時間経過はなかったみたいだ。
100年後とかに飛ばされたら面白かったのにね。
ここはエルフの国だし、100年くらい過ぎても特に問題ないっしょ!
隊長さんに凄い迷惑がかかりそうだけど。
「いえ、もう終わったんで、帰っても大丈夫ですよ。神を自称する痴女とその子供しかいなかったんで。」
そういえば、あの両性っ子は何だったんだろうね?
『母上様』って言ってたから『子供』って言ったけど、ぶっちゃけ全然似てなかったし……。
まぁ、どうでもいいか。
複雑な家庭環境なんだろう。
気にしない気にしな~い。
KATANAをどうやって盗ったのかだけ知りたかったな……。
あの胡散臭い自称:神が盗ったのならまだしも、そこまで異常な存在感を感じない両性っ子ちゃんがKATANAをどうやって盗ったのか……。
神の子だから半神くらいの能力はあるとか?
確か時間の次元を超越するんだったよな?
石仮面で吸血鬼になった後に特別な矢で能力を目覚めさせれば真似できそうだな!
……無理やろ。
心の中に夕暮れの中カラスが鳴きながら飛んでいく光景が浮かんだが、切り替えて隊長さんにエルフの国の観光案内をして貰おうと歩き出したのだった。
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