第73話 きゃ~!エルフちゃんのえっちぃ~!

上機嫌なままダンジョンから出ると、沢山のエルフが待ち受けていた。

陸路で来たエルフ達と無事に合流できたんだね。

あまりエルフのことは気にせずに、この後何をしようか考えていた。

時間はおそらくおやつタイムくらい。

おやつはない。

柿の種みたいな落花生買っておけばよかったなぁ……。

結構日持ちしそうだし、今度からインベントリに常備するんだい!


さて、なんかめちゃくちゃエルフ達に見られている気もするが、どちらかというと気になるのは持ってきた積み荷の方だ。

パッと見ただけで分かる程の大量の食糧。

ウラヤマ。

インベントリの実験しながらジャーキーをムシャったのでまだお腹は空いていないが、大量の食糧を見ると何か美味しいものが食べたくなってきた。

時間あるし、何か探しに行こうかな?


一応隊長さんに伝えようかと思ったが、近くにいないようだ。

というか、周囲を相当広めに整備したんだね。

いくつかテントも張ってるし、そっちかな?

まぁ、気にせず狩りに行くか。


「お?君はいつだったかの人間じゃん。もしかして隊長が連れてきたって噂の人間かな?隊長に目を付けられるなんて不憫……大変光栄なことだよ。是非とも期待に応えて欲しいね!」


出発しようとしたタイミングで女性のエルフが話しかけてきた。

向こうはこっちを知っているようだが……正直覚えていない。

きっと以前会った、モブと一纏めにした中の1人だろう。

それくらいしか心当たりがないし。


それにしても……隊長さんに目を付けられたの?

思いっきり不憫って言ったよね?

期待されても困るよ?

なんて答えればいいんだろう……。


「ちょっと散歩してくるんで、3世紀くらいしたら帰るかもしれないって隊長さんに伝えておいてください。」


「ん?わかった。凶暴なモンスターには気を付けてね~。」


3世紀も生きるのは無理だが、とりあえずこれで問題ないだろう。

さて……帰るか。


「まぁ、待て。」


いつの間にか背後に隊長さんがいるようだ。

か、勘違いしないでよね!

欲しいものが手に入ったし、これ以上ここにいると面倒臭そうだからって、逃げようなんて考えていないんだからね!


「ちょうどよかった。今日はもうダンジョンには行かないんで、ちょっと散歩に行ってきますね。」


「とりあえず何かあったのか?帰ってくるには随分と早いが……。」


「地下5階まではいけたんですけど、地下6階には小さいですけどドラゴンが沢山いたんですよね。流石に無理っぽかったんで、諦めて帰ってきました。」


「ドラゴンが沢山か……。それは流石に厳しいな。」


正直無理とは思ってないし、1匹づつなら倒せそうなのだが、やはりドラゴンと戦うなら武器が欲しい。

5階のドラゴンだって、ちゃんと効く攻撃方法さえあれば余裕で処理できただろう。

1度も攻撃を受けそうになる場面はなかったのだ。

質のいい武器さえあれば余裕余裕。

武器が手に入るまで、ドラゴンと再戦する気はないぞぉ~。


……あ、そういえば正面から腹を攻撃したときにボディプレス食らいそうになったね。

あれも攻撃が通らないからこそ、あの位置に行ったのだからノーカンで。


隊長さんは考え込んでいる。

ここにいるエルフ達全員でドラゴンと戦った場合にどうなるのか、頭の中でいろいろと考えているのだろう。

とりあえずそろそろ晩御飯のお肉を獲りに行きたいので、一声かけることにする。


「それじゃあそろそろ散歩してきますね。今夜の晩御飯も探すつもりなので、少し遅くなるかもしれません。」


「ん?食料がなくなったのか?……そういえば荷物も持っていないな。食材なら分けるし、物資には余裕があるはずだ、欲しいものがあったら言ってくれ。」


そういえばリュックは邪魔だからインベントリに入れたままだね。

欲しい物か……武器だな。

言わないけど。


「いや、欲しいものは特にないですね。とりあえず肉獲りに行ってきますね。」


「そうか……。君なら大丈夫だとは思うが、気を付けるんだぞ。」


さて、美味しいお肉がいればいいなぁ~。




適当にめちゃくちゃ高そうな山頂の方向へと移動してきた。

山の方に来ただけで登ってはいないよ。

結構適当に移動してきたのだが、いい感じの湖があって最高の眺めだった。

水辺なので水を飲みに来るモンスターもいるだろうし、この辺りで獲物を探すことにした。


湖の周辺で時々魔力を放出しながら歩いていると、さっそく獲物が現れた。

大きな鹿だ。

雄のようで頭には立派な角が生えている。

……ちょっと立派過ぎない?

まぁ、いいか。

鹿肉は刺身が美味しいのだ。

雌の方が美味しいと聞くが、雄でも問題なく食べられるだろう。

サクッと近づいて心臓の辺りにナイフを突き立てる。


ナイフを抜くと結構な勢いで出血し始めたので、問題なく心臓に傷をつけたようだ。

逃げる様子もないので、インベントリからロープを取り出して鹿の後ろ脚に結び付け、木に逆さ吊りにした。

刺身だと本当に血抜きが大事だからね。

そういえばどの部位が刺身が美味しいんだろう?

昔鹿肉を貰ったときは既に肉のブロックだったから、どの部位だったかは分からない。

まぁ、適当に食べてみればいいか。

でも醤油とかないし、普通にステーキにした方がいいかな?

鹿肉と言えば刺身のイメージがあるが、焼いて食べるのも美味しいと聞く。

生食はどうしても危険性を伴うので、ここは焼いた方が無難なのでは?


そんなことを考えながら血抜きが終わるのを待っていると、地下6階のドラゴンと同じくらいの大きさのモンスターが湖に降り立った。


「あれは……ドラゴンかと思ったけど、ワイバーンとかいうやつかな?ドラゴンと比べると足が細いし、腕がないね。」


頭はドラゴンに近いのだが、体は図鑑で見たプテラノドンに近い感じだ。

もう少し筋肉モリモリだったら、あの狩猟ゲームのシリーズ皆勤賞のモンスターにそっくりになるだろう。

色は青っぽいから、空を飛んでばかりでなかなか降りてこない亜種の糞鳥かな?


ワイバーンはこちらを見ている。

私ではなくどちらかというと血抜き中の鹿を見ているが……。

これを奪おうというのなら戦争だぞ?

やんのかこら!

……あ、完全に威嚇してきた。

殺る気満々の様だ。

仕方ない。

今夜はワイバーンのステーキ肉にしよう。


とりあえず一瞬で懐に踏み込み、勢いそのままに普通のナイフを突き刺してみる。

普通に刺さった。

やっぱりドラゴンと比べると皮が薄いみたいだ。

ナイフを捻りながら傷口を大きく広げ、その隙間に素早く手を突っ込んだ。

たぶんこれが心臓かな?

あ、魔石も見っけ。

壊しちゃおう。


体内の魔石を壊すと、ワイバーンはすぐに弱弱しくなってしまった。

生きたまま体内の魔石を壊すとこんな風になるのか。

とりあえず心臓を摘まみちぎってから腕を抜いた。

これですぐに死ぬだろう。

ダンジョンの魔物とは違い、死んだ時に肉も血も消えないので腕が血に染まっていて汚かった。


ワイバーンも鹿と同じようにロープを後ろ脚に結び付けて木に逆さ吊りにした後、せっかくなので湖で体を洗うことにした。

服も洗いたかったしちょうどよかったね。


服を脱いで湖に入り、頭をわしゃわしゃした後に体をタオルで擦る。

石鹸とか無いから仕方ないね。

シャンプーくらいは欲しい気がするけど、作り方なんて知らない。

きっと高級品なんだろうね。

お金ならあるけど正直そこまで身綺麗にする気もないし、別にいいかな。


体は洗ったので服を洗っていると、誰か来たようだ。

あれは……、さっき話した知らないエルフさんとエルフちゃんだ。

きゃ~えっち。

2人だけなのかな?

ここに来るまで1度もモンスターは見なかったけど、ワイバーンと遭遇するとエルフちゃんならムシャムシャされちゃうと思うんだけどな~。


2人は木に吊るしている鹿とワイバーンを見て驚いているようだ。

露出の趣味は無いし、洗濯もとりあえず終わったから出ることにしよう。


ちょっと2人にチラチラと見られながらも、服を着てからお肉の元へと移動する。

まだ傷口から血が出ているので、もう少し時間がかかるだろう。


仕方がないので2人に話しかけた。


「2人も水浴びに来たんですか?」


「え?いえ、伯母様……隊長から念のためあなたを探しに行くように言われて……。」


「細身だけどいい体してるね!」


エルフさんの方は結構はっちゃけた性格のようだ。

見た目的にもう少し真面目な人かと思ってたよ……。

まぁ、『隊長に目を付けられるなんて不憫』なんて口走ってしまうあたり、そこまでお堅い人ではないんだろうけど。


「そうですか。とりあえず血抜き終わったら、これを解体してから戻るんで、まだ結構時間かかると思いますよ。」


「これってワイバーンだよね!1人で倒したんだよね!凄いね!」


エルフさんのテンションが高い。

褒められるのは嬉しいけど、テンション高い人苦手なんだよなぁ。


「どっちも心臓を一突き。相当な腕前のようだね!鹿なら分からなくもないけど、それでも正面から一突きは……ちょっとエルフたちの中でも真似出来る人はいないかな。」


エルフさんの言葉にエルフちゃんも激しくうなずいている。

エルフちゃんの名前なんだったかな?

また忘れちゃったよ。


とりあえず適当に会話を聞き流しながら、血抜きが終わるのを待っている間、解体するときに下に敷く大きめの葉っぱとかないか探すことにした。




お肉の解体をしている間に、湖で体を洗ったらしいエルフ2人と共に、ダンジョン前へと戻った。

入浴シーンを見逃しちゃったね。

まぁ、覗く気は一切なかったから何とも思ってないけど。


ダンジョン前にはあまりエルフがいなかった。

今日来た人たちはダンジョンに入ったのかな?

正直全く協力してる気がしないからどうでもいいけど、どうせならこのままエルフたちだけでダンジョン攻略を終わらせてもらえないかな~。


せっかく驚かせようと思って持ってきた鹿の頭はどうしよう?

角がデカ過ぎて戻って来る間に何度か木に引っかかったので捨てようかとも思ったのだが、ここまで立派なので見せびらかそうかと思ったんだけどな。


適当な木に首を飾っておこうかと思っていると、隊長さんがこちらにやって来た。


「戻ったか。なかなか立派な鹿が獲れたようだな。2人もご苦労。あちらで食事の用意をしているが、出来るまでもう少し時間が掛かりそうなので、休んで待っているといい。」


「「了解です。」」


2人とも行ってしまった。

隊長さんは残ってるけど、何か用かな?


「じゃあ私も晩飯の用意があるんで……。」


「……そうか。足りない食材や調味料が欲しい時は言ってくれても構わないんだからな?」


「ありがとうございます。必要になったら言いますね。」


そういえばインベントリのことは言っても大丈夫なのかな?

隠す気はないけど、わざわざ自分から話す話題じゃないと思うんだよね。

「こんな便利な道具をゲット出来ちゃったんですよ~」って自慢するのはあれだし……。

というかエルフちゃんとエルフさんの前で、普通にお肉を収納したから後で普通に知られると思うんだよね。

エルフちゃんたちは何も言わなかったし、気にしなくてもいいだろ。


そんなことを考えながら空いているスペースの近くの木に鹿の首を飾って、晩御飯の用意を始めるのだった。

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