第87話 関係ないけどガチャ運ください。

隊長さんと2人きり、何も起きないはずもなく、襲い掛かってくるドラゴンを倒しまくった2人は吊り橋効果で何とやら。

絶賛、剣を研いでいます。


……うん、3時間くらいドラゴン退治に付き合わされたよ。

マジで残りの半分とまではいかないけど、半分近くは数を減らしたと思う。

隊長さんはまだまだ元気そうだ。

結構省エネを意識して戦ったけど、さすがに私が疲れてきたので帰還した。

そして、武器の整備を頼まれたのである。

隊長さん、怖いくらい良い笑顔だったね。

でも、なんで剣を研ぐように頼んできたのかな?

心の声でも聞かれたかな?


へい旦那ぁ!

へいへいへ~い!

この剣ってなんの素材っすか!?

アダマンチウム合金よりクッソ硬くて研ぐの大変なんですけどっ!

一体何の素材で出来てるんですかぁ!


夕食は普通に取ったが、もう2時間は剣を研いでいる。

これはもう、自分の剣を作る時間はないかな~?

2日連続で夜更かしして寝不足になったら、お肌のツヤが無くなっちゃうわ~。

気にしたことないけど。


とりあえずいい感じに研げたかな?

なんかギラギラを通り越してベギラマって感じだけど、心を強く持たなきゃ剣に魅せられちゃう!

なんか斬りたいな~……グヘヘ。

早く鞘に納めよう。


さて、まだ時間あるし、私用の剣の原型だけでも作るかな?

いや、みんなまだ寝ていないみたいだし、ちょっと鉄を鍛えてみようかな?

意味があるのかは分からないけど、刀鍛冶の何度も鉄を折り返す作業は動画で見ていて面白そうだったんだよね~。

たぶん1度やったら2度とやりたくなくなるだろうけど……。


とりあえず、道具を作っていく。

叩くハンマーはアダマンチウム合金でいいかな。

叩くための金床と、掴むための鋏と、切り目を付けるための鉄の板と、冷やすための水を用意して。

……こんなもんかな?

動画で見ただけで、鍛冶の経験とかないから、必要な道具とか分かんないや。


とりあえず鉄を火魔法で熱していく。

温度はどれくらいがいいのかな?

具体的数値は分からないから焼入れと同じくらいの色でいいかな?


鉄の色が変わっていき、赤からオレンジになる頃に火魔法で熱するのをやめた。

鋏で掴んで鉄を叩こうと思うのだが、やっぱり熱い。

『鉄は熱いうちに打て』ということわざもあるので、熱さを我慢してハンマーで鉄を叩いていく。


(鉄って、思ってたよりも軟らかいんだなぁ……。)


いい音で鉄を叩きながらの感想がそれだった。

熱されて赤くなった鉄が軟らかいのか、それとも(筋力)のステータスが高いからか、ハンマーで叩けば簡単に鉄が伸びるのだ。

あまり横に広がらない様に鉄を叩いていき、ある程度の長さになったところで鉄板で切れ込みを付けるかのように折り曲げ、また叩いていく。


どれくらいやればいいのか分からないので、とりあえず縦と横に5回づつ折り返して鉄を叩いた。


「一応鉄は出来たわけだけど、どうしようかな?流石に叩いて剣の形にしていくとか無理だと思うし……冷やすか。」


あとは錬成魔法でやればいいや精神。

マジで鍛冶師からしたら邪道もいいとこだぜ!

水の中に鉄を投入したところ、隊長さんがこっちに来た。

今度は何かな?

今日はもうドラゴン退治にはいかないぞ!


「鉄を叩くような音がしてたが、今度は何を作ってたんだ?」


「鉄を叩いていただけですよ。正確にはアダマンチウム合金ですけど。これが武器として使える素材になればいいんですけどね~。」


そう、なんとなく鉄を叩きたくなったからやったが、この行為に意味があったのかは、実際に武器を作ってみないと分からないのだ。

日本刀にするのは、そもそも構造が違うから無理だが、刀の形にしてみたとして、簡単に折れたり曲がったりする可能性も非常に高いのだ。

まぁ、そうなったら捏ねてインゴットに戻すだけだが……。

刀にこだわりがあるわけではないけれど、切れ味のいい刃物と言えば刀ってイメージがあるからね。


そういえば、波紋ってどうやって出すのかな?

日本刀だと焼入れの前に粘土を塗ってた記憶があるけど……。

粘土は流石にないなぁ。

粘土を塗るってことは、焼入れの時に温度差を生み出すことが狙いのはず?

……私みたいに魔法でムラなく全体を同じだけ加熱できるなら無理じゃね?

あえて魔法でムラを作ればいけるのかな?


焼入れ前に魔法でも出来るか試してみるか。

ぶっちゃけ切れ味さえ良ければ見た目は二の次だし、刃紋が無くても私は少しも気にしないよ?

ホントダヨ?


……そういえば薙刀作ったけど、微妙に刃紋が出ていたような?

波って感じじゃなくて、刃に沿う感じの線状だったけど。

あれって刃紋じゃない?

隊長さんに聞いてみるか。

なんか水に入れた鉄を覗き込んでるし。


「そういえば、昨日……昨夜作った薙刀は見ました?」


「ん?……ナギナタ?見てないぞ。……もしかして、昨日ソフィーナが頼みに行った後作ったのか?」


エルフちゃ~ん!!

せめて報告くらいは……夜遅かったし、朝には出発だもんね。

私も隊長さんに起こされるまで爆睡だったし、あの後寝たなら出発前に報告とか無理かもね。


まったくエルフちゃんってば……そういえば私のハンマーの斧部分の時はそこまで興奮してなかったよな?

アダマンチウムの刃物が好きなのかな?

そういえば、結構前にやっていた課金しないとまともに遊べないクソゲーに、レア度の高い素材で作った、品質の高いアイテムでしか好感度が上がらないキャラとかいたな~。


好感度が上がりきったらリターンも大きかったらしいけど、ピックアップもされていないガチャ限定、10連5000円で確率0.06%だったっけ?

消費者庁の目が厳しくなった時期で、確率だけは正確だったらしいけど、0.06%って、いったい何連回せば出るんだろうね?

ガチャの確率って母数が変わらないまま計算されるから、天井がないとマジで欲しいキャラ手に入らないんだよね。


そういえば、あのキャラの名前フィナーレじゃなかったっけ?

ソフィーナとフィナーレ、なんか似てると思いませんか?

これはもうエルフちゃんの名前覚えちゃったわ。

人の名前は忘れるけど、キャラの名前とスペックは結構長く覚えてるもん。


「それで……そのナギナタだが、支払いは後でもいいか?」


「ダンジョンじゃお金があっても意味ないんで、問題ないですよ。」


「そうか。ところで、私の剣はもう研ぎ終わったのか?ヘバード鉱石から作られた特別な剣だから、大変だったと思うが……。」


……そんなものを素人に研がせないで欲しいね。

(器用さ)のステータスには自信があるけど、自分の武器とは違って他人の武器を整備するのは、流石に気を使うのよ。

というか剣を取りに来たんだね。

普通に剣を研いだことを忘れてたよ。

というか忘れないと正気を失いそうな程、ギラギラだったんだよ。

ベギラマだよ。


「一応研ぎ終わってます。確認してください。」


インベントリから隊長さんの剣を取り出して手渡した。

そして距離を取っておく。

隊長さんが正気を失ったらヤバいからね。

そうなったらエルフさん達のところにトレインするしか……。


隊長さんが剣を抜いた。

大丈夫かな?

SAN値チェックする?

TRPGとか1度もやったことないけど。

やる友達とかいなかったけど!


「凄いな……昔の姿に戻った様だ……。君に頼んで正解だったみたいだな。」


……正気を失ってないみたいだ。

クリティカル出たか?

というか、昔はこんな感じだったのか。

ベギラマがギラに退化してたんだね。


「昔はドワーフにこの剣を研げる職人がいたのだがな、弟子が技を受け継ぐ前に急死してしまって以来、ずっと気になってはいたんだ。まぁ、弟子に研いでもらっても良い切れ味なんだが、少し物足りなくてな。」


へ~。

職人が技を後世に残せないまま死ぬって、当たり前だけど、どこの世界でも起こってることなんだねぇ。

あんま興味ないけど。

興味なさ過ぎて、さっき鍛えた鉄を無意識に錬成魔法で捏ねてたわ。

刀の形にしたら今日はもう寝ようかな。

流石に今から研ぐと、明日起きれないし。




休息を取るのだが、やはり交代で周囲の見張りを行うらしく、私も起こされた。

2人1組で私は目力さんと3組目だった。

仕方なく起きてのんびりと周囲を眺める。

剣を完成させようかとも思ったが、流石に周囲を監視していないと不味いだろう。

……ドラゴンに強襲された場合、気づけるのかな?

プレッシャーが半端ないわぁ~。

目力さんからもプレッシャーを感じるわぁ~。


そういえば、普通のダンジョン内は太陽などないので、昼間のエリアなら1日中昼間、夜ならずっと夜と時間が変わらないのだが、このダンジョンは何と時間経過で中が暗くなったのである。

もちろん太陽はないのだが、夜があるのだ。


途中まで気にしてもいなかったが、鍛冶作業をやめてから(あれ?)って思った。

ダンジョン内に時間の感覚があるって、普通なんだけど逆に珍しい気がするね。

ダンジョン内が少しづつ明るくなっている気がするが、そろそろ朝かな?

私と目力さんが最後の組なので、待ってればそのうち起きてくるだろう。


……朝飯の準備でもしようかな?

何かしてないと、目力さんからのプレッシャーが半端ないのよね。

はっ!?

まさかこれが魔力放出によるプレッシャーというやつか?

なら気にしなくてもいいかな?

魔法隊か何か知りませんけど~。

隊長ともあろうお方が、魔力のコントロールが出来ていないんですか~?


もちろん言わない。

というか、確実に魔力じゃなくて眼力だし。


のんびりとインベントリから薪用の木材を出して、焚き火に追加する。

朝飯は何にしようかな?

朝から食べるには重いけど、ピザ食べたいね。

それもチーズたっぷりのやつ。

ピザ生地って強力粉だったっけ?


白い粉の見分けとか出来ないから適当に選んで、卵と少量の水を加えてから捏ねてみる。

……それっぽくなったかな?


生地は適当でいいとして、次はトマトソースだ。

鍋に油を敷いて、ヘタはちゃんと取ったが適当に切ったトマトを突っ込み、焦げないように気を付けながら火にかける。


そういえばオーブンはどうしようかな?

ピザ窯を作るのは流石に無理だし。

……鉄板の上に炭を置いて温めたらオーブンぽくならないかな?

昔そんな感じで鶏肉を焼いてるのを見たような気がする。


鉄板作るか。

いつか焼きそば作るときにも使えそうだし。


見張り?

まぁ、大丈夫やろ。

流石にドラゴンが近づけば気づくって!


錬成魔法で鉄板も用意できたし、トマトソースもそれっぽくできた。

薄味でドロドロ過ぎたから少し塩と水は追加したが、ピザに塗るのにちょうどいい感じだ。


ピザ生地は発酵などしていないので、パリパリになればいいなと思いながら丸く薄~く作った。

既に結構生地が硬めな気がするけど、水の量が少なかったかな?


「朝食か?」


隊長さん達が起きてきたようだ。

サーシャさんと幸薄さんは、まだ少し疲れが残っているようにも見えるが、私が気にすることではないだろう。


「おはようございます。」


見張りをサボってたわけではないんですよ?

ただ暇すぎたので、美味しい朝食が食べたかっただけなんです。

ちゃんと全員分の量を用意してますぜ旦那ぁ!


「ほぅ……ピッツァか。野外でここまで本格的に準備しているやつは初めて見たぞ。」


「初めて作るのでご期待に沿える味となるかは自信が無いですが、もう少しで出来るので、良かったら食べて下さい。」


「ありがとう。楽しみにしているよ。」


目力さんとは関係なくプレッシャーが襲ってきたが、シンプルにトマトソースを塗り、チーズたっぷりで、ベーコンも乗せたピッツァは結構美味しかった。

ピザとピッツァの違いって何なんだろうね?

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