第89話 換金アイテムはギリギリまで使わない派です

宝箱から出てきた宝箱の中から出てきたこのインゴット……紛らわしいね。

とりあえず、光沢から考えると金属で間違いないと思うのだが、手に持った感じだと凄く軽い。

ステータスのおかげで軽く感じているんじゃなくて、同じくらいの大きさの鉄のインゴットと比べて、半分の重さもないんじゃないのかな?

とにかくめちゃくちゃ軽い金属だった。


金属には詳しくないから分からないけど、ここまで軽いと少し不安になるよね。

でも、物づくりの面から考えると、強度さえ保てるならより軽い方がいいのかな?

鉄からアルミに変わっていって、最近では強化プラスチックとかカーボンが代わりに使われるようになっていた記憶があるし。

まぁ、カーボン製はクッソお高いから、まだまだアルミの方が多いんだろうけど……。


とりあえず隊長さんに何か知らないか聞いてみることにする。

困ったときの隊長さんだ。

……別に500歳も歳を取ってるらしいから聞くわけじゃないよ?

(武器とか防具に使える金属なら何か知ってるかな~?)と思って聞くだけだよ?

ホントだよ?


「なんか凄く軽い金属の様な物が出てきましたけど、これって何か分かります?」


「軽い?……アルミニウムと呼ばれているものだな。軽くて使い勝手はいいが、武器や防具にはあまり向かないものだな。」


……まさかのアルミだった。

こんなとこまで来て手に入った物がアルミって、相当外れなんじゃないのかな?

隊長さんも別にいらないみたいだし、ドワーフのおっさんのところに行ったら一応値段を聞いてみようかな。

こっちでは高価な金属かもしれないし……。

高く買い取ってもらえるなら売り払おう。

安かったら自分で使うけど。


アルミのインゴットを宝箱に戻し、魔石と一緒にインベントリに仕舞った。


さて、ここからが本番だ。

先程黒い壁に擬態していたモンスターを倒したが、モンスターの後ろに部屋があるのだ。

部屋の中を覗いてみる。

中にある物は相当風化しているけど、明らかに誰かが生活していた痕跡があった。

たぶん人間。

エルフやドワーフの可能性もあるから人型と言うべきかな?

そういえば以前倒した悪魔という可能性もあるが、だいぶ長い間ここは使われていなかったようなので、正直分からない。


部屋の中にあるものと言えば、鉄製の枠で作られた元ベッドだった感じの物。

まだ原型をとどめている机に、所々壊れてしまっている本棚に沢山の本。

中身が入っていたり空だったりの大量の瓶。

あれは明かりを灯す道具かな?

形的にそう判断したけど、全てに相当な量の埃が積もっているので判断がし難い。


部屋には入らず、外から眺めただけでもこれだけ分かるのだ、出来れば中の物を調べたい気持ちと、埃まみれのこの部屋に入りたくない気持ちが……。

喘息持ちってわけじゃないけど、私ってよく咳が出てたんだよね。

私はここでのんびり周りを見張ってるから、エルフさん達で中を調べて貰えないかな?


階段のところで待機していたエルフさん達を隊長さんが呼び、私も強制参加で中を調べることに……。

インベントリ持ってるから仕方ないね。

仕方なくタオルとして使っている布を水で濡らし、口や鼻を覆うように巻いておいた。

まぁ、何もしないよりマシだろう。

目を守るためのゴーグルも欲しいわぁ~。

ついでに軍手も欲しいね。

いろいろな物が欲しくなっちゃうな~。

趣味で欲しくなる物より、働く上で必要性を感じて欲しくなる物の方が多い気がするんだよな~。


そんなことを考えていると、目力さんが風魔法で埃を結構綺麗に片づけてくれた。

風魔法も欲しくなっちゃうね。


サーシャさんが部屋に罠が設置されていないことを確認したので中に入る。

周りの見張りはおっさんと幸薄さんだ。


何から調べればいいのかな?

本が重要そうだし普通に気になるのだが、表紙にタイトルとか書かれていないのよね。

開いて中を確認したいけど、ボロボロ過ぎて触るの怖いんだよね。

目力さんは物質の強度を上げる魔法とか使えたりしない?


とりあえず、一番近くにあった本を慎重に開いてみる。

表紙が根元からもげそうだ。

紙って劣化が激しい媒体らしいからね。

数十年から百年だったっけ?

和紙が劣化するまでの期間が異常に長いってところしか覚えてないな。

まぁ、キチンと保存して100年としても、埃が積もる様なところに置いてたら激しく劣化しても仕方ないよね。


中に書かれていたのは日本語だった。

うん、おかしいと思ったんだよ。

こんな山奥にあるダンジョンの地下7階だよ?

ここに住もうと考えるやつがいるとするなら、頭のおかしいやつか迷い込んだやつくらいだよね。


本に書かれているのは日記のようだ。

まだこの1ページしか読んでいないが、書いてある内容が『朝から飲むお酒も、昼間に飲むお酒も、寝る前に飲むお酒も美味しい』ということだけだった。

少し羨ましいね。


次のページを読もうとページをめくろうとしたら、綺麗に真ん中で紙が割れたので、それ以上読むことは諦めたけど……。

紙って劣化するとこうなるんだね。


「これを読むのは大変そうだな。何の本か分かったか?」


「ただの日記みたいです。1日中酒を飲んでたってことしか分かりませんでした。」


という訳で、本は慎重にすべてインベントリに入れ、他の物を調べる。

ベットの下とか怪しいよね!

古来より、ベットの下にムフフな本を隠すのは伝統だと言われているし。


非常にボロボロなのに床板が壊れていないベッドの下を覗き込むと、大きな箱の様な物がある。

この大きさだと……ダッチワイフでも入ってるのかな?

ベッドの下から引っ張り出そうとしたが、全然動かなかった。

まぁ、あまり力を入れると壊れそうだったから、軽く引いただけなんだけど……。


仕方がないのでベッドを持ち上げる。

こうしてみると結構な大きさの箱だな。

ベッドを壁に立て掛け、エルフさん達からの注目を集めながらも、箱を開けてみることに。


箱の中にはダッチワイフなど入っておらず、下に降りるための梯子があった。

梯子で下に降りるのは初めてだね。

ここに住んでた人、もしかしてダンジョンを作り替えるスキルとか持ってたんじゃないの?

そうでもないとダンジョン内に住もうとは思わないだろうし……。


下の階には、ダンジョンコアの様な魔石が設置してあった。

これでこのダンジョンも終わりか……。

結構長かったなぁ……。


1人下に降りて待っていたのだが、隊長さんは下りてこない。

どうしたのかな?

これ、私が壊しちゃってもいいのかな?

壊しちゃおうかな!

以前Lv.19(100%)で止まっちゃったときに、たぶんダンジョンコアを壊したタイミングでLv.20に上がってた気がするし。

ダンジョンコアって珍しいだろうから、上限突破素材だとしても不思議じゃないよね!


という訳で、(エルフさん達主導のダンジョン攻略だし、ダンジョンコアを壊す役目は隊長さんに任せた方がいいかな?)という考えは30秒で捨て去り、遠慮なくダンジョンコアと思われる魔石を壊した。

Lvが40となり、SPが120増えた。

120ってことは、Lv.40からはSPがレベルの3倍貰えるのかな?

20から39までは2倍だったから、たぶん合っているはず。

これで益々強くなれちゃうね!


ダンジョンコアを壊したので、梯子を登って上へと戻る。

エルフさん達は本棚の前に大集合だ。

何かあったのかな?


「戻ったか。魔石はちゃんと壊したか?」


「壊しました。……なにか珍しい物でもあったんですか?」


「それなんだが、本棚から大量の魔導書が見つかったぞ。魔導書というのは、魔法スキルを持っていなくても、本に魔力を流せば書いてある魔法が発動できる書物でな。まぁ、魔道具に近い物だと思って貰えればいい。」


……ほぇ~。

ワシが下に降りてからダンジョンコアを壊すまでの数分間の間に、そんなものを発見するとはのぉ~。

ウラヤマ~。

ダンジョンでは基本的に、アイテムは発見者の物だからね。

私、インベントリがあるから、エルフさん達が持ち帰れない分の魔導書は持って行きますぜ旦那ぁ!


「済まないが、とりあえずこの部屋にある書物は全て持って帰って貰えないか?ダンジョンが潰れた以上、ここも長くはないだろうし、魔導書をここで失うのはあまりにも惜しい。」


「分かりました。」


……ダンジョンって、ダンジョンコアを壊した後は、徐々に消滅していくのかな?

そういうことは早めに教えて欲しいのだけど……。


魔導書は特殊な素材で作られているらしく、普通の紙と違ってほとんど劣化しないらしいので、雑にポイポイとインベントリに放り込んで、ついでに劣化してボロボロな本も全て入れて、もう壁裏に隠し部屋がないことも確認し、地上へと戻ることにした。


地下7階は全然探索してないけど、見逃しとか気にしなくてもいいのかな?

まぁ、真っ黒の空間を歩きたいとは思わないから、私は気にしないけど。

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